グランツールとは、自転車ロードレースの内、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの3つのステージレースの総称である。
概要
UCI競技規則によるグランツールの概要の中で特徴的な物として、下記のものがある。
ジロ・デ・イタリア
毎年5月(~6月)に開催される。UCIワールドツアーではカテゴリーBに位置づけられる。
第1回開催は1909年。主催はRCSスポルト社。
総合優勝はマリア・ローザ、ポイント賞はマリア・ロッソ・パッショーネ、山岳賞はマリア・アッズーラ、ヤングライダー賞はマリア・ビアンカをかけて争う。
なお、最下位の証としてヌメーロ・ネロという黒ゼッケンがあるが、過去にはマリア・ネラという黒ジャージであった。
コースセッティングは、勾配の厳しい坂を登る山岳ステージが多いため、上りを得意とするクライマーが活躍する機会が多い。たまに未舗装区間があるがそれもまたジロ・デ・イタリア。
ツール・ド・フランス
毎年(6月~)7月に開催される。UCIワールドツアーでは唯一のカテゴリーAに位置づけられる。
第1回開催は1903年。主催はアモリ・スポル・オルガニザシオン社。
総合優勝はマイヨ・ジョーヌ、ポイント賞はマイヨ・ヴェール、山岳賞はマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ、ヤングライダー賞はマイヨ・ブランをかけて争う。
前ステージを一番にぎあわせた選手には敢闘賞としてドサール・ルージュというゼッケンが与えられる。最下位のランタン・ルージュと言う称号がある。
なお、ツール・ド・フランスでは3連続ランタン・ルージュをとった選手がいる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ
毎年(8月~)9月に開催される。1994年までは4月~5月に開催された。UCIワールドツアーではカテゴリーBに位置づけられる。
第1回は1935年。主催はウニプブリク社。
総合優勝はマイヨ・ロホ、ポイント賞はプントス、山岳賞はモンターニャ、ヤングライダー賞はマイヨ・ブランコをかけて争う。2018年まではヤングライダー賞の代わりに複合賞コンビナーダが存在した。
グランツールに関する記録
全グランツール完全制覇者
3つのグランツールは時期が連続するため、全てのグランツールを同一年に完走することは極めてまれである。[1]総合優勝を狙えるレベルの選手に限って言えばほぼ絶無といってよく、3グランツール全てで総合1桁順位だったのは1955年のラファエル・ジェミニアーニ(4-6-3)、1957年のガストネ・ネンチーニ(1-6-9)以外70年近く出ていない。ネンチーニのようにグランツールいずれかを総合優勝した上で全て完走する選手は、2023年にはセップ・クス(14-12-1)まで66年出なかった。
従って、全グランツールを同一年に全て総合優勝した選手はいない。今後も現れることはないだろう[2]。
しかし、「同一年で」ではなく「生涯で」に広げれば例はある。それでも7人しかいないが。
| 達成年 | 達成者 | 初制覇(ジロ-ツール-ブエルタ) |
|---|---|---|
| 1963年 | ジャック・アンクティル
|
1960-1957-1963 |
| 1968年 | フェリーチェ・ジモンディ
|
1967-1965-1968 |
| 1973年 | エディ・メルクス
|
1968-1969-1973 |
| 1980年 | ベルナール・イノー
|
1980-1978-1978 |
| 2008年 | アルベルト・コンタドール
|
2008-2007-2008 |
| 2014年 | ヴィンチェンツォ・ニバリ
|
2013-2014-2010 |
| 2018年 | クリス・フルーム
|
2018-2013-2011 |
ダブルツール
先述の通り、全グランツールを同一年に総合優勝した選手はいない。それでも、グランツールのうち2つを同一年に制覇した選手は複数人おり、ダブルツールという。なおダブルツールと言った場合、普通ジロとツールの2つを同一年に制覇することだけを指すことが多いのだが、ここでは便宜上、ジロとブエルタ、ツールとブエルタの同一年制覇も紹介しておく。
ジロとツール(狭義のダブルツール)
8人が13回達成している。9-10月に行われる世界選手権ロードレースも制している場合、「トリプルクラウンも達成」と示している。
| 達成年 | 達成者 | 備考 |
