庵野秀明(あんの ひであき)とは、日本のアニメーション作家・特撮映画監督である。
概要
1960年5月22日生まれ、山口県出身。元は原画マンで、劇場版『風の谷のナウシカ』の巨神兵のシーンが有名。DAICON FILM(ガイナックスの項参照)のオープニングアニメを見せて宮崎駿に弟子入り、POPCHASER某ビデオ作品に参加したのがばれて破門。
ガイナックスの中心人物として活動し、1988年にOVA作品『トップをねらえ!』で初監督。1990年に『ふしぎの海のナディア』でも監督を務める。
アニメ『宇宙戦艦ヤマト』に影響を受けてアニメ関係の道に入ったという。
氏の作品で最も有名なのは社会現象を引き起こした『新世紀エヴァンゲリオン』であろう。氏の功績については既に語り尽くされているので多くは記さない。実は押井守と同じように実写映画も何本か撮っていたりしているが、2016年に入るまでそれらの実写作品はアニメに比べるとほとんど評価されていなかった。
妻は漫画家の安野モヨコである。当時、アンノ同士の結婚ということで話題となった。
2006年アニメ制作会社カラーを設立。→カラー (アニメ制作会社)
2007年、ガイナックスを退社。以後、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを制作。
2013年にはジブリ映画『風立ちぬ』に主演声優として参加している。
2021年『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』にてシリーズ完結。
2024年、10月6日にカラー (アニメ制作会社)が『宇宙戦艦ヤマト』の新作アニメを制作する権利を手に入れたことを発表。庵野がアニメの道に入るきっかけとなった作品に、自ら関わることとなった。詳細はまだ非公開である。2024年現在で進行中のリメイクヤマトシリーズ『3199』とは別系列のシリーズとなる。
画風
作画家として
爆発などのエフェクトやメカの描写が群を抜いており、特に彼の描く爆発は「庵野爆発」と言う通称が出来るほど爽快感のある爆発である。また爆発した後の破片が異常に細かく、キラキラ輝くのも特徴である。
特にオススメしたいのが『王立宇宙軍オネアミスの翼』のラストシーン。振動でロケット表面の氷が剥がれ落ちていくそのシーンは、破片一つ一つに番号を振った上で物に当たって更に割れるものまで全てセル9枚重ねを駆使して描き込むという超絶技巧としか言いようのないシーンである。たった3秒間で200枚を優に超える枚数のセルを使ったとか。ぜひYoutubeなどではなくDVDを借りてきて見て頂きたいものである。
本人は「自分のエフェクトは素直(アニメ的デフォルメが足りなさ)すぎてもう古い」と言っているようだが、正直新旧関係なく圧倒されるばかりである。
また軍艦ヲタである事からスタジオジブリ時代に『火垂るの墓』で劇中に登場する重巡洋艦“摩耶”の原画を担当した際にはそのディティールを非常に細かく描写して見せた(が、作画段階であっけなく塗り潰されてしまった)。
監督として
1988年には本格的に監督としてデビュー(以降は絵コンテ描きや脚本の執筆なども同時に行うようになる)。
SFロボット物から純粋なヒューマンドラマ物までマルチなジャンルの作品を手がけるが、一部の作品における作劇面での特徴としてその作品に登場する人物および世界観の描写が非常に独特なことが挙げられ、『ふしぎの海のナディア』のヒロインであるナディアのキャラ設定には当時の彼自身の女性観が強く表れているとされており、続く『新世紀エヴァンゲリオン』に至ってはキャラクターの極めて人間的かつ複雑な心理描写に加え、旧約聖書などの神話にも繋がる宗教的要素を詰め込んでより遠大な世界観を構築しており、そのためエヴァ放送中~放送後は世界観およびキャラクターの裏設定を読み解こうという考察ネタが大流行した。
反面、監督として作品制作を全面的に主導するようになってからというもの、物作りを行っている時期は非常にナイーブになる事が多いと言われており、『ナディア』および『エヴァ』を作っている時は何度も精神が不安定になりかけたとし、2013年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の完成後にはしばらく鬱病同然の状態に陥っていたとの事。
また、自身が監督、演出するSF系アニメにおいては過去のアニメ作品のオマージュあるいはパロディを仕込む事が多いのも特徴[1]。
一方、アニメ監督のイメージの強い氏であるが、実は特撮作品にも強い関心を持っている事で知られている。
