Lúnasa(Lunasa、ルナサ)とは、アイルランド出身でアイルランドの伝統音楽を主に演奏しているバンドである。
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概要
アイルランド音楽界では元々実績のあるメンバーによるバンドで、メディアから“アイリッシュスーパーグループ”などと呼ばれ、トラッド界からは常に注目され続けてきたバンドである。
パーカッションを排した(※ケヴィンがバウロンを叩くこともあるが)ベースとギターによるリズムセクションにフィドル、フルート、パイプが乗っかる構成を基本とし、ボシーバンド直系と言われるパワフルで疾走感のある演奏を持ち味とする。
97年のデビュー以来、世界中で数々のライブツアーを重ね、日本にも4度の来日を果たし、世界中はもとより、日本でもアイルランド音楽の代表的なバンドとしてチーフタンズやアルタン等とならんで、アイルランド音楽ファンの間ではよく知られているバンドの一つである。
バンド名の由来
アイルランド語で収穫祭、もしくは八月を意味するルーナサー(Lughnasadh、Lúnasa)に由来する。
ケルトの暦では一年をクオーターデイ(春分、夏至、秋分、冬至にあたる)によって4季に分け、さらにその中間日にクロスクオーターデイ(立春、立夏、立秋、立冬にあたる)を設ける。
クロスクオーターデイにはケルトの主要な4つの祭が催され、それぞれ、イモルグ(Imbolc、2月2日)、ベルテイン(Beltaine、5月1日)、ルーナサー(Lughnasadh、Lúnasa、8月1日)、サウィン(Samhain、11月1日)と呼ばれる。ルーナサーはケルト神話における太陽(光)の神であるルー(Lugh、Lug、Lú)をまつる収穫祭である。
ちなみにクロスクオーターデイはペイガニズム(多神教)復興運動の一つであるウィッカ(魔女宗)でも大サバトと呼ばれ重要視されている。また、サウィンはアングロ・サクソン系諸国におけるハロウィンの元ネタである。
来歴
アイルランド、メイヨー州出身のフィドル奏者であるショーン・スミスが中心となり、フルート奏者のケヴィン・クロフォード、ベースのトレヴァー・ハッチンソン、ギターのドナ・ヘネシーと共にオーストラリアツアーを行ったのがバンドの前身となる。その後、ケヴィンが抜け、トリオ編成となってスカンジナビアツアーを行い、このときの3人にフルート奏者のマイケル・マックゴールドリック、パイプのジョン・マクシェリーの2人が加わりクインテット編成となった。
初めは"Sean Smyth trio featuring John McSherry and Micheal McGoldrick"という名前で活動していたが、後にルナサと改称し、アイルランド各地でライブを重ねる。97年、このときのライブを録音したものに数曲のスタジオ録音を加えた1stアルバム"Lúnasa"を自身のレーベルから発表。
ジョンとマイケルはこの後、自身の活動により脱退、代わって結成当初のメンバーであったケヴィンが加入し、99年、Green Linnet Recordsから2ndアルバム"Otherworld"を発表する。これを機に初の全米ツアーを敢行した後、パイプスのキリアン・ヴァレリーを新たに迎え、2000年には初の来日を果たす。
Green Linnet Recordsからはこの後2枚のアルバムを発表して契約を終了し、5thアルバムの"The Kinnitty Sessions"からはCompass RecordsからCDを出している。
The Kinnitty Sessions発表後、結成当初からのメンバーであるギターのドナ・ヘネシーがバンドの多忙さと恋人でもあるポーリン・スキャンロンとの活動を理由にバンドを脱退。正式なメンバーとしてはギタリスト不在のまま6thアルバム"Sé"を発表するが、このアルバムの録音にも参加していたポール・ミーハンがその後、間もなくして正式にバンドに加入する。
デビューから10年を越えたバンドは2008年、これまでの曲のリミックスと代表曲2曲の新録バージョンを収録したベストアルバム"The Story So Far..."を発表した。
メンバー
現メンバー
- ショーン・スミス (Seán Smyth) - フィドル、ホイッスル
- バンド結成当初のリーダー的存在。メイヨー州出身でゴールウェイ在住。フィドル奏者でありながらホイッスルの腕も確かであり、フィドル、ホイッスル両方で全アイルランドチャンピオンを獲得している。93年発表のソロ作"The Blue Fiddle"が高い評価を受け、ドーナルラニー・クールフィンやアラン・ケリーの録音にも参加した。元医者。ちなみに妹のブリーダ・スミス、コーラ・スミスも共にフィドル奏者である。
- ケヴィン・クロフォード (Kevin Crawford) - フルート、ホイッスル、バウロン
- イングランドはバーミンガムの生まれだが、両親はクレア州出身のアイルランド人であり、自身もクレア州在住である。地元のバンドMoving Cloudのメンバーとして活動した他、現在までにソロアルバム3枚を発表している。また、地元ラジオ番組のDJの経験もあり、バンドのユーモア担当としてライブでのMCは主に彼の仕事である。
