純資本流出 単語

ジュンシホンリュウシュツ

1.1万文字の記事

純資本流出net capital outflow)とは、経済学の言葉である。CFと略されることがある[1]。対外純投資ともいう。

概要

定義

Aの純資本流出とは、A資本流出からA資本流入を差し引いた額である。

閉鎖経済の国と開放経済の国

資本流出資本流入と純資本流出が常にゼロの数値になるは、全な閉鎖経済と表現される。

資本流出資本流入と純資本流出がゼロ以外の数値になる可性を持つは開放経済と表現され、小国開放経済大国開放経済の2種類が考えられる。

純資本流出と純輸出の一致

純資本流出CF純輸出NXは必ず一致し、CFNXになる。このことは入門者向けの経済学教科書で次のように説明される[2]

開放経済恒等式はY=G+C+INXと書くことができる。その式を変形するとY-G-C=I+NXとなる。

実質GDP・Yから政府購入Gと消費Cを引いた残りの部分は民貯蓄Sといい、Y-G-C=Sという式が成り立つ。この式をY-G-C=I+NXに代入すると、S=I+NXとなる。

S=I+NXを変形するとS-I=NXとなる。この式の左辺は「民貯蓄Sから内向け投資Iを引いて外に貸し出されたもの」という意味だが、それは純資本流出CFそのものである。ゆえにS-I=CFが成り立つ。この式をS-I=NXに代入すると、CFNXになる。

純資本流出と純輸出の一致の例

純資本流出と純輸出が必ず一致することを確認するためには例を考えてみることが有効である。本記事において『純資本流出と純輸出の一致の例』の項で例を挙げていく。

自国の実質利子率が変わると純資本流出が変わる

大国開放経済のAと、同じく大国開放経済のBがあり、実質利子率がぴったり同じだとする。A緊縮財政を実行して実質利子率を下げ、Bが財政政策を維持して実質利子率を一定に保つ努力をして、2間の実質利子率の差が広がったとする。そうなるとAを発してBに到達するキャリートレードが発生し、Aの純資本流出が増え、A純輸出が増える。

Aを表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸民貯蓄Sのモデルにおいて、緊縮財政をするので民貯蓄供給曲線(垂直線)が右に行移動し、民貯蓄需要曲線(右肩下がり)との交点Xを通る実質利子率線(線)が下に行移動し、実質利子率rが下がる。

Aを表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸純資本流出CFモデルにおいて、自実質利子率rが下落したら、実質利子率線(線)が下に行移動し、純資本流出需要曲線(右肩下がり)との交点Yを通る純資本流出供給曲線(垂直線)が右に行移動し、純資本流出が増える[3]

外国の実質利子率が変わると純資本流出が変わる

大国開放経済のAと、同じく大国開放経済のBがあり、実質利子率がぴったり同じだとする。Aが財政政策を維持して実質利子率を一定に保つ努力をして、B緊縮財政を実行して実質利子率を下げ、2間の実質利子率の差が広がったとする。そうなるとBを発してAに到達するキャリートレードが発生し、A実質利子率が下がり、Aの純資本流出が減り、A純輸出が減る。

Aを表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸民貯蓄Sのモデルにおいて、民貯蓄需要曲線(右肩下がり)が左に行移動し、民貯蓄供給曲線(垂直線)との交点Xを通る実質利子率線(線)が下に行移動し、実質利子率rが下がる。

Aを表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸純資本流出CFモデルにおいて、①自実質利子率rが下落するので、実質利子率線(線)が下に行移動し、純資本流出需要曲線(右肩下がり)との交点Yを通る純資本流出供給曲線(垂直線)が右に行移動し、純資本流出が増える。しかし、②純資本流出需要曲線(右肩下がり)が左に行移動することも発生するので、実質利子率線(線)との交点Yを通る純資本流出供給曲線(垂直線)が左に行移動し、純資本流出が減る。①による純資本流出の増加よりも②による純資本流出の減少の方が大きい効果を持つので、純資本流出が減る[4]

