令和3年札幌市東区ヒグマ襲撃事件 単語

レイワサンネンサッポロシヒガシクヒグマシュウゲキジケン

2.2千文字の記事

本記事では、2021年令和3年6月18日札幌市東区で発生したヒグマ襲撃事件について記述する。

この事件の呼称は各メディアにより異なり「札幌市ヒグマ襲撃事件」「札幌市東区ヒグマ襲撃事件」「令和の丘珠事件」など様々であるが、本件での被害札幌市東区の広範囲で発生していることや、1878年(明治11年)に同地で発生した熊害事件との区別のため、本記事は令和3年札幌市東区ヒグマ襲撃事件という記事名とする。

現場の概況

札幌市は人口200万人近くを抱える大都市である一方で、域の半分以上が山に覆われた自然豊かな地としての側面も持っている。この山北海道の例に漏れヒグマの生息地であり、山地帯に隣接する南区簾舞や西区福井などの地域では毎年のようにヒグマ情報が挙がっていた。

一方、本件の現場となった東区は、今やほぼ全域が拓かれて住宅地化しており、ヒグマの住処となりえる場所など皆無と言って良く、山からも相当に離れた地である。そのような場所にヒグマが現れるなど、も想像だにしなかったであろう。…この事件が起こるまでは

事件の経緯

令和3年6月18日午前2時15分、北区篠路町上篠路にて「っぽい動物がいる」との110通報。これが事件当日、最初に寄せられた本件ヒグマ情報であった。

午前3時12分、東区丘珠町にある介護老人保健施設の防犯カメラに、同一個体と思われるヒグマが写っているのが確認された。次いで午前3時28分、東区北31条東19丁でもヒグマ撃された。

次々に情報が寄せられる中、午前5時55分、最初の人的被害が発生する。ゴミを出して自宅に戻ろうとしていた70代の男性が、自宅近くの東区北19条東16丁ヒグマと遭遇。驚いて逃走する男性の後をヒグマが追いかけ、を曲がったところで転倒した男性の上を踏みつけていった。ヒグマはそのまま走り去ったため大事には至らなかったものの、男性は踏みつけられた際に背中を突き立てられ軽傷を負った。

午前6時15分、東区北20条東16丁で、80代の女性が同じくゴミ出しから戻ろうとしたところヒグマと遭遇。逃げようとして転倒したところをヒグマに踏みつけられ軽傷を負った。

その後ヒグマ北上し、午前6時30分頃、東区北31条東15丁イオン札幌元町店付近をヒグマ徘徊しているのが撃された。

午前7時18分、ヒグマ東区北33条東16丁を歩いていた40代男性突然後ろから襲撃。うつぶせに倒れた男性に対し、ヒグマはなおも執拗に攻撃を続けた。やがてヒグマパトカーの接近に気付いて逃走し、男性は一命を取り留めたものの、計140針縫う外傷に加え、が折れてに刺さる重傷を負った。

ヒグマはなお東区内を徘徊し、午前7時58分、陸上自衛隊丘珠駐屯地の正門前に現れた。門番をしていた自衛隊員はヒグマを侵入させまいと急いで門を閉めようとしたが一遅く、ヒグマの頭部が門に挟まってしまった。ヒグマは前肢で強引に門をこじ開けて丘珠駐屯地に侵入すると、門番に嚙みついて軽傷を負わせ、丘珠空港の敷地を横断するように走り去った。

午前11時16分、丘珠空港近くの茂みに身を隠していたヒグマハンターが駆除。4人に重軽傷を負わせたヒグマは、体長161cm、体重158kg、4歳のオスであった。

考察

この事件の特筆すべきは、通常ならまずヒグマが現れないような大都市っただ中にヒグマが現れ、あまつさえ人を攻撃したという点である。本件でヒグマ徘徊したとされる場所は、近い所で札幌駅から3kmほどしか離れていない住宅街である。近年人を恐れない「新世代クマ」の登場により、クマ地に侵入する事例が各地で増加傾向にあり問題視されているが、ここまで人間生活圏の深くまで侵入するのは全くイレギュラーであった。

ヒグマはどのようにして、中まで侵入したのだろうか。同一個体とみられるヒグマ情報や、フン・足跡などの跡を調したところ、どうやらこのヒグマは当別町方面の山地から南下し、石狩川を渡った後、籠(ふしこ)路など伝って地に侵入したらしいことが分かった。侵入経路となった路は当時藪が生い茂っており、ヒグマが身を隠しやすい環境であったことが地への誘引に繋がったと見られる。

ヒグマが人を攻撃した理由については、進路の邪魔になる人間を排除するためと見られているが、3人被害者男性が特に執拗な攻撃を受けた理由については未だによくわかっていない。いずれにせよ、本件はヒグマ人間がうまく距離を取りながら共存することの難しさを、改めて考えさせられる事件であった。

その後

札幌市は、本件ヒグマの侵入経路となった路を含めた河川刈りを実施した。見通しを良くすることで、ヒグマが身を隠しにくくなることを狙った対策である。
だが、その後もヒグマ地への出は減るどころか過去最悪のペースで増え続け、ヒグマ対策の抜本的な見直しが喫緊の課題となっている。

ヒグマに襲われ重傷を負った40代男性は、治療とリハビリを続け、翌年には仕事に復帰できる程度まで回復した。だがその後も後遺症が残り、また精神面のダメージから「は怖くて同じを通れない」とも話している。

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