- トレヴァー・ハッチンソン (Trevor Hutchinson) - ダブルベース
- 北アイルランド、クックスタウン出身でダブリン在住。86年から91年まで、マイク・スコット率いるスコットランドの人気フォークロックバンドThe Waterboysのメンバーとして活躍。その後シャロン・シャノン・バンドのメンバーとなり97年まで在籍。その傍ら、オアシスやヴァン・モリスンのサポートを務めたり、モイア・ブレナックやアイリーン・アイヴァースの録音にも参加している。また、ダブリンの自宅にスタジオを所有しており、ルナサのいくつかの曲もここで録音されている。6thアルバム"Sé"からProduced by Trevor Hutchinsonのクレジットが表記されるようになった。2008年に発表されたベストアルバムは全曲彼によるミックスが施されている。さらに若手アイリッシュバンド、グラーダのプロデュースも手がけている。
- キリアン・ヴァレリー (Cillian Vallely) - イーリアンパイプス、ホイッスル
- 北アイルランド、アーマー州出身でニューヨーク在住。音楽一家の生まれで、両親はアーマー州での伝統音楽の振興を目指すArmagh Pipers Clubの創設者であり、特に母方は5代にわたるフィドル奏者だという。Nomos、Builleの中心メンバーであり、カラン・ケイシーの夫でもあるコンサーティーナ奏者のニール・ヴァレリーや、North Creggのピアニストでフィドル奏者のキーヴィン・ヴァレリーを兄に持つ。
- ポール・ミーハン (Paul Meehan) - ギター、バンジョー
- マンチェスター出身。カラン・ケイシー・バンドやマイケル・マックゴールドリック・トリオ、North Cregg、Builleのメンバーとして活躍。ルナサにはドナ・ヘネシーに代わるギタリストとして6thアルバム"Sé"の録音から参加している。ギタリストであると同時にバンジョー奏者でもある。
過去のメンバー
- ドナ・ヘネシー (Donogh Hennesy) - ギター
- ダブリン出身。17歳のときにディングルに移り住み、そこで伝統音楽に接するようになる。その後、さらにゴールウェイに移り住んだときにアコーディオン奏者のシャロン・シャノンに出会い、彼女のバンドに参加。ここでベースのトレヴァーと出会ったのをきっかけにルナサに巻き込まれる。以来、リズムセクションの要としてバンドを支えてきたが、5thアルバム発表後にバンドの多忙さと恋人でもあるポーリン・スキャンロンとのプロジェクト"Deora De"のためにバンドを脱退する。
- マイケル・マックゴールドリック (Michael McGoldrick) - イーリアンパイプス、フルート、ホイッスル
- マンチェスター出身。ケルティックロックバンド、Toss The Feathersのメンバーとして活躍し、95年にはブライアン・フィネガンやセーラ・アレン、エド・ボイドらと共にFlookを結成。ルナサを抜けた後はスコットランドのカパーケリーの正式メンバーに加入、アフロ・ケルト・サウンド・システム、ケイト・ラズビー、カラン・ケイシー、シャロン・シャノン等の録音に参加しつつ自身のマイケル・マックゴールドリック・バンドでの活動等、幅広く手がけている。94にはBBC Young Tradition Award、01年にはBBC Radio2 Folk Awards Instrumentalist of the Year、09年にはIMA Best Instrumentalistを受賞している。
- ジョン・マクシェリー (John McSherry) - イーリアンパイプス
- 北アイルランド、ベルファスト出身。リアム・オフリン、デイヴィ・スピラーンの後を継ぐパイパーと目され、ドーナル・ラニー・クールフィンの主要メンバーとして活躍。マクシェリー兄弟によるTamalinでの活動の他、ダン・ア・ブラースやシークレット・ガーデン、クラナド、コアーズ等とも共演している。現在は自身のバンドAt First Lightにて活動中。
ディスコグラフィー
オリジナル・アルバム
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1st - Lúnasa
ショーン、トレヴァー、ドナ、マイケル、ジョンのクインテット編成で、アイルランド各地をまわった時のライブ録音とスタジオ録音の楽曲を収録したデビューアルバム。97年に自身のレーベルから発表された。後にCompass Recordsから再販されたときに当時の音源がボーナストラックとして1曲追加されている。6曲目Meitheamh(Ash Plant)はライブの〆に演奏される定番の曲となっている。各トラックのタイトルにはアイルランド語(ゲール語)で月(暦)を意味する言葉が使われている。バンド名でアルバム名でもあるLúnasaは八月を意味する。
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2nd - Otherworld
