牧悟郎とは、2016年公開の映画『シン・ゴジラ』に登場する人物である。
本編では最後まで行方不明者扱いになっており、資料に入った写真のみでその存在が示されている。
なお、彼の近影写真は映画監督の故・岡本喜八(2005年没)のものを使用している(「特別出演」扱い)。
概要
元“城南大学”の統合生物学教授。出身は大戸島。
生物学者でありながら同時にエネルギー関係の研究も行っていたという変わり者だったとされている。
東京湾から上陸した巨大不明生物災害の直後、緊急来日した米国特使のカヨコ・アン・パタースンによりかつて“アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)”でその巨大不明生物の生態研究を担当し、そして事件の7日前にDOEから逃げるように日本に帰国してそのまま失踪したという彼の存在が巨災対の矢口蘭堂に伝えられ、事件の重要参考人として警視庁やフリージャーナリストを通じて彼の捜索および身元調査が行われた。
それと同時に今までDOEと彼が集めた巨大不明生物の資料は巨災対に提供されてその対策に充てられる事になるが、この時の資料に書かれていたのが“上記の言葉”と自身が名付けた巨大不明生物の名称「ゴジラ」である。
この項目は下記に本作のネタバレを含んでいます。 未鑑賞の方はご注意ください。(要スクロール) |
カヨコの説明によると理由は不明だが日本の学会を追われてアメリカに渡り、同国のDOEの下部機関に所属するようになるが、やがてDOEにて“大量の放射性廃棄物が投棄された海域に生息する新種の古代海洋生物”が発見され、彼の所属する機関がその生態調査を行う事となり、以後彼がその責任者としてこの生物の研究を進めていたという。
その生物が超高濃度の放射線環境下でも生き延び、さらには放射性物質をも喰らって己が糧としている事を突き止めた彼は生物を故郷の大戸島に伝わる神の化身「呉爾羅」の名から取って「ゴジラ(GODZILLA)」と命名、その後も長年に渡って研究を続けていた。しかし、最近になって自分が今まで集めて来たゴジラのデータの一部を暗号に書き換え、その暗号化した資料を置いて密かに日本へと帰国、一艘の小型船を借りて東京湾に出ると船と一部の遺留物を残して忽然と姿を消し、以降の消息は不明となる。
日本での身元調査ではかつて妻がいたようだが、その妻を放射線病で失っており、それが彼を原子力関係の研究に駆り立てた理由だと考えられている。自身は放射性物質および放射線の完全な無害化を目指していたようであるが、同時に原子力エネルギーを持て余していたずらに放射性物質を生み出し続けた人類、その中でも自分ら夫婦を見捨てた日本を憎悪していたのではないかとも言われている。
ゴジラのデータを暗号化したのもゴジラが秘めている既存生物の常識を超えた生態と新核元素が軍事利用される事を恐れたためであり、一方でゴジラがいつか巨大な怪物となって人間に牙を剥く事を予想、あるいは確信していたものとし、その上では彼があえてその資料と「君らも好きにしろ」という言葉を残したのは日本人を含めた人類全体がゴジラをどう扱うのかを試すためという意図があったからだと矢口は解釈している。
その暗号も「まるで曼荼羅」と言われるほど極めて難解なものだったが、遺留物の一つにあった折り紙の発想から暗号の解読が可能となった事で巨災対の進めていたゴジラ凍結封印計画“矢口プラン”の成功確度は飛躍的に高まり、それが最終的に“ヤシオリ作戦”へと繋がる事となる。
彼は何を好きにしたのか
ストーリーや登場人物は至ってシンプルな『シン・ゴジラ』の中において、牧悟郎はほぼ唯一とも言える謎に満ちたキャラクターである。特に彼の残した「私は好きにした、君らも好きにしろ」というメッセージの“私は好きにした”というフレーズが何を意味するのか、本作を見た人の間で様々な考察が為されている。
彼以前に本作におけるゴジラの生態や行動原理には不明な点が多く、これらの劇中で説明されていないゴジラの出現および変異の要因に関しては牧の関与があったのではないかと疑われているが、それも本編では結局具体的な関連性が明かされる事はなかった。
そのため映画を見た人達の間では彼が“ゴジラを日本近海(東京湾)に誘導した”とか“ゴジラ(の原種)に何らかの処置を施して巨大化するように促した”とか、さらにはゴジラが出現する直前に海の上で霞の如く消え去っていた事から“ゴジラに自分自身を取り込ませて人間のDNAを与え、それをトリガーにしてゴジラを進化させた”といった複数の説が囁かれている。
ゴジラの生態調査を進めていた生物学者という設定は初代の山根恭平、『ミレニアム』の篠田雄二、そして『2014』の芹沢猪四郎とほぼ同じであるが、ゴジラ(怪獣)の生態を自身の思想のため利用していた(という可能性がある)という部分は『メカ逆』の真船信三や『vsビオランテ』の白神源壱郎にも近いと言える。
あと、妻が死んだ事でマッドに走ったという点ではこの人っぽくもあるかもしれない。
余談
- 彼が乗っていたというプレジャーボート「GLORY MARU」に残されていた遺留物は折り鶴と海図、そして宮沢賢治の詩集「春と修羅」である。
- 「まきごろう」という名前のキャラクターは本作を含めて合計3回ゴジラシリーズに登場している。1作目は『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』のジャーナリスト・真城伍郎、2作目は1984年版『ゴジラ』の新聞記者・牧吾郎、そして本作の牧悟郎が3作目である。いずれも漢字表記が異なっている。
- 『シン・ゴジラ』の総監督である庵野秀明は自他認める岡本喜八の大ファンであり、多大な影響を受けた事が知られている。そのため岡本の写真を本作における重要な役柄に配したものと思われる。
- 過去の複数の庵野作品においてセリフ・演出方法・キャラ名・カット割のテンポなど岡本作品への多数のオマージュが指摘されており、一部は庵野本人も公言している。この『シン・ゴジラ』についても登場人物の役職紹介の演出など『日本のいちばん長い日』を連想させるという声が少なくない。
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