はてなの茶碗 単語


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ハテナノチャワン

2.1千文字の記事

はてなの茶碗とは上方落語の演である。江戸落語では「金」というが、内容はほぼ同じであり、江戸落語でもしく、舞台関西のままで、古今亭志ん生などは理に京都弁(といっても関西人が聴いたら…むちゃしやがってというレベルなのだが)を使って演じた。なお、志ん朝などは役を大坂屋ではなく、江戸から上した屋という設定にしている。

有名な演者に桂米朝桂枝雀などがおり、後述の理由から桂米朝が有名にしたといっても過言ではない。

あらすじ

大坂生まれで、訳あってで商いをしていた屋の男、彼が何かうまいけ話はないものかと屋でくつろいでいると、横で茶道具屋の金兵衛、通称「金」がお茶を飲んでいる。彼の動向を注視していると、飲んでいた碗を手に取りしげしげと眺め回すと「はてな?」と首を傾げて、その碗を置いて店を出た。

屋は碗が価値のあるものだと思い、屋から碗を買い取ろうとする。同じように考えていた店が一旦断るも半ば脅すような形で2両と引き換えにそれを受け取った。そして、金の茶道具屋を訪ね、売り込もうとするが出てきたのは番頭。彼は「全く値打ちがないので、大金どころか一銭にもならん」とに言い放った。その態度に屋もを立て言い合いになっていると、そこに人の金兵衛が顔を出す。屋は彼にさっきの碗を見せるが「番頭の言う通り、大した値打ちものではござらん。ただ、どこにもひび割れしてないのにが漏るので『はてな?』と思ったが、それがどうかしたかね?」と返されて屋は自棄になって笑う。そして泣き言のように自分が「から勘当されて大阪を出て、京都に出て屋をしている。そろそろ元に帰りたいが、せめて一山稼いで孝行したかった」とくと、大家の金兵衛は「そこまで儂の値打ちを買ってくれるのなら、儂が3両でそれを買おう。そしてそのお金で孝行してやりなさい」と言い3両を差し出す。男はその心意気に「ありがとうございます、3両は借りたものと思いありがたく頂戴します。このお金はいつか返します」と伝え、立ち去っていった。

しばらくして、金兵衛の元に公家鷹司がやってきて、彼がその話をすると、大変面がって「麿もその碗を見たいものである」と興味々、そしてその碗を流に思い料をとり一首詠む

   清水の 音羽滝の音してや 茶碗もひびに もりの下露

そんな料も添えられて金兵衛の元に返った。噂が噂を呼び、遂には時の天皇)のまで届き、「朕もその碗を是非見たく申す」と勅が下され、金兵衛は畏まって持参する。不思議が漏る碗を面がっての蓋に万葉仮名で「波奈」と揮毫したことで、安物の碗が、公家の料の揮毫付きという、とてつもない値打ち物となってしまった。その噂を聞きつけた時の大富豪、鴻池善右衛門が「千両でその碗を買いたい」とまで言い出し、売れないと断っても担保にして質流れさせてくれとまで計略し、そんなこんなで安物の清水碗が千両で売れてしまった。

速、金兵衛屋にこのことを伝えたいと思うが、不思議なことに屋は全然店の前を通らない。れを切らした彼は丁稚を遣わして屋を探させた。屋は結局、借りたつもりの3両をまだ返せなかったのでわざと避けていたのだが、金兵衛は笑って「あの碗はこの通り千両で売れた。お前さんに半分の500両やろう」と告げると男はを溜めて「そんなこともあるんやなあ…。それならこの前の3両差し引いて497両もらいます」。そして、勢い余って奉人や女中お金を分け与え、行く人にもお金をばらまきながら喜んで去っていった。

兵衛もこれであの男も大阪に戻り親孝行できるだろうと胸を撫で下ろしていたのだが、後日お祭り騒ぎで舞い上がる屋がやってくる。全然商いをしている気配もなく、しかも変な器を提げている。金兵衛が怪訝そうに「あんたは何をしているのか?」とねると、「金さん、今度は10万8000両の金けや」としたり顔。どういうことかとねると…

「今度はが漏る見つけてきたんや」

余談

  • この噺は元々、『東海道中膝栗毛』で有名な十返舎一九作の滑稽本の一編を原典としたパロディであり、それが上方落語となり、桂米朝がわかりやすいように組み立て、アレンジしていったものであるという。そのため、天皇)が登場人物として現れるなど、近代以前なら畏れ多くてありえないことが話の中で起きている。
  • なお、が漏る碗は実在する。有名な萩焼の碗は「が漏る」苦情が来ることで有名であり、その理由は陶土の肌理が粗いからであり、使い込むとそこにが滲入していき、合いを変化させる。なお、このの漏る碗が萩焼かどうかは定かではないが、昔から一楽ニ萩三唐などと謳っていたことから、実は清水焼ではなく萩焼であっても不思議ではない。
  • なお、最後が10万8000両の金けなのは諸説あるよう。まず、碗が1合なのに対し、が1斗なので、その100倍、つまり10万両なのだが、あとの8000両はどこから来たのか。最有力なのは、人間の煩悩が八つあるといわれていることからそれを掛けている説が強いとされる。

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