ゴトランド(巡洋艦)とは (ゴトランドとは) [単語記事]

ゴトランド（HMS Gotland）とは、スウェーデン海軍が保有した巡洋艦である。同型艦は存在しない。

概要

1930年代にスウェーデン海軍が建造した巡洋艦。世界に先んじて巡洋艦に多数の水上機を搭載・運用したことから、いわゆる航空巡洋艦としては世界で最初の艦とされる。搭載機数は通常時で6機、最大で11機の水上機を搭載することができた。第二次世界大戦中には防空艦への大改装を受け、1956年まで活躍した。

艦名の由来はバルト海南部に浮かぶスウェーデン最大の島、ゴットランド島。

建造経緯

第一次世界大戦によって航空機の重要性が認識されると、スウェーデン海軍も海上での航空戦力運用を考えるようになった。1925年、航空機を搭載する新型艦の計画が始動し、翌1926年には12機を搭載する航空母艦（水上機母艦）の案が提出されるが、巡洋艦相当の機能を望まれたことから採用に至らず、1927年になって前甲板に連装砲2基、艦橋甲板後部に連装砲1基を置き、後甲板に2基のカタパルトと8機の水上機を搭載、29ktの速力を持つ5500t級巡洋艦の建造が承認された。

しかし発注段階になり、資金面の都合から前部砲塔とカタパルトそれぞれ1基ずつの削減などさらなる規模の縮小を余儀なくされ、速力も27.5ktとなる。実際の建造が開始されたのは1930年のことで、設計にあたっては、1927年に海防戦艦＜ドリスティゲーテン＞を水上機母艦（航空機運搬艦）に改装した経験が活かされたともいわれる。

兵装・性能

全長134.7m、全幅15.4m、基準排水量4700t、満載排水量は5550t。航続距離は速力16ktで6200海里に及ぶが、速力は27.5ktと巡洋艦としては低速だった。同じ1930年代なかばに就役した列強各国の巡洋艦にくらべるとかなり小さい艦で、艦体規模でも搭載火力の点でも、むしろ一次大戦後～1920年代ごろの軽巡洋艦に近い。艦尾部は水上機を回収するハイン・マットの使用に適した、垂直に切り落とされた形状となっている。

主砲はボフォース社の55口径15.2cm 砲/M30を採用。前甲板と艦橋甲板後部にそれぞれ連装砲塔1基を置いたほか、艦型の縮小によって削減された連装砲塔1基分を、艦橋構造物左右に砲郭式の単装砲として配置した。その他、60口径7.5cm高角砲が連装1基と単装2基、各種機銃、53.3cm 魚雷発射管が三連装2基を持ち、くわえて80～100個の機雷を搭載していた。

後部砲塔以後に水上機甲板と関連設備が設けられており、艦尾には水上機揚収用のクレーンが設置されていた。基本的な搭載機数は8機で、カタパルトの使用不可と引き換えにすればさらに3機を搭載できたという。艦載機はイギリス・ホーカー社の複葉機S9オスプレイ（エンジンはスウェーデン製）を採用したが、スウェーデン海軍はこれを6機しか調達せず、＜ゴトランド＞の搭載機数も実際にはこの6機のみであったようである。

防空艦への改装

1943-44年に行われた大改装では、陳腐化した水上機の更新が考えられたが、新鋭機の搭載にはカタパルトも新式のものにする必要があり、中立国とはいえ戦時下の情勢では調達が難しかった。このため、水上機運用設備を一切降ろし、代わりに対空能力を充実させることとなった。

この改装により、水上機の運用能力と引き換えにして、水上機甲板上に設置された40mm連装機銃3基をはじめとする40mm連装機銃4基8門、25mm機銃、20mm機銃多数が追加搭載され、高い防空能力を獲得した。

1953年には再度改装を受け、15.2cm単装砲2基と7.5cm 砲、ほか一部機銃を撤去。空いたスペースに追加の40mm機銃とレーダー、および戦闘指揮設備が設置され、航空指揮能力を有するようになっている。

艦歴

1934年 12月に就役した＜ゴトランド＞は、スウェーデン海軍沿岸艦隊の偵察部門を指揮することとなった。また冬季に行われる訓練遠征も担当し、1939年までのあいだ、ヨーロッパ沿岸部や南北アメリカ大陸、アフリカといった大西洋各地への遠洋航海を7度にわたって行っている。

二次大戦が勃発するとこの遠征は行われなくなり、沿岸艦隊にて活動した。スウェーデンは二次大戦において中立を維持したため大きな活躍はないが、特筆すべきこととして、1941年 5月20日、ライン演習作戦を発動しバルト海から北海へ進出するドイツ戦艦＜ビスマルク＞と重巡洋艦＜プリンツ・オイゲン＞をカテガット海峡^[1]で発見し、海軍司令部へ報告している。この情報は翌日にはイギリス海軍本部へ通告され、イギリス本国艦隊による＜ビスマルク＞撃沈へとつながったといわれる。