Aは財政政策を一定に保ったのに外のBに釣られて実質利子率を下げることになる。閉鎖経済実質利子率はその政府の財政政策で決まり、小国開放経済実質利子率は外の財政政策で決まる。大国開放経済閉鎖経済小国開放経済の中間の体制であってその両方の性質を持つので、自の財政政策で実質利子率を決めたり、外の財政政策で実質利子率を決めたりする。

自国や外国の実質利子率が変わると純資本流出や純輸出が変わる例

や外実質利子率が変わると純資本流出や純輸出が変わることを確認するためには例を考えてみることが有効である。本記事において『自国や外国の実質利子率が変わると純資本流出や純輸出が変わる例』の項で例を挙げていく。

純資本流出と投資の割合

開放経済恒等式はY=G+C+INXと書くことができる。その式を変形するとY-G-C=I+NXとなり、Y-G-C=Sという式やNXCFという式を代入するとS=I+CFとなる。

S=I+CFという式は、「民貯蓄Sが、自へ支出されて投資Iに向かうか、外へ支出されて純資本流出CFに向かうか、そのどちらかになる」ということを示している。

民貯蓄Sの中の投資Iに向かう割合と純資本流出CFに向かう割合は、自の政策などで変動する。このことについては本記事の『純資本流出と投資の割合』の項で述べる。

純資本流出と純輸出の一致の例

現実における貿易決済

入門者向けの経済学教科書において2ヶ間の貿易を説明するときは、「輸入が自通貨紙幣で渡して貿易の決済をする」と説明することが多い。例えば、「日本の業者がアメリカ合衆国の業者から財やサービス輸入するとき、日本の業者が円の紙幣アメリカ合衆国の業者に支払う」と説明する[5]

しかし、現実において2ヶ間の貿易をするときは、米国銀行アメリカ合衆国で営業する銀行)に預けてあるドルアメリカ合衆国ドル)で決済することが極めて多く、ドルが基軸通貨になっている。例えば、日本の業者がアメリカ合衆国の業者から財やサービス輸入するとき、日本の業者もアメリカ合衆国の業者も米国銀行に口座を持っていることが極めて多いので、日本の業者の米国銀行口座からアメリカ合衆国の業者の米国銀行口座へドル銀行振り込みして決済する。また例えば、日本の業者がオーストラリアの業者から財やサービス輸入するとき、日本の業者もオーストラリアの業者も米国銀行に口座を持っていることが極めて多いので、日本の業者の米国銀行口座からオーストラリアの業者の米国銀行口座へドル銀行振り込みして決済する。

本項では一貫して現実における貿易決済と同じように説明する。

両替だけなら純資本流出と純輸出がゼロになる

両替を行うだけなら、純資本流出がゼロを保つ。

  1. 日本の居住者が円売りドル買いの両替をした。アメリカ合衆国の居住者は円買いドル売りの両替をしたことになる。
  2. 日本アメリカ合衆国両国はそれ以外の貿易や際的資本移動を全く行わなかった。

この場合、日本アメリカ合衆国も純資本流出がゼロのままである。

このとき、日本の居住者の円売りという行動は「新規に生産された何らかのサービス輸入してその代金として円を支払った」と解釈でき、資本流入の増加を発生させたと見なすことができる。また日本の居住者のドル買いという行動は「新規に生産された何らかのサービス輸出してその代金としてドルを受け取った」と解釈でき、資本流出の増加を発生させたと見なすことができる。このため、日本の居住者の円売りドル買いは、「資本流出の増加と資本流入の増加を同じだけ発生させていて純資本流出をゼロに保っていて、輸出の増加と輸入の増加を同じだけ発生させていて純輸出ゼロに保っている」と見なすことができる。

