概要
フェニキア文字をベースに、子音文字しかないフェニキア文字の一部を母音に転用して成立した文字である。アルファベットの文字体系であり、大文字と小文字が存在する。元々は大文字のみで、壺などに刻む文字だったため筆記体もなかった。
現在、ギリシア文字で表記する言語はギリシア語のみであるが、かつてはアルバニア語でも使用されていた。それ以外の国でも、数学における変数・定数等を表すのに使用される。また、ギリシア文字をベースにして作られた文字として、キリル文字、ゴート文字、コプト文字がある。
日本でも数学の他、物質名や固有名詞、ソフトウェアやウェブサイトのバージョン等でギリシア文字が使われる。また1978年に制定された文字コード (JIS C 6226) にギリシア文字が含まれたため、古くからコンピューター上の日本語文書の中で使用する事が可能である。インターネット上では、顔文字の一部としてギリシア文字が使用される事がある (例: 「(´・ω・`)」、「Σ(゚Д゚)」、「ξ゚⊿゚)ξ」等)。
ただし上述したとおりJIS漢字コードのおかげで古くから日本のインターネットで用いることができた反面、そのコードが全角であり、さらにその後Unicodeによって東アジアではギリシア文字は文脈によって全角と半角を使い分けるという扱いとなったため、現在でもMS UI Gothicなど日本語フォントにおいては全角のままとなっている場合が多い。さらにIEやSafariなどではフォントが和欧それぞれで設定されているために起きえないが、フォントが一つしか選べないためデフォルトではギリシア文字が全角でしか表示されないことが起きるブラウザがFirefoxやChromeなどまだ存在する。
日本語版Wikipediaで見られるようにHTMLやCSSでどんな条件でも半角になるように設定することもできるが、そのようなことをしていない、またはこのニコニコ大百科のようにlang属性が許可されていないためにできないサイトも多いので、もしギリシア文字が全角で表示される方は、たとえばWindowsならギリシア文字が半角で表示されるメイリオあたりか、もういっそ欧文フォントにブラウザのフォント設定を変えるか、それができないのであればブラウザを変えるかをして対応してほしい(もっともギリシア文字は全角で使うこともままあるのだが)。
ギリシア文字一覧
文字 | 音価 | ラテン転写 | 名称 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
大文字 | 小文字 | 古典 | 中世 | 現代 | 古典 | 現代 | 古典末期 | 現代 | 慣用 | 英字表記 |
Α | α | /a/ /aː/ |
/a/ | /a/ | A a Ā ā |
A a | アルパ | アルファ | アルファ | Alpha |
Β | β | /b/ | /v/ | B b | V v | ベータ | ヴィタ | ベータ | Beta | |
Γ | γ | /g/ | /ɣ/ /j/ |
G g | G g | ガンマ | ガマ | ガンマ | Gamma | |
Δ | δ | /d/ | /ð/ | D d | Th th | デルタ | ゼルタ | デルタ | Delta | |
Ε | ε | /e/ | /e/ | E e | E e | エ・プシーロン | エ・プシロン | エプシロン イプシロン |
Epsilon | |
Ζ | ζ | /zd/ /dz/ |
/z/ | Z z | Z z | ゼータ | ジタ | ゼータ | Zeta | |
Η | η | /eː/ | /i/ | Ē ē | I i | エータ | イタ | イータ | Eta | |
Θ | θ | /tʰ/ | /θ/ | Th th | Th th | テータ | シタ | シータ | Theta | |
Ι | ι | /i/ /iː/ |
/i/ | I i Ī ī |
I i | イオータ | ヨタ | イオタ | Iota | |
Κ | κ | /k/ | /k/ | K k | K k | カッパ | カパ | カッパ | Kappa | |
Λ | λ | /l/ | /l/ | L l | L i | ラムダ ラムブダ |
ラムダ ラムザ |
ラムダ | Lambda | |
Μ | μ | /m/ | /m/ | M m | M m | ミュー | ミ | ミュー | Mu | |
Ν | ν | /n/ | /n/ | N n | N n | ニュー | ニ | ニュー | Nu | |
Ξ | ξ | /ks/ | /ks/ | Ks ks | Ks ks X x |
クシー | クシ | クサイ グザイ |
Xi | |
Ο | ο | /o/ | /o/ | O o | O o | オ・ミクロン | オ・ミクロン | オミクロン | Omicron | |
Π | π | /p/ | /p/ | P p | P p | ピー | ピ | パイ | Pi | |
Ρ | ρ | /r/ | /r/ | Rh rh R r |
Rh rh R r |
ロー | ロ | ロー | Rho | |
Σ | σ ς | /s/ /z/ |
/s/ /z/ |
S s | S s | シーグマ | シグマ | シグマ | Sigma | |
Τ | τ | /t/ | /t/ | T t | T t | タウ | タフ | タウ | Tau | |
Υ | υ | /y/ /yː/ |
/i/ | Y y U u Ū ū |
I i | ユ・プシーロン | イ・プシロン | ユプシロン ウプシロン イプシロン |
Upsilon | |
Φ | φ | /pʰ/ | /Φ/ | /f/ | Ph ph | F f | ピー | フィ | ファイ フィー |
Phi |
Χ | χ | /kʰ/ | /x/ /ç/ |
Kh kh Ch ch |
Ch ch | キー | ヒ | カイ | Chi | |
Ψ | ψ | /ps/ | /ps/ | Ps ps | Ps ps | プシー | プシ | プサイ | Psi | |
Ω | ω | /ɔː/ | /o/ | Ō ō | O o | オー・メガ | オ・メガ | オメガ | Omega |
注
- Σには小文字が2種類あり、語末では ς、それ以外の場所では σ が使用される。
- 2文字で1つの音を表す場合もある。例えば ου=/u/、および語頭における μπ=/b/、ντ=/d/、γκ=/ɡ/ 等。
- 名称の太字の部分は、MS-IMEでギリシア文字に変換可能な表記について列挙している (Microsoft(R) IME (10.0.6000.0) で確認)。
- プシーロン(プシロン)は単なる、ミクロンは小さい、メガは大きいの意味で、古典期末期に付加された。エ・プシーロンはエータとの区別のため、ユ・プシーロンは ου が /u/ を表すようになったことからそれとの区別のため、オ・ミクロンとオー・メガはお互いとの区別のためである。
- 古典期中に消滅した文字も多数ある。
- 中世には多数のアクセント記号をつけて表記されていたが、1980年以降大幅に簡略化されている。これは古典ギリシア語が日本語と同じ高低アクセントだったのに対し、現代ギリシア語は英語と同じ強勢アクセントに変わっているのも影響している。
関連動画
アーケードゲーム「スターフォース」は、各エリアの名前がギリシア文字になっている。
関連項目
外部リンク
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