|---|---|---|
| 1949年 | ファウスト・コッピ
|
|
| 1952年 | ファウスト・コッピ
|
2回目 |
| 1964年 | ジャック・アンクティル
|
|
| 1970年 | エディ・メルクス
|
|
| 1972年 | エディ・メルクス
|
2回目 |
| 1974年 | エディ・メルクス
|
3回目、トリプルクラウンも達成 |
| 1982年 | ベルナール・イノー
|
|
| 1985年 | ベルナール・イノー
|
2回目 |
| 1987年 | ステファン・ロッシュ
|
トリプルクラウンも達成 |
| 1992年 | ミゲル・インドゥライン
|
|
| 1993年 | ミゲル・インドゥライン
|
2回目、連続 |
| 1998年 | マルコ・パンターニ
|
|
| 2024年 | タデイ・ポガチャル
|
トリプルクラウンも達成 |
広義のダブルツール
| 達成年 | 達成者 | ジロ | ツール | ブエルタ | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1963年 | ジャック・アンクティル
|
〇 | 〇 | ||
| 1973年 | エディ・メルクス
|
〇 | 〇 | ||
| 1978年 | ベルナール・イノー
|
〇 | 〇 | ||
| 1981年 | ジョヴァンニ・バッタリン
|
〇 | 〇 | ||
| 2008年 | アルベルト・コンタドール
|
〇 | 〇 | ||
| 2017年 | クリス・フルーム
|
〇 | 〇 |
ランキング系の記録たち(青色は現役選手)
グランツール総合優勝回数
| 順位 | 選手名 | 回数 | ジロ | ツール | ブエルタ |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | エディ・メルクス
|
11 | 5 | 5 | 1 |
| 2 | ベルナール・イノー
|
10 | 3 | 5 | 2 |
| 3 | ジャック・アンクティル
|
8 | 2 | 5 | 1 |
| 4 | ファウスト・コッピ
|
7 | 5 | 2 | 0 |
| 〃 | ミゲル・インドゥライン
|
〃 | 2 | 5 | 0 |
| 〃 | アルベルト・コンタドール
|
〃 | 2 | 2 | 3 |
| 〃 | クリス・フルーム
|
〃 | 1 | 4 | 2 |
| 8 | ジーノ・バルタリ
|
5 | 3 | 2 | 0 |
| 〃 | アルフレッド・ビンダ
|
〃 | 5 | 0 | 0 |
| 〃 | フェリーチェ・ジモンディ
|
〃 | 3 | 1 | 1 |
| 〃 | プリモシュ・ログリッチ
|
〃 | 1 | 0 | 4 |
| 〃 | タデイ・ポガチャル
|
〃 | 1 | 4 | 0 |
グランツールステージ優勝回数
| 順位 | 選手名 | 回数 | ジロ | ツール | ブエルタ |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | エディ・メルクス
|
64 | 24 | 34 | 6 |
| 2 | マリオ・チポリーニ
|
57 | 42 | 12 | 3 |
| 3 | マーク・カヴェンディッシュ
|
55 | 17 | 35 | 3 |
| 4 | アレッサンドロ・ペタッキ
|
48 | 22 | 6 | 20 |
| 5 | アルフレッド・ビンダ
|
43 | 41 | 2 | 0 |
| 6 | ベルナール・イノー
|
41 | 6 | 28 | 7 |
| 7 | レアルコ・グエッラ
|
39 | 31 | 8 | 0 |
| 〃 | デリオ・ロドリゲス
|
〃 | 0 | 0 | 39 |
| 9 | リック・ファンローイ
|
37 | 12 | 7 | 18 |
| 10 | フレディ・マルテンス
|
35 | 7 | 15 | 13 |
関連項目
- ロードレース
- ジロ・デ・イタリア
- ツール・ド・フランス
- ブエルタ・ア・エスパーニャ
- グランツール:コース紹介
脚注
- *1995年以降、36人が延べ48回達成している。
- *例えば2024年にジロとツールを制したタデイ・ポガチャルはブエルタに出ても勝てると噂されたが、所属チームのマネージャーが「彼をおもちゃのように使ったり、壊れるまで弄んだりしない」と完全否定した。
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