アメリカ合衆国の居住者にとっても話は全く同じである。冗長であるが説明すると次のようになる。

アメリカ合衆国の居住者の円買いという行動は「新規に生産された何らかのサービス輸出してその代金として円を受け取った」と解釈でき、資本流出の増加を発生させたと見なすことができる。またアメリカ合衆国の居住者のドル売りという行動は「新規に生産された何らかのサービス輸入してその代金としてドルを支払った」と解釈でき、資本流入の増加を発生させたと見なすことができる。このため、アメリカ合衆国の居住者の円買いドル売りは、「資本流出の増加と資本流入の増加を同じだけ発生させていて純資本流出をゼロに保っていて、輸出の増加と輸入の増加を同じだけ発生させていて純輸出ゼロに保っている」と見なすことができる。

もちろん、実質GDPの計算の実務において、両替が発生したときに「輸出輸入の同規模の増加」などという煩雑な勘定をせず「何も起こっていない」と簡潔に扱う。

両替と中古品の売買だけなら純資本流出と純輸出がゼロになる

両替と中古品の売買を行うだけなら、純資本流出がゼロを保つ。

  1. 日本の居住者が円売りドル買いの両替をした。アメリカ合衆国の居住者は円買いドル売りの両替をしたことになる。
  2. 日本の居住者がドルを支払って中古工作機械を購入して本に搬入した。アメリカ合衆国の居住者はドルを受け取って中古工作機械を売却して外へ搬出したことになる。
  3. 日本アメリカ合衆国両国はそれ以外の貿易や際的資本移動を全く行わなかった。

この場合、日本アメリカ合衆国も純資本流出がゼロのままである。

2.の段階において日本の居住者は中古品を購入したが、これにともなうドルの支払いは資本流出の減少と見なされない。資本流出の減少は「ある期において新規に生産された財・サービス輸入の代償として外通貨を支払うこと」といった定義になる。中古品を購入して自に搬入する行為は、輸入として勘定しない。

2.の段階においてアメリカ合衆国の居住者は中古品を売却したが、これにともなうドルの受け取りは資本流入の減少と見なされない。資本流入の減少は「ある期において新規に生産された財・サービス輸出の代償として自通貨を受け取ること」といった定義になる。中古品を売却して外に搬出する行為は、輸出として勘定しない。

中古品の売買は実質GDPに勘定されない[6]。このため中古品の売買は輸出輸入に勘定されず、それに関する決済も資本流出資本流入に勘定されない。

新規生産品の輸出入で純資本流出と純輸出が変動する その1

新規に生産された財を輸出したり輸入したりすることで純資本流出と純輸出が変動する。

  1. 日本の居住者が円売りドル買いの両替をした。アメリカ合衆国の居住者は円買いドル売りの両替をしたことになる。
  2. 日本の居住者がドルを支払って新規に生産された工作機械輸入した。アメリカ合衆国の居住者はドルを受け取って新規に生産された工作機械輸出したことになる。
  3. 日本アメリカ合衆国両国はそれ以外の貿易や際的資本移動を全く行わなかった。

この場合、日本純輸出と純資本流出が同じ額だけマイナスになり、アメリカ合衆国純輸出と純資本流出が同じ額だけプラスになる。

この例は、非・基軸通貨発行と基軸通貨発行が貿易をするときの典例である。

2.の段階において日本の居住者は新規に生産された財を輸入したが、これにともなうドルの支払いは資本流出の減少と見なされる。資本流出の減少によって純資本流出がマイナスになり、輸入によって純輸出マイナスになり、純資本流出と純輸出が一致する。

2.の段階においてアメリカ合衆国の居住者は新規に生産された財を輸出したが、これにともなうドルの受け取りは資本流入の減少と見なされる。資本流入の減少によって純資本流出がプラスになり、輸出によって純輸出プラスになり、純資本流出と純輸出が一致する。

