「俺がガンダムだ」とは、「この世界に神はいない」の対義語である。
2007年放送のアニメ『機動戦士ガンダム00』の主人公、刹那・F・セイエイの発した、最も有名な台詞の一つである。
彼および本作を象徴する名言であり、同時に彼と本作を代表する迷言でもある。
刹那は幼少時にガンダムによる武力介入を間近で見、命を救われた経験がある。
幼い頃から中東テロ組織の少年ゲリラ兵として殺伐たる環境に育ち、神という存在に絶望していた刹那にとって、その体験はまさに新たな福音だった。
以来、彼は自らをガンダム≒救世主そのものとして、戦争根絶の達成を目指すようになる。
「俺がガンダムだ」は、その迸る想いの情熱的表現であり、魂の叫びと言えよう。
彼はこの言葉とともに武力介入を行い、ガンダムたらんとする意思と現実の狭間で葛藤し続ける。
それは兎も角、この台詞の余りにぶっ飛んだセンスと、直後の「何言ってんだ?」という、ロックオン・ストラトスから飛んできた余りに常識的なツッコミによって、刹那のキャラ付けは確立された。ちょっと痛い子路線である。
以降、彼は度々このセリフ及び派生形を口にし、「それはひょっとしてギャグで言ってるのか?」と視聴者を幾度も戸惑わせることになる。
一見すると不可解な言葉だが、刹那・F・セイエイと言うキャラクターを考察するキーワードとしてこのセリフを捉えるならば、非常に重要な意味を帯びてくる。
刹那は劇中、「俺はガンダムだ」ではなく、「俺がガンダムだ」と一貫して発言している。
助詞「は」と「が」の相違は、そのまま主体的表現と客体的表現という対比構造に置き換えることができる。
その構造に於いては、「が」という助詞は客体的表現に位置付けられよう。
「愛が愛を『重すぎる』って理解を拒み」や「純真さがシンプルな力に変わるとき」など、「が」によって繋がれた文脈は、絶対的な命題というニュアンスに薄く、どこか一歩身を引いた、「そう感じている自分」というものを浮き彫りにさせる。
俯瞰的かつ単点的な視点をもって対象を把握し、かつ強意の訴えかけをも行う助詞である。
この様に、「が」の働きとは観測的な役割を持つ認識主体を発生させることによる文中の本来の主体の客体化であり、永続性に乏しい一時的な焦点化であると言える。
この観点に立って考えるならば、刹那は「俺がガンダムだ」という言葉によって、「俺=ガンダム」という認識を暫定的に獲得していることになる。つまり、刹那はガンダムという存在を主体的存在として自意識に取り込めていないのである。
逆のパターンとしては、世界の限界に触れた際の嘆き「俺は・・・ガンダムにはなれない・・・」を挙げることができる。
この場合の刹那にとっては、「俺≠ガンダム」であることは規定の了解事項であり、継続的な事実である。
(これは敵となったチームトリニティに放った「お前たちがガンダムであるものか!」という懐疑的・願望的セリフを経て「貴様はガンダムではない!」と断ずる流れに於いてはっきりと対比が可能になる)
しかし、ここで疑問がひとつ生じる。
刹那自身がガンダムと同一化することに対し確信を得ていないのならば、彼の苦悩や葛藤に意味はあるのだろうか?
常に「俺がガンダムだ」と自分に言い聞かせ続けなければ自我を保てない、自己欺瞞に満ちた人間なのだろうか?
