硫黄島からの手紙とは (イオウジマカラノテガミとは) [単語記事]

硫黄島からの手紙(原題:Lett ers from Iwo jima)とは、2006年 12月に公開されたアメリカ製戦争映画である。大東亜戦争末期に生起した硫黄島の戦いを題材としている。

概要

大東亜戦争末期、激戦となった硫黄島の戦いを日米双方の視点から描く「硫黄島プロジェクト」によって製作された日本側視点の映画。上映時間は141分。現在硫黄島は「いおうとう」と呼ばれているが、改名される2007年 6月18日以前の作品なので「いおうじま」読みである。

2006年 4月18日、総監督を務めるクリントン・イーストウッドが六本木で製作発表会見を開き、プロジェクトの始動を宣言した。まず最初にアメリカ側視点の「父親たちの星条旗」が製作され、次に「硫黄島からの手紙」が製作された。イーストウッド監督は主役の栗林忠道中将役に渡辺謙を起用。監督曰く「彼しかいない」との事。当初はアメリカ側視点しか作らない予定だったが、製作にあたって本を読んだり、証言を聞いたりしているうちに日米の共通点「戦いを強いられた若者たち」があると気づき、双方の視点で作る事を決意。日系の女性脚本家に依頼して骨子を作ってもらった。栗林中将が本土の妻子宛に綴った「玉砕総指揮官の絵手紙」をベースにしている。

オーディションの結果、嵐の二宮和也、加瀬亮、伊原剛士、中村獅童、山口貴史、尾崎英二郎が日本国内より起用。他の日本人キャストはアメリカ滞在中の者から選出された。二宮は清水役でオーディションを受けたが、当時すでに舞台・テレビ・映画で見せていた演技力を評価されて西郷役に抜擢されてハリウッドデビューする事になった。

西中佐の米兵看護エピソードや、アメリカ軍を震撼させた四式20cm噴進砲をしっかり描写するなど細かい部分も丁寧に再現されていて概ね好評を得ている。

公開後の評価は非常に高く、日本国内では硫黄島の戦いを取り上げたドキュメンタリーやドラマが乱造され、関連本も多く出版された。アメリカでも同様に高く評価され、第79回アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、音響編集賞にノミネート。全編日本語の作品が外国映画賞ではなく作品賞にノミネートされたのは前代未聞の快挙である。

あらすじ

2006年、硫黄島。戦跡の調査隊が地中に埋まった多数の手紙を発見したところから物語が始まる。彼らは一体何を伝えたかったのか――時代は戦時中へと巻き戻る。

1944年 6月、硫黄島の飛行場に1機の一式陸攻が降り立つ。中から現れたのは満州より転属してきた小笠原方面最高司令官・栗林忠道中将（渡辺謙）であった。徴兵された元パン屋の西郷(二宮和也)は水際防御作戦のための塹壕を掘っていたが、戦いを強いる日本の悪口をうっかり言ってしまい上官から体罰を受ける。そこへ通りがかった栗林中将が体罰を咎めて西郷を助けた。続いて彼は恒例となっていた水際防御作戦を否定して地下壕を作って長期持久を指示、また全滅を早めるだけの万歳突撃も禁止する。栗林は今までの司令官とは違った雰囲気をまとっていた。

そして1945年 2月19日、熾烈な準備爆撃を経て硫黄島にアメリカ軍が上陸を開始。兵力差は圧倒的であり僅か5日で決着がつくだろうと予想された。揚陸艇を使ってアメリカ兵が次々に上陸してくるも、島内に隠された沿岸砲や重火器は沈黙を保ち続ける。敵が内陸の射程圏内に入ってくるのを今か今かと待ち構えながら。これはギリギリまで引き付けた上で一斉に攻撃するという栗林の策略であった。そして敵を十分に引き付けたとして栗林中将は攻撃命令を下し、戦車砲、機関銃、野砲が一斉に火を噴いてアメリカ兵を攻撃し始めた。