新規生産品の輸出入で純資本流出と純輸出が変動する その2

前項をさらに拡大すると次の例のようになる。

  1. 日本の居住者が円売りドル買いの両替をした。アメリカ合衆国の居住者は円買いドル売りの両替をしたことになる。
  2. 日本の居住者がドルオーストラリアの業者に支払って新規に生産された工作機械輸入した。オーストラリアの居住者はドルを受け取って新規に生産された工作機械輸出したことになる。
  3. オーストラリアの居住者がドル買いドル売りの両替をした。アメリカ合衆国の居住者はドル売りドル買いの両替をしたことになる。
  4. 日本オーストラリアアメリカ合衆国の3はそれ以外の貿易や際的資本移動を全く行わなかった。

この場合、日本純輸出と純資本流出が同じ額だけマイナスになり、オーストラリア純輸出と純資本流出が同じ額だけプラスになり、アメリカ合衆国純輸出と純資本流出がゼロになる。

この例は、2つの非・基軸通貨発行が貿易をするときの典例である。

この例においてアメリカ合衆国は両替をしているだけなので、純輸出と純資本流出がゼロになる。

自国や外国の実質利子率が変わると純資本流出や純輸出が変わる例

実質利子率が下がって外実質利子率が上がると、自の純資本流出と純輸出が増え、外の純資本流出と純輸出が減る。

以下の説明では、「2間で貿易をするときは基軸通貨で決済する」という現実に即した仮定を緩め、「2間で貿易をするときはどちらかの通貨で決済する」という仮定にしている。その方が説明しやすいからである。

日本政府緊縮財政を実行し、日本実質利子率が下がった。一方でアメリカ合衆国積極財政を実行し、アメリカ合衆国実質利子率が上がった。

  1. 日本の居住者が円を銀行から借りた。日本銀行は、日本企業へ円を貸すことをやめて、その日本の居住者に円を貸した。日本企業は円を借りてその円で日本において新規に生産された工作機械を購入するつもりだったが、その予定をとりやめた。これにより、日本投資内支出投資)を減らした。
  2. 日本の居住者が円売りドル買いの両替をした。アメリカ合衆国の居住者は円買いドル売りの両替をしたことになる。
  3. 日本の居住者がドルを支払ってアメリカ合衆国企業の社債を購入し、アメリカ合衆国ドルを貸した。アメリカ合衆国企業は借りたドルを使ってアメリカ合衆国において新規に生産された工作機械を購入した。これにより、アメリカ合衆国投資内支出投資)を増やした。
  4. アメリカ合衆国の居住者が1.で入手した円を支払って日本の財・サービス輸入した。アメリカ合衆国輸入を増やして純輸出を減らし、輸入の代償として外通貨に対する財産権を減らしたので資本流出を減らして純資本流出を減らした。日本輸出を増やして純輸出を増やし、輸出の代償として自通貨に対する財産権を増やしたので資本流入を減らして純資本流出を増やした。
  5. 日本アメリカ合衆国両国はそれ以外の貿易や際的資本移動を全く行わなかった。

この場合、日本純輸出と純資本流出が同じ額だけプラスになり、アメリカ合衆国純輸出と純資本流出が同じ額だけマイナスになる。日本投資内支出投資)を減らし、アメリカ合衆国投資内支出投資)を増やした。

4.において、アメリカ合衆国の居住者は「日本企業に円を貸す」という選択をすることも一応は可である。しかし、日本実質利子率アメリカ合衆国よりも低いので、その選択をすることはありえない。このため4.において、アメリカ合衆国の居住者は、結局、「手持ちの円で日本の財・サービス輸入する」という選択肢をとるしかない。

「2間で貿易をするときは基軸通貨で決済する」という仮定にするとき、4.以降は次のようになる。名目為替レート実質為替レートの変動を説明に取り入れねばならず、説明が少し長くなる。