決してそうではないことを理解するためには、ある事を思い出す必要がある。
それは、「が」という助詞のもうひとつの側面であるところの、「変化を許容する」という性質である。
そして、「能動的に選択する」という姿勢である。
「は」という助詞は主体的であり、固定的であり、自己認識の外界への放射である。
周知の事実、あるいは自己がそうたらしめるべき言葉を紡ぐ際に用いられる。
その最たる例を挙げるとすれば、やはり刹那とって理想のガンダム像であったマイスター、リボンズ・アルマークの発言であろう。
「言ったはずだよ。僕はイノベイターをも超えた存在だと」「救世主なんだよ、僕は」「僕は神そのものだよ」というように、彼の言葉にはことごとく「は」が用いられており、その言葉はすでに完結されている。
それに対し、「が」は客体的であり、流動的であり、認識の収束である。
そうなろうとする意思の指向、数多の可能性の内から選ばれたひとつの事柄に繋がれる語である。
「俺=ガンダム(≒救世主)」という概念を、リボンズのように「は」を用いて表現するのは容易い。だが、それだけに安易な道でもある。
そこには己を客観視する視座や、自分を再評価する問題意識を介入させる余地は非常に少ない。
「俺はガンダムだ」という命題はそれ単体で帰結してる故に、根拠の無い言葉となりかねない。
刹那はそうした裏打ちの無い「俺=ガンダム」に甘んじることを、歪んだメサイア・コンプレックスや仮初の神の全能感に浸ることを否定しているのである。
あくまで己の意思で自らを処し、戦争根絶の指針として「ガンダム」という存在に接近しようと試みているのだ。
要するに、「俺がガンダムだ」というセリフは、悩み苦しみながらも理想に邁進する高潔な意志と未来を掴むための変革意識を正しく表現した、まさしく刹那・F・セイエイのキャラクターを体現したものである。
鑑みるに、刹那の行動理念の原体験であった筈の、刹那を救ったガンダムマイスター、リボンズ・アルマークを断固として拒絶するに至ったのは必然であったのかも知れない。
この言葉は
「俺がガンダムだ」
↓
↓
↓
セリフ内容のインパクトも強いが、最初にこのセリフを口にして以降は様々な派生系のセリフを様々なシーン(主に印象に残るようなシーンの決めゼリフとして)で、度々口にしている。
そのためか、ゲームをはじめとした他メディアでも彼が登場する際は彼の決め台詞として口にすることが多い。
「俺達がガンダムだ!」や「これが俺のガンダムだ!」等といった派生系のセリフも存在するが、
基本的には「俺がガンダムだ!」が使われることが多い。Gジェネレーションシリーズでは機体の組み合わせにもよるが、ガンダム系の機体でこのセリフを言ってくれる。
「俺が○○だ!」と改変しやすい迷言ではあるものの、元のインパクトが強すぎるせいなのか、だいたいファンの間でガンダムネタでそのまま使われることが多い。
動画内のコメントの煽りあいや、過度の嫁宣言の応酬において、しばしばこのセリフが投下される。
特にshitaコメントが応酬される箇所へ強引に文脈無視にbig shitaで介入してくることが多い。
コメントの色は主に刹那のシンボルカラーに近いcyanやblueが使われる。
正確な発祥時期や場所は不明だが、一説には2008年11月の「ニコニコ動画流星群」中にコメントされたのが初出だとされる。(引き続き、情報求ム)
このコメントは「ひぐちカッター」のように、これまでの悪い流れを断つ目的で書き込まれることが多い。
セリフの持つ馬鹿っぽい響きや、脈絡の無い唐突さに、視聴者は論争の愚かしさを悟りニコニコする。
場合によっては、このコメントに乗っかって様々なガンダム関係のネタコメントが積まれる。
戦争根絶を目指す刹那は、このような些細な争いも看過できないのだ。
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526 ななしのよっしん
2023/12/09(土) 08:46:24 ID: 7JX+bsKpJt
ウマ娘でオグリキャップの土手煮やヒシアケボノのちゃんこ鍋がわりかしすんなり理解できたのこれのお陰だと思う
概念としては近いし
527 ななしのよっしん
2024/03/02(土) 23:25:46 ID: 2MqLWC+qPH
SEED FREEDOMを4DXで観ると、
「俺がガンダムだ」を実体験できるという声が多数。
528 ななしのよっしん
2024/09/22(日) 17:23:11 ID: 14k1PbYqii
「が」と「は」の違いをこんなに解説してくれるサイトは見たことがない。感動した
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最終更新:2024/11/04(月) 08:00
最終更新:2024/11/04(月) 07:00
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