ケヴィンが新たに加わって発表された2作目。マイケルとジョンはバンドを脱退したが、ゲストミュージシャンとして今作でも録音に参加している。前作では1曲だけだったメンバー作曲による曲も積極的に演奏されるようになった。今作からGreen Linnet Recordsとの契約を結んでいる。
- Goodbye Miss Goodavich (Donogh Hennessy)
/ Rosie's Reel (Kevin Crawford) - The Floating Crowbar (trad)
/ McGlinchey's (Brendan McGlinchey)
/ The Almost Reel (Chris Armstrong) - The Butlers of Glen Avenue (Tony Sullivan, Halshaw Music)
/ Sliabh Russell (trad)
/ Cathal McConnell's (trad) - January Snows (trad)
/ Laura Lynn Cunningham (Phil Cunningham, Phil Cunningham MCPS) - The Miller of Drohan (trad)
- Dr.Gilbert (trad)
/ Devils of Dublin (trad)
/ Black Pat's (Tommy Peoples) - Autumn Child (Brendan O'Regan)
/ Heaton Chapel (Kevin Crawford) - Stolen Apples (Malcolm Dalglish, Ooolitic Music/BMI)
- Taylor Bar, 4am (Donogh Hennessy)
/ Ceol na Mara (Mike McGoldrick) - Lafferty's (trad)
/ Crock of Gold (trad)
/ Lady Birr (trad)
/ Abbey Reel (trad) - O'Carolan's Welcome (trad)
/ Rolling in the Barrel (trad)
- Goodbye Miss Goodavich (Donogh Hennessy)
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3rd - The Merry Sisters Of Fate
パイプスのキリアンを迎え、再びクインテットとなって発表された3rdは全曲トレヴァーの自宅スタジオでレコーディングされた。代表曲である"Morning Nightcap"や、ベストには収録されなかったがファンの人気の高い裏の代表曲とでもいうべき"Donogh and Mike's"も収録。American Association of Independent Musicによる、British/Celtic Album of the Year受賞作。
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4th - Redwood
Green Linnet Recordsからの最後のアルバム。アメリカツアー中、サンフランシスコのスタジオで10日間で制作された。ショーン作曲のチューンが初めて採用されている。本作にはミュージックプラントによる日本盤、グリーンリネット盤、公式サイトで販売しているものの3バージョンが存在し、左にも表示されているグリーンリネット盤には間違ったアートワークが使われてしまっている。タイトルのRedwoodはセイコイア杉の別名である。
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5th - The Kinnitty Sessions
Compass Records移籍第1作目はアイルランド中部に位置するキニティー城にて行われたライブを一発録音。オリジナルアルバムでありながら、実質的にはライブアルバムである。しかし客の歓声や拍手をミックスで完全に排除していることや、演奏自体のクオリティの高さから一聴しただけではライブ音源の印象はまったく無い。ドナが参加した最後のアルバムでもある。
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6th - Sé
アイルランド語(ゲール語)で「6」を意味するタイトルの6作目。結成当初からのメンバーであったドナが抜け、本作のギターにはポール・ミーハンとティム・エディーの2名が録音に参加している。最終的にはポールがルナサの正ギタリストとなった。キリアン作曲のチューンが初めて採用されている。今作ではプロデューサーのクレジットがこれまでは"Lúnasa"あるいはメンバー全員の名前が表記されていたのに対し、トレヴァーひとりのクレジットとなっている。
ベスト・アルバム
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The Story So Far...
