ブリティッシュファントムとは、アメリカをはじめ世界11ヵ国で採用された西側のベストセラー戦闘機、マクドネル・ダグラスF-4ファントムIIのイギリス仕様のことである。
第二次ウィンストン・チャーチル政権の国防相で、英国面に落ちたダンカン・サンディが1957年に発表した、高額な戦略爆撃機や超音速戦闘機を退役させ、各種ミサイルを主体とした、防衛網構築計画とその破綻によって、50年代末期のイギリスの国防政策と軍需産業は混乱の極みに達していた。この混乱のさなかにイギリス海軍(Royal Navy)は、60年代中盤に退役する、全天候艦上戦闘機のシービクセンと艦上攻撃機であるシミターの後継機の選定作業に入っていたが、ダンカン・サンディの政治的絨毯爆撃によって、イギリスの航空機メーカーには、艦隊航空隊(Fleet Air Arm/FAA)が必要とする航空機を開発する余力が無かった。
イギリスの航空機メーカーにマトモな艦上戦闘機の開発経験があったかは別としてであるが……
一方、アメリカのマクドネル社(当時)は、初飛行したばかりのF4H-1(62年9月の空海軍呼称統一以降は、F-4A)の海外セールスプロジェクトチームを発足させていた、これは、当時航空母艦を保有するが、自国での航空機開発能力が無い(もしくは失いつつある)国をターゲットとした物で、当時のマクドネル社の海外取引の実績は、カナダ海軍にF2Hバンジーを売却した実績のみであった。この経験不足を補ったのが、アメリカ海軍が行なったトップフライト計画を始めとする、到達可能高度や一定高度への到達時間等を始めとする、世界記録の更新を目的とした挑戦で、次々と記録を塗り替えて行った。59年12月6日の到達可能高度更新直後に、マクドネル社は、イギリス海軍に対して、『イギリス海軍の空母でのF4H-1の適応性』と言うレポートを提出したほか、60年4月には、ロンドンで、マクドネル社の技術者チームとイギリスの国防省、空海軍、当時は民間企業で英国面を堪能中でもあった、ロールスロイス社との意見交換が行なわれた。この中で、ロールスロイス社が民間機向けに開発中であった、RB.168スペイターボファンが、F4Hに搭載されているJ79ジェットエンジンと同等のサイズで燃費がよく、推進力がすぐれ、イギリスの面子も保てることから、イギリス向けF4Hに最適とされた。
このRB.168スペイは、当初の目的通り、民間機用の動力源として、トライデント(商業的にはコケたけど)やBAC 1-11(ソコソコ売れた)で使われたほか、船舶向けのマリーン・スペイや地上走行で音速突破を目指した、ストラストSSCにも搭載され、酸素と燃料さえあればどこでも活躍できる動力源として、名を馳せた……ブリティッシュファントム用として以外ではね☆
ブリティッシュファントム(海軍の制式名称ファントムFG.1・マクドネル社呼称F-4K、空軍制式名称ファントムFGR.2・F-4M)の原設計はF-4Bをベースにしているが、実際の開発時期はF-4Jと重なっており、開発は相互にリンクしながら進められた。スペイを搭載するにあたり、空気吸入量はJ79の20%増しとなるので、エアインテイクの幅を6インチ(約15センチ)拡げて面積を20%増やす必要があった。最大の問題になったのは搭載方法で、J79より全長で95mm短いことは全く問題無いが、最大直径は120mmも太い。そこで、もともと下向きだった推力軸線をさらに下向きにすることで何とか納めることができた。リヒートの高熱が飛行甲板や滑走路を傷める危険性が増すことになるが、より短い滑走距離を求めるイギリス海軍にはかえって好都合だった。
生産にあたってはコストベースで50%を目標にイギリスの国内メーカーが参加することが契約の条件となっていた。最終組み立てはマクドネル社セントルイス工場で行なわれるが、エンジンのロールスロイスを筆頭に、マーチン・ベイカー、ショートなど数多くのメーカーを参入させて、新鋭機の開発中止に沈むイギリスの航空機産業への一助とする目論見だった。ところが開発テストのつまづきや140機の購入を見込んでいた機数の大幅な削減に、インフレも手伝い機体価格は当初見積もりの2倍近くに跳ね上がり、ブリティッシュファントムはF-4シリーズの中で最も高価な機体になってしまった。このため国産化率も最終的には46%にとどまった。
掲示板
2 ななしのよっしん
2016/07/22(金) 05:07:02 ID: BzAp4D7NuB
ポンド高のセィ;?
3 ななしのよっしん
2022/07/12(火) 15:38:01 ID: D2/SJ5rih8
センチュリオンとは逆のことをやってるな。
イスラエルといいジョンブルどもといい、目の付け所が違うというか。なに考えてんだというか…。
まあ、ターボファンエンジン搭載の戦闘機は世界でも悲願だったから、意義は大きいけど。
4 ななしのよっしん
2024/01/09(火) 13:31:16 ID: 5Sjqf2Frx8
ケツがでかいのは言うまでもないが空母から発艦するときの
やたらとピンと伸びたノーズギアが異彩を放っている
急上昇ワード改
最終更新:2025/11/15(土) 06:00
最終更新:2025/11/15(土) 06:00
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