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プラシーボ(プラセボ)効果とは、偽薬効果とも呼び、本来は薬効として効く成分のない薬(偽薬)を投与したにもかかわらず、病気が快方に向かったり治癒すること。思い込みの力が状態を変化させることなどを意味する。
概要
プラシーボ効果の「プラシーボ」とは偽薬のこと。プラシーボ効果は薬でも無いはずの物を飲んだのに薬を飲んだ時と同じように症状が回復することなどを意味する。
また、広義には薬(偽薬)の投与のみならず、実際には効果の無いはずの治療を施すことによってよい効果が現れること全般を指す。痛み、下痢、不眠などの症状については効果が出やすいとされるが、実際にどの程度効果があるか、実際の治療として用いるべきかどうかは研究者の間でも見解が分かれる。
新薬が開発される際には、プラシーボ効果の影響を排除するために偽薬との比較対照実験を行わった上で薬効が評価されるのが標準的な手続きである。この際、「この薬は効く」「この薬は効かない」と投与する医者が知っていると、その態度が患者に間接的な影響を与える可能性があるため、投与される患者の側と投与する医者の側両方ともどちらが偽薬か判らないようにしておかなければならない(二重盲検法)。このプロセスを経ておかないと、「薬を飲んだ後に病気が治った」のか、「薬を飲んだから病気が治った」のかの区別がつかない。
逆に本来は効果が無いはずの偽薬を服用することで副作用など有害な効果が出ることをノーシーボ(ノセボ)効果という。
いわゆる「代替治療(ホメオパシー)」においては「もし効かなくてもプラシーボ効果で良くなることもある」という主張がしばしばされる一方でノーシーボ効果による副作用には触れられていないことがあり、留意する必要がある。
いわゆる「後光効果/ハロー効果」(権威のある人物が話すことは多少荒唐無稽であっても信用される)はプラシーボ効果をしばしば増大させる。
ついでの知識
漫画「空が灰色だから」ではプラシーボ効果を「トランシーバー効果」と強弁する話(57話)がある。
心理療法において
臨床心理学では、しばしば心理療法の技法や流派よりも、クライアント(来談者)とセラピストの信頼関係のほうが治療効果に大きな影響を及ぼすことが知られている。心理療法では上述したような二重盲検によるテストの実施に困難をともなうことが多いため、心理療法自体をプラシーボとみるような批判も存在する。近年では医学同様の「エビデンス・ベイスト(根拠に基づく)」セラピーの考え方が浸透しつつあり、症状に応じた心理療法の適応なども整理され始めている。
プラシーボ効果についての仮説
心理的な希望が実際に様々な病気に対する治療効果を持つ理由について、ニコラス・ハンフリーは進化心理学的な観点から、免疫システムを節約するための資源マネジメント機構が働いているのではないかと推論した。
ハンフリーの仮説では、ヒトが進化過程において遭遇してきたような危機的な状況では、病気やケガをしたからと言って体内の免疫システムや再生システムなどを直ちにフル稼働させることが常に生存にとって有利ではなく、むしろ危機的な状況が継続した場合に備えて利用できる体内リソースを温存しておくことが有利な選択であり得たと考えられる。しかし、家族や仲間などからの援助、安全で快適な居所の確保、栄養のある食物の確保など、様々な要因によって、危機的状況を脱したと判断できた場合、今度は免疫システムを温存しておく必要が減少し、病気の治癒にリソースの割り当てを増やすことが有利となる。このことが「希望による治療」が現代においてもしばしばみられる理由だというのである。
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関連項目
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