LCSとは
本項では2.について記述する。
東西冷戦後、ソビエト連邦海軍という強敵が事実上消滅したことでアメリカ海軍の主任務は海上からの地上攻撃と海上での正規軍以外の非合法活動船に対する警備任務となり、冷戦期に設計・建造した巡洋艦、駆逐艦、フリゲートが従事していたがこれらは警備任務に使うには重厚長大に加え、一部は老朽化による退役が近づいていた。
これに加え、2000年にはアーレイ・バーク級駆逐艦が自爆ボートによるテロ攻撃で大破した『コール襲撃事件』により、『チープ・キル=安価な武器でも高価な武器に大打撃を与えうる』の脅威もクローズアップされた。
そうした中、アメリカ海軍では『NCW=ネットワークによってリアルタイムで上層部から最前線の1兵士に至るまで情勢と何をすべきか目的を共有し、現場レベルの権限を従来より強化することで迅速に任務目的を完遂する』コンセプトを立案すると共に低価格・多用途性を新型艦に求めた。
このニーズに基づいて開発されたのがLCSである。
LCSでは「フリーダム級」と「インディペンデンス級」という2種類のタイプが採用され、フリーダム級1番艦は2008年、インディペンデンス級は2010年に就役したが、これ以降米海軍を取り巻く環境は変化し、LCSのコストも高騰してしまった結果、2014年以降は建造計画を縮小された。
| 艦級名 | 船体 | 満載排水量 | 機関・速力 | 固定兵装 |
|---|---|---|---|---|
| フリーダム級(F) 単胴型船体 |
115m×17m | 3400t | CODAG方式(共通) 45㏏(F) 40㏏(I) |
57㎜両用砲×1(共通) 艦載ヘリ×2(共通) 21連装RAM×1(F) 11連装SeaRAM×1(I) |
| インディペンデンス級(I) トリマラン(三胴)型船体 |
127m×31m | 3200t弱 |
LCSは現在進行形で増大していた任務上のニーズに応えるため『ミッション・パッケージ』という方式を採用した。簡単にまとめると『任務に応じて装備を替える』ということである。
| 形態 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 固定装備・能力 | ボフォース社製57㎜砲とRAM艦対空ミサイルを装備。 速力は40㏏以上、ステルス性を持たせた艦形。 最大で有人艦載ヘリ2機を搭載。 インディペンデンス級では船体構造を活かして装輪式AFVを含む 各種車両・人員を輸送する高速輸送艦運用も可能[1]。 |
57㎜砲は厳密にはライセンス生産 高速力は密輸や潜入に使われる高速艇への対処。 艦載ヘリは無人ヘリにも切替え可能 |
| 対機雷戦 (MCM) |
艦載ヘリと無人潜水艇 を用いて掃海を行う。 |
艦載ヘリは浅深度、無人潜水艇は深深度に対応。 |
| 対水上戦 (SUW) |
対艦ミサイル仕様AGM-114[2]、近接戦用30㎜機関砲 2基も追加。 試験運用段階ではハープーンやNSMをインディペンデンスに艤装[3]。 |
当初は陸軍が開発した新型 多用途ミサイルを装備する 予定だったが中止されたため変更。 |
| 対潜水艦戦 (ASW) |
曳航ソナーによって目標を探知、 情報を元に艦載ヘリが対処 |
当初はMCM用の無人潜水艇を使う 予定だったが中止。 |
2014年、ヘーゲル国防長官は当初予定の各26隻ずつの建造を各16隻で打ち切り、多用途水上戦闘艦の整備に切り替える方針を明らかにした。建造ペースが変更されることで米海軍のSSC(小規模水上戦闘艦 Small Surface Combatant)戦力が低下することになるため、これを補う代替艦も計画され、LCS計画は、LCS32隻+新型SSC20隻に変化した。
ところが2015年末にカーター国防長官は海軍に対しLCS/SSCは合計40隻に削減するよう指示しており、2019年度からのLCS/SSCはニ艦種ではなく一艦種とすることも要求している。
その後、SSCはFFG-X(新型防空ミサイルフリゲート)に変更され、フリーダム級、インディペンデンス級ベースの設計案も候補に加わったが最終的に仏伊共同開発のFREEMフリゲートベースのイタリア・フィンカンティエリ社設計案が採用され、コンステレーション級フリゲートとなったもののこれはLCSよりも少ない2隻で打ち切られることが2025年秋に確定した。
そして2020年6月、アメリカ海軍は2021年3月末を持って初期建造分4隻をモスボールする事を発表した。
これは4隻が試験艦的性格の為、後期建造分からの追加装備改修の手間・予算が通常より掛かるための措置との事だったが以前から機関構造に欠陥が指摘されていた[4]フリーダム級8隻も運用停止が後に決定した。
一方で現役運用が行われるフリーダム級10隻はSUW、インディペンデンス級15隻はMCMに固定することが2024年に決定された。
なお、サウジアラビアがフリーダム級をベースにした汎用フリゲートの建造を進めており、2030年までには4隻が就役する予定になっている。
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最終更新:2025/12/25(木) 08:00
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