  1. アメリカ合衆国の居住者が1.で入手した円をドルに替えるつもりで円売りドル買いの両替をしようとした。しかしなかなか円買いドル売りをしようとする者が現れない。このため外為替市場で円売りドル買いが優勢になって円安ドル高が進み、日本名目為替レートが上昇し、アメリカ合衆国名目為替レートが下落した。
  2. 短期で物価が一定なので日本実質為替レートが上昇し、アメリカ合衆国実質為替レートが下落した。アメリカ合衆国輸入を増やして純輸出を減らし、輸入の代償としてドルという自通貨に対する財産権を減らしたので資本流入を増やして純資本流出を減らした。日本輸出を増やして純輸出を増やし、輸出の代償としてドルという外通貨に対する財産権を増やしたので資本流出を増やして純資本流出を増やした。
  3. 日本アメリカ合衆国両国はそれ以外の貿易や際的資本移動を全く行わなかった。

この場合、日本純輸出と純資本流出が同じ額だけプラスになり、アメリカ合衆国純輸出と純資本流出が同じ額だけマイナスになる。日本投資内支出投資)を減らし、アメリカ合衆国投資内支出投資)を増やした。

純資本流出と投資の割合

小国開放経済の国において自国の財政政策で割合が変わる

小国開放経済において、政府緊縮財政を採用して財政政策を縮小させて政府購入や消費を減らしたとき、民貯蓄が増えて純資本流出が増えて投資が一定となり、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

逆に言うと、小国開放経済において、政府積極財政を採用して財政政策を拡大させて政府購入や消費を増やしたとき、民貯蓄が減って純資本流出が減って投資が一定となり、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

小国開放経済において政府緊縮財政を実行したとする。小国開放経済を表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸民貯蓄Sのモデルにおいて、投資需要曲線(右肩下がり)が固定され、世界共通実質利子率r*の線(線)との交点Xも固定され、交点Xを通る投資供給曲線(垂直線)も固定され、投資Iが一定を保つ。一方で緊縮財政のために民貯蓄供給曲線(垂直線)が右に行移動する。そうなると、民貯蓄供給曲線投資供給曲線距離が広くなって純資本流出CFが増える。以上のために民貯蓄Sが増えて純資本流出CFが増えて投資Iが一定となる[7]

小国開放経済の国において自国の投資政策で割合が変わる

小国開放経済において、政府が拡的な投資政策を採用して投資を増やしたとき、民貯蓄が一定で純資本流出が減って投資が増え、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

逆に言うと、小国開放経済において、政府が縮小的な投資政策を採用して投資を減らしたとき、民貯蓄が一定で純資本流出が増えて投資が減り、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

小国開放経済において、政府投資を優遇する税制に変更して投資需要を増やしたり、技術革新が起こって投資需要が増えたりしたとする。小国開放経済を表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸民貯蓄Sのモデルにおいて、投資需要曲線(右肩下がり)が右に移動し、世界共通実質利子率r*の線(線)との交点Xが右に移動し、交点Xを通る投資供給曲線(垂直線)も右に移動し、投資Iが増える。一方で民貯蓄供給曲線(垂直線)は固定されたままである。そうなると民貯蓄供給曲線投資供給曲線距離が狭くなって純資本流出CFが減る。以上のために民貯蓄Sが一定で投資Iが増えて純資本流出CFが減る[8]

小国開放経済の国において外国の財政政策で割合が変わる

小国開放経済があり、それ以外に「世界経済を及ぼす大」があるとする。

世界経済を及ぼす大」が緊縮財政を採用して財政政策を縮小させて政府購入や消費を減らしたとき、小国開放経済において民貯蓄が一定で投資が増えて純資本流出が減り、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

逆に言うと、「世界経済を及ぼす大」が積極財政を採用して財政政策を拡大させて政府購入や消費を増やしたとき、小国開放経済において民貯蓄が一定で投資が減って純資本流出が増え、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

世界経済を及ぼす大」の政府緊縮財政を採用して財政政策を縮小させて政府購入や消費を減らし、世界共通実質利子率r*を下落させたとする。小国開放経済を表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸民貯蓄Sのモデルにおいて、世界共通実質利子率r*の線(線)が下に行移動し、投資需要曲線(右肩下がり)との交点Xが右に移動し、交点Xを通る投資供給曲線(垂直線)も右に移動し、投資Iが増える。一方で民貯蓄供給曲線(垂直線)は固定されたままである。そうなると民貯蓄供給曲線投資供給曲線距離が狭くなって純資本流出CFが減る。以上のために民貯蓄Sが一定で投資Iが増えて純資本流出CFが減る[9]

