第一次産業とは、自然界に働きかけて直接に富を取得する産業すなわち「農業」「林業」「漁業」の総称である。
歴史的に長い歴史を有する産業である。英国出身の経済学者コーリン・クラーク(Colin Clark)は、人類の産業は第一次産業から第二次産業、第三次産業へと、徐々に比重が移っていくという説を唱えた。実際、多くの発展途上国において第一次産業は大きな比重を占めているのに対し、先進国のGDPに占める第一次産業の割合はごくわずかである。日本における第一次産業のGDP構成比は2015年データにて1.1%。
コーリン・クラークの定義では鉱業もここに含まれるが、日本国における日本標準産業分類では鉱業は第二次産業に分類されている。そのため海外の国を説明する際に第一次産業が多いといった場合には鉱業の産出量が多い国が含まれるが、日本国内のニュースなどにおいて第一次産業といった場合には農林水産業全般を指し示す食い違いが存在する。
自然界に働きかけて直接に富を取得するという性質上、気候や天候の影響を受けやすい、さらに、豊凶によって価格が変動しやすい。農業および林業は一定面積の農地・山林がなければ営めないため、広大な国で盛んな産業であることが多い。
先進国では、GDPに占める第一次産業の割合はごくわずかであるが、絶対額としての生産額はかなり高い場合もある。米国、カナダ、オーストラリアなどの広大な面積を有する国では、特にそのような傾向が見出される。ちなみに、「日本など土地が無い国では不可能(国内生産が僅か)な産業」などといい加減なことを言う人もいるようであるが、日本の農業生産額は世界第5位とされるなど、決して第一次産業の絶対額は小さくない。日本の国土は、その約3分の2が山林、約16%が農地である。しかし、第二次産業や第三次産業が著しく発展したため、相対的に第一次産業が小さく見えてしまうのは事実である。
日本の場合、江戸時代には殆どの食料を自給していたが、当時の人口は3千万人程度であった。現在は1億2千万人と、その4倍に増加しているため、いくら技術が進歩してきたとはいえ、全ての食料を国内で賄うことはできない。コストベースで見ると、日本の食料は約4割近くが外国からの輸入に頼っている状況である(2015年のコストベース食料自給率は66%)。
食料の多くを輸入に頼っている日本、韓国、スイス、ノルウェーなどの国では「輸入できなくなったらどうするよ!?」という問題を抱えているため、「食料安全保障」といった概念が政策的に重視されている。もちろん経営規模の面で米国やオーストラリアなどと競争するのは困難であるが、だからといって「「日本の農業を盛んにする!」と唱えるのはキチ(ry」:などと笑っているだけでは事態は改善しない。第一次産業の重要性を正しく認識することが、問題解決への第一歩である。
(粗放農業等のような)原始的な第一次産業を営むだけであれば、教育が無い人間でもできる。発展途上国においては、貧困層の人間が日銭を得る手段として第一次産業に従事している場合もあるが、これは殆ど自給的な営みである。このような国においては、産業の持続可能性を顧みずに「土地を休めずに次々開発する」「魚を根こそぎ取ってしまう」といった悪弊が見られる。
しかしながら、先進国における第一次産業は高度な学問的蓄積を有する産業へと発展してあり、「教育が無い人間でもできる」などと笑い飛ばせるような代物ではない。日本などの先進国においては、バイオテクノロジーを駆使しブランドのマネジメントも行うといった第二次産業的、第三次産業的な農業(アグリビジネス)も多数存在する。第一次産業を中心に、第二次産業および第三次産業を組み合わせることによる「六次産業化」も進められている(1×2×3=6)。これは最終加工完了までを社内で内製化することで利益を最大化するとともにニーズに合わせた素材生成を心がけやすくなるというもので、花畑牧場の塩キャラメルが流行したのはこの六次産業化を強く意識しビジネスモデル化に成功した側面もある。本来であれば一次産業ではないJR九州やイタリアンレストランチェーンのサイゼリヤなどが農業に進出するのもほぼ同じ流れとみることができる。
近年においてはマグロの完全養殖や植物工場といった、近年の天変地異の多さを逆手にとって安定生産できることを売りにした第一次産業の業態も発生してきている。なお、2016年時点においては収支という意味ではお世辞にも良いとは言えない状況も多々散見される。その一方でIoTを組み合わせることで省力化を進めたり、農地の遮光シートに発電素子を組み合わせた発電収入と合わせた農業などというものも発生している。以上のことからも将来的な見地としては第一次産業には更なる進歩の可能性があるといえる。
掲示板
7 ななしのよっしん
2022/05/27(金) 11:38:52 ID: 7xgYBEJV9U
この記事、食料安全保障の面でよく取り上げられるカロリーベース自給率ではなく、わざわざ一般的ではないコストベース自給率持ち出しているのどうなのかと思った
有事のことを考えたらカロリーの低い高付加価値農産物よりも穀物などの自給率が問題だろうに
8 ななしのよっしん
2022/07/13(水) 20:53:00 ID: 22LHuFhXL4
スポーツで競うみたいな感覚で語る、なんちゃって愛国のアホどもだからさ
9 ななしのよっしん
2022/09/29(木) 16:48:58 ID: 44MiU7Lo4W
有事のこと考えたら燃料肥料はとか国内、海上の輸送網はとか多岐にわたるのだが
国内で自給できても消費地の都市への輸送が敵の攻撃でできなったのが戦前だしその自給できた量も必要量に足らない
戦前の有機農業で既に本土の人口を一番収量がいい米や芋ですら賄えてなかったのだが
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最終更新:2024/09/19(木) 04:00
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