その中でも円谷プロのウルトラシリーズ[2]のファンと公言しており、大学生時代にはDAICONFILMにて岡田斗司夫らと共に『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』を制作した(その時ウルトラマンを演じたのが自身である)ほどで、後のエヴァシリーズの中にもウルトラシリーズのイメージが数多くオマージュとして散りばめられている。
その縁か2012年に開催された特撮博物館では館長を務め、さらにそこでかつて『風の谷のナウシカ』で原画制作に関わった巨神兵を題材にした完全ミニチュアセット特撮の短編映像作品『巨神兵東京に現わる』を平成ガメラシリーズの特撮監督として知られる樋口真嗣と共に制作し、放映している。
2015年~2016年には約10年ぶりに復活した“ゴジラシリーズ”第29作目に当たる映画『シン・ゴジラ』の総監督を務めている。本格的な特撮作品としては2004年の実写版『キューティーハニー』以来の参加であったが[3]2016年に公開された本作においては自身の特撮への情熱が惜しみなく注がれたケレン味溢れる作りで大きな話題を呼び、実写作品の実績にも箔を付けて見せた。
そして遂には2022年5月公開の劇場版作品『シン・ウルトラマン』の企画・脚本家として公式のウルトラシリーズ作品の制作に関与する事になった。
2023年3月公開の『シン・仮面ライダー』の監督・脚本も務めることとなり、特撮監督としてのキャリアも順調に積み重ねている。
他にも1960年台を代表する映画監督の岡本喜八に強く影響を受けているとされ、彼が作品内でよく使うキャラクターや状況解説のテロップ演出も元々は岡本監督の映画で見られた手法だったという。
2022年4月の春の叙勲にて、芸術文化の功績が認められ、紫綬褒章を受章した。
主な参加作品
- DAICON IV OPENING ANIMATION(作画監督、原画)
- 愛國戦隊大日本(デザイン/光学合成)
- 帰ってきたウルトラマン(ゼネプロ版/ウルトラマン役)
- 超時空要塞マクロス(原画)
- 風の谷のナウシカ(原画)
- 王立宇宙軍 オネアミスの翼(作画監督)
- ドラゴンクエスト ファンタジア・ビデオ(竜王・スーツアクター)
- トップをねらえ!(監督)
- ふしぎの海のナディア(監督)
- 新世紀エヴァンゲリオン(監督)
- 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(総監督/脚本)
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版(総監督/脚本)
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(総監督/脚本)
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(総監督/脚本)
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(総監督/脚本)
- シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(総監督/脚本)
- 彼氏彼女の事情(監督)
- ラブ&ポップ(監督)
- おるちゅばんエビちゅ(企画)
- キューティーハニー(監督)
- 巨神兵東京に現わる(企画)
- 風立ちぬ(声優)
- シン・ゴジラ(総監督/脚本)
- 龍の歯医者(音響)
- シン・ウルトラマン(企画/脚本)
- シン・仮面ライダー(脚本/監督)
モデルとなった役を演じた俳優・声優
豆知識
- 「Hideakianno」という名前の小惑星が存在する。これは発見者が庵野の高校時代の友人であり、庵野に名前の使用許可を取った上で命名されたものである。また、妻の「安野モヨコ」や師匠格の「宮崎駿」も惑星の名前に使用されている。
- 自身は菜食主義(ベジタリアン)傾向であり、肉類の食材はほとんど食べる事ができない。[4]
- 『アオイホノオ』では大学当時の庵野は全く女性と交流のない典型的なオタク男として描かれているが、実際の大学時代ではかなり女の子にモテモテだったと言われている。
関連動画
関連項目
脚注
- *例としては『ふしぎの海のナディア』ではN-ノーチラス号の発進シークエンスが宇宙戦艦ヤマトのそれと同一だったり、『トップをねらえ!』のガンバスターには過去の様々なアニメのロボット要素が組み込まれているなど。
- *特に1971年放送の『帰ってきたウルトラマン』
- *ただしハニーは漫画の実写化なため、純粋な特撮シリーズ作品の製作は事実上初。
- *ポテトチップスなどスナック菓子に味付けされたものとかは別。
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