ギリシア語(ελληνικά)とは、ギリシア共和国およびキプロス共和国の公用語またはその原型に当たる言語である。「ギリシャ語」とも表記される。
この記事では主に現代ギリシア語について説明する(古典ギリシア語に関しては古典ギリシア語のページで行う)。
概要
ギリシア語は、インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)のギリシア語派に属する言語である。ギリシャ共和国およびキプロス共和国の公用語であるほか、これらの国が加盟している欧州連合(EU)でも公用語の一つとなっている。母語とする人の数は約1,200万人。
また、ギリシア語は時代とともに形が大きく変化してきた。細かく分けるときりがないが、とりあえず古代ギリシア語(アルカイック期ギリシア語と古典ギリシア語)、中世ギリシア語(ビザンツ帝国の言語)および現代ギリシア語に区別することができる。
文法であるが、特に古代ギリシア語は「屈折」が豊かな言語として知られている。屈折とは、名詞や形容詞が性・数・格に応じて曲用したり、動詞が法・時制・態・主義(人称・数)に応じて活用したりすることを指すが、古代ギリシア語はこれがとても細かいので、勉強を始める際には覚悟が必要である。現代ギリシア語は、古代のそれに比べれば簡素化されているが、それでも英語などより複雑なので、それなりの覚悟を持って挑戦したほうが良いだろう。
アルファベット
ギリシア文字が使用される。詳しくは「ギリシア文字」のページを参照されたい。
なお、余談ながら「アルファベット」という言葉自体、ギリシア文字の最初の2文字であるα(アルファ)とβ(ベータ)に由来している。
なお詳しくはギリシア文字の記事にあるが、もしあなたのブラウザで表示が汚くなってしまっている場合はフォントが原因である。
簡単な挨拶など
ここで紹介するのは現代ギリシア語である。
- Kαλημέρα σας! (カリメーラ・サス) おはようございます
- Kαλησπέρα σας! (カリスペーラ・サス) こんにちは
- Kαληνύχτα σας! (カリニクタ・サス) こんばんは、おやすみなさい
- Σας ευχαριστώ! (サース・エフカリストー) ありがとう
- Αντίο! (アディーオ) さようなら
発音で気を付けること
といった具合にまずほぼそのまま読めばよかっただけの古典ギリシア語に比べて、現代ギリシア語ではだいぶ母音が少なくなって文字と対応しなくなっている。
以下の3つは υ の発音が無声子音の前で無声音 [f] に、有声子音・母音の前で有声音 [v] になる。
- γγ - [ŋ], [i], [e], [ɛ] の前なら口蓋化する。
- γκ - 語頭で [g]、それ以外で [ŋg]。[i], [e], [ɛ] の前なら口蓋化する。また、外来語では [g], [ŋk] の音も表される。
- μπ - 語頭で [b]、それ以外で [mb](外来語では [b], [mp] の音も表される)。
- ντ - 語頭で [d]、それ以外で [nd](外来語では [d], [nt] の音も表される)。
といった具合にほとんどそのまま読めばよかっただけだったのが歴史を経て様変わりしてしまっているので気を付けよう。
文法
全体的に古典ギリシア語に比べてだいぶ簡略化されている。がやっぱり古典ギリシア語で躓きやすいポイントは一部残っているのでそこに注意しよう。
名詞
男性名詞は-ας,-ης,-ος、女性名詞は-α-η-ος、中性名詞は-ο,-ι,-μα,-οςとなる。
格は主格、属格、対格、呼格の4つに減っている。
男性名詞 | -ας | -ης | -ος |
---|---|---|---|
単数主格 | ο πατερας | καθηγητης | ανθρωπος |
単数属格 | του πατερα | καθηγητη | ανθρωπου |
単数対格 | τον πατερα | καθηγητη | ανθρωπο |
単数呼格 | πατερα | καθηγητα | ανθρωπε |
複数主格 | οι πατερες | καθηγητες | ανθρωποι |
複数属格 | των πατερων | καθηγητων | ανθρωπων |
複数対格 | τουσ πατερες | καθηγητες | ανθρωπουσ |
複数呼格 | πατερες | καθηγητες | ανθρωποι |
女性名詞 | -α | -η | -ος |
---|---|---|---|
単数主格 | η μητερα | γιορτη | οδος |
単数属格 | τησ μητερας | γιορτης | οδου |
単数対格 | την μητερα | γιορτη | οδο |
単数呼格 | μητερα | γιορτη | οδε |
複数主格 | οι μητερες | γιορτες | οδι |
複数属格 | των μητερων | γιορτων | οδων |
複数対格 | τισ μητερες | γιορτες | οδους |
複数呼格 | μητερες | γιορτες | οδοι |
中性名詞 | -ο | -ι | -μα | -ος |
---|---|---|---|---|
単数主格 | το βιβλιο | ψαρι | γραμμα | πελαγπς |
単数属格 | του βιβλιου | ψαριου | γραμματος | περαγους |
単数対格 | το βιβλιο | ψαρι | γραμμα | πελαγος |
単数呼格 | βιβλιο | ψαρι | γραμμα | πελαγος |
複数主格 | τα βιβλια | ψαρια | γραμματα | πελαγη |
複数属格 | των βιβλιων | ψαριων | γραμματων | πελαγων |
複数対格 | τα βιβλια | ψαρια | γραμματα | πελαγη |
複数呼格 | βιβλια | ψαρια | γραμματα | πελαγη |
動詞
第1変化動詞と最後のωにアクセントがある第2変化動詞の二つが存在する。さらに第2変化動詞は歴史的にもともと、-αωだったものと-εωだったもので微妙に異なる。現在形を見てみよう。
第1変化動詞 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | εχω | εχουμε |
2人称 | εχεις | εχετε |
3人称 | εχει | εχουν |
第2変化動詞-αω | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | αγαπω | αγαπουμε |
2人称 | αγαπας | αγαπατε |
3人称 | αγαπα | αγαπουν |
第2変化動詞-εω | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | αποτελω | αποτελοθμε |
2人称 | αποτελεις | αποτελειτε |
3人称 | αποτελει | αποτελουν |
ギリシア語は現在形以外にはアオリスト語幹と現在語幹の二つの語幹が区別され、前者は瞬間的なものを、後者は継続的なものを表す。アオリスト語幹の作り方は様々なのでなかなか覚えるのがややこしい。
未来形は動詞の前にθαをつけるだけでいいが、過去形は-α,-ες,-ε,-αμε,-ατε,-ανと語尾まで変わることになる。
さらに能動相、中動相、受動相の区別は残っており、-ομαιを現在語幹につけるだけの第1変化動詞はともかく、-ιεμαιと-ουμαιのどちらか決まっている第2変化動詞はちょっとややこしいかもしれない。
なお接続法も残っているが、これはをναを動詞の前におけばよいだけになっているので、だいぶ楽である。
完了形はεχωに完了基本形を加えるか、中受動相を用いるかの二通りがある。
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関連項目
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