これまでの6枚のアルバムから2~3曲ずつ収録したベストアルバム。全曲トレヴァーによるリミックスが施されており、"Morning Nightcap"と"The Last Pint"の2曲については新たなレコーディングがなされている。ファンの人気の高い"Donogh and Mike's"やライブでの〆の定番"Ash Plant"は何故か収録されていない。
- Morning Nightcap - from The Merry Sisters of Fate (新録)
- Eanáir - from Lúnasa
- The Miller of Drohan - from Otherworld
- Leckan Mór - from Sé
- Killarney Boys Of Pleasure - from The Merry Sisters of Fate
- The Floating Crowbar - from Otherworld
- Black River - from Sé
- Fest Noz - from Redwood
- Feabhra - from Lúnasa
- Punch - from The Kinnitty Sessions
- Casu - from The Merry Sisters of Fate
- The Last Pint - from Lúnasa (新録)
- Cregg's Pipes - from Redwood
- The Dimmers - from The Kinnitty Sessions
- The Dingle Berries - from Sé
- O'Carolan's Welcome - from Otherworld
企画もの
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The Leitrim Equation
アイルランド、リートリム州の村おこし的企画の中で制作された2枚組みCD。地元のミュージシャンをフィーチャーしたもので、ルナサの従来の作品とは若干趣の異なる内容となっているので購入の際は注意されたし。
Disc 1
- John McKenna's Jig
/ The Cloone Reel
/ The Hollybush - The Concert Reel
/ Joe Burke's Favourite - My Own Leitrim Home
- Master Shanley's Hornpipe
- Couthouse Reel
/ Dave Donohoe's - O'Connell's Reel
/ The Edenderry
/ Maggie on the Shore - The Battering Ram
/ The Leitrim Quickstep - THe Himalayan Hornpipe
- Maud Millar
/ Palmer's Gate
/ Lord McDonald - Andrew Davey's
/ Moloney's Wife - Handsome Sally
/ Sunny Banks
/ Reel of Rio
Disc 2
- The Lahard Chase
/ In Walked Dalai
/ Hamy's Reel - The Stig Jig
- Generous Lover
- The Leitrim Lilter
/ The Twelve Pins - Caislean an Oir
/ Pol Ha'penny - Road to Garrison
/ Kilty Town - The Mighty Ros
/ Susan Sweeney's Jig - Maguire's Welcome to Fermanagh
- Sean Ryan's
/ Reel of Rio - Trip to Athlone
/ Humours of Lisheen
/ Snug in a Blanket
- John McKenna's Jig
メンバーのソロ作等
- Sean Smyth
- Kevin Crawford
- Michael McGoldrick
- Michael McGoldrick and John McSherry
- Cillian Vallely and Niall Vallely
- Kevin Crawford and Cillian Vallely
関連動画
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関連項目
外部リンク
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