大国開放経済の国において自国の投資政策で割合が変わる

大国開放経済において、政府が拡的な投資政策を採用して投資を増やしたとき、民貯蓄が一定で純資本流出が減って投資が増え、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

逆に言うと、大国開放経済において、政府が縮小的な投資政策を採用して投資を減らしたとき、民貯蓄が一定で純資本流出が増えて投資が減り、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

大国開放経済において、政府投資を優遇する税制に変更して投資需要を増やしたり、技術革新が起こって投資需要が増えたりしたとする。大国開放経済を表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸民貯蓄Sのモデルにおいて、民貯蓄需要曲線(右肩下がり)が右に移動し、民貯蓄供給曲線(垂直線)との交点Xが上に移動し、実質利子率rが上がる。実質利子率rが上がるので、大国開放経済を表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸純資本流出CFモデルにおいて、実質利子率線(線)が上に移動し、純資本流出需要曲線(右肩下がり)との交点Yが左に移動し、交点Yを通る純資本流出供給曲線(垂直線)も左に移動し、純資本流出CFが減る。以上のために民貯蓄Sが一定で投資Iが増えて純資本流出CFが減る[10]

大国開放経済の国において外国の財政政策などで割合が変わる

大国開放経済Aと大国開放経済Bがあるとする。

Bにおいて政府緊縮財政を採用して財政政策を縮小させて政府購入や消費を減らして民貯蓄を増やして実質利子率を下げたとき、あるいはBにおいて革命内乱の勃発を許して投資家に「B投資をしても暴徒によって資本を壊されるかもしれない」と不安に思わせてB投資需要を減らして実質利子率を下げたとき、Aにおいて実質利子率が下がって民貯蓄が一定で純資本流出が減って投資が増え、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

逆に言うと、Bにおいて政府積極財政を採用して財政政策を拡大させて政府購入や消費を増やして民貯蓄を減らして実質利子率を上げたとき、あるいはBにおいて革命内乱の勃発を鎮圧して投資家に「B投資をしても暴徒によって資本を壊されることがない」と安心させてB投資需要を増やして実質利子率を上げたとき、Aにおいて実質利子率が上がって民貯蓄が一定で純資本流出が増えて投資が減り、民貯蓄のなかの純資本流出と投資の割合が変わる。

大国開放経済のB実質利子率が下がったとする。大国開放経済のAを表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸民貯蓄Sのモデルにおいて、民貯蓄需要曲線(右肩下がり)が左に移動し、民貯蓄供給曲線(垂直線)との交点Xが下に移動し、実質利子率rが下がる。実質利子率rが下がるので、大国開放経済のAを表すタテ軸実質利子率r・ヨコ軸純資本流出CFモデルにおいて、①実質利子率線(線)が下に移動し、純資本流出需要曲線(右肩下がり)との交点Yが下に移動し、交点Yを通る純資本流出供給曲線(垂直線)が右に移動し、純資本流出CFが増える。一方で、②純資本流出需要曲線(右肩下がり)が左に行移動し、実質利子率線(線)との交点Yが左に移動し、交点Yを通る純資本流出供給曲線(垂直線)が左に移動し、純資本流出CFが減る。①による純資本流出の増加よりも②による純資本流出の減少の方が大きい効果を持つので、純資本流出が減る。以上のために民貯蓄Sが一定で投資Iが増えて純資本流出CFが減る[11]

関連項目

脚注

  1. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー207ページ
  2. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』167~168ページ
  3. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー213ページ
  4. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー216ページ
  5. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』169ページ
  6. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』31ページ、39ページ
  7. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー175~176ページ
  8. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』98~99ページ178ページ
  9. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』176~177ページ
  10. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』98~99ページ214215ページ
  11. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー216ページ
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