対艦誘導弾とは、日本における対艦ミサイルの呼称である。ここでは、陸海空三自衛隊が運用している各種対艦誘導弾についても説明する。
兵器カテゴリーとしての対艦ミサイルについては該当記事参照のこと。
概要
四方を海に囲まれた日本にとって、来寇する敵対国の艦隊撃破は至上命題である。よって日本では70年代より対艦ミサイルの開発が進められていた。
対艦ミサイルとして著名なものはハープーン系列(米国)やエグゾゼ(仏)、SS-N-20(露)、シルクワーム(中国)といったものがあげられるが、日本は80式空対艦誘導弾(ASM-1)を完成させ、以後の対艦誘導弾シリーズの発展へとつながっていく。
名称方法は「(A/S)SM-×」となっており、頭文字は空中発射型の場合は先頭に「Air(空中)」、地上あるいは艦艇の場合は「Surface(陸上)」あるいは「Ship(艦艇)」の意味となる。「×」は開発コードとなり、改良等が加えられた場合その後ろに「B」などの順序が付く。
ここでは開発順にそれぞれ簡単な説明を行うものとする。
80式空対艦誘導弾 (ASM-1)
支援戦闘機F-1で使用することを目的に国内で独自に開発された。1973年より開発が開始され、1980年から実用を開始した。発射母機から目標データを入力された後に発射され、シースキミング高度まで降下し慣性航法装置の誘導で巡航、目標に接近してからミサイル先端にあるレーダーを作動させ、アクティブレーダーホーミングで命中する。[1]
F-1、F-4EJ改に搭載された。推進方法はロケット方式。開発当時から逸話に事欠かず、あまりにも模擬目標にあたるため標的の手持ちがなくなるとか、「破片でも部品はすべて回収すること」などといわれたのがこのASM-1だったりする。
日本にとって初めての対艦ミサイルであるが、さらにいえば日本が近代において開発した兵器として初めて?まともなファミリー化を達成することが出来た。これはシーカー/弾頭/推進部といったミサイル構成をすべてモジュール化したことにより成しえたことであり、以後の対艦誘導弾ファミリーの基礎ともなった。
88式地対艦誘導弾 (SSM-1)
空中発射型の開発に成功したあとを受けて開発された陸上発射型対艦誘導弾。初期加速はロケットモーターで行い、その後はターボジェットにより自律航法で飛行する。
射程距離は150km以上、飛翔速度は1150km/hと考えられている。ミサイル本体は内陸に配置され、沿岸海域に接近したソ連艦艇を攻撃する。地上上空を100km以上飛翔するために地形回避飛行能力が備わっている地対艦ミサイルは世界的にも稀な存在である。[2]
その他にも色々曰くありげな話などがあり、米国でのテストでは終末誘導では様々な電子的対抗手段をものともせず全弾命中したとか、ある程度のレーダー波吸収塗料が塗られているという話がある。
90式艦対艦誘導弾 (SSM-1B)
SSM-1を艦艇から発射できるようにしたタイプ。ハープーンの代替として護衛艦などに搭載された。
インターフェースもハープーンと互換性を持つよう設計されており、ランチャーもキャニスターの蓋に突起があるほかはそっくり。
現在、陸自の12式地対艦誘導弾をベースに、射程延長とヘリからの目標情報更新機能を付加した新型の研究開発がスタートしており、こちらもインターフェースに互換性をもつ予定。
なお、より妨害に強い、アクティブ電波シーカーと赤外線画像の複合式の艦対艦誘導弾用センサーの研究が開始されていたが、研究のみにとどまっている模様である。
91式空対艦誘導弾 (ASM-1C)
SSM-1/SSM-1Bと同様に、P-3Cからの発射を可能にしたタイプ。空中発射型のため初期推進のロケットモーターは搭載していない。
93式空対艦誘導弾 (ASM-2/B)
それまでのASM-1系列から一新、終末誘導をレーダーではなく赤外線画像(イメージIR)誘導とし、あわせてASM-1以上の射程を達成した。公証射程は80NM(150km程度)と呼ばれているが実際にはもっとあるだろうとも言われている。イメージIR誘導によって大半の電子妨害を無効化するだけではなく着弾位置すら選べるようになったという話まである。ステルスにも配慮されている。搭載機はF-4EJ改およびF-2であり、F-2にいたっては翼下に4発のASM-2を搭載することが可能である。
これまたあまり大っぴらになっていない話であるが、若干の改良も対応しており現在93式空対艦誘導弾(B)という名目で導入は継続中。さらにここ最近の調達情報を見るにGPS誘導装置やらデータリンク機能を搭載したASM-2D/Lタイプもあるようだ。えーっと…それってひょっとして日本版空対地ミサイル(AGM-84 SLAM)ですか?
12式地対艦誘導弾(SSM-1改)
2001年から88式地対艦誘導弾(改)として開発されていた。重装輪車にミサイルを6発搭載可能。発射機以外にも捜索レーダー、射撃統制装置、中継装置も一緒に展開される。射程は100~130kmと推測されており、ミサイルの中間誘導にはGPSが使用され、命中直前はアクティブレーダーホーミングに切り替わる。[3]
2018年のリムパックに持ち込まれ、標的艦への射撃を実施している。
17式艦対艦誘導弾
12式地対艦誘導弾の派生型として開発。射程の延長など改良が加えられており、2019年に量産初契約が結ばれている。[4]
この17式を基に、12式地対艦誘導弾(改)と哨戒機用空対艦誘導弾が開発されている。
ASM-3
ASM-1、ASM-2の後継として射程を延伸、目標識別能力も付与した。全長約6m、重量約940kgで、インテグラル・ロケット・ラムジェット・エンジンによって超音速で飛翔する。[5]
開発は既に完了しているが、量産は行わずに、さらに射程を延長した改良型の開発に入っている。
12式地対艦誘導弾 能力向上型
12式地対艦誘導弾(改)の射程を伸ばしたもので、射程は1000kmとも言われる。形状はステルスになり、大型の主翼を備える他、データリンクも搭載する。
地上発射型は2027年度までに引き渡される予定で、艦艇発射型と空中発射型も2027年まで開発を継続する。[6]
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *「FS-X次期支援戦闘機」エアワールド1993年1月号別冊 pp.56-57
- *実は「地対艦ミサイル先進国」日本の実力 2019.7.11
- *https://www.zakzak.co.jp/soc/news/170616/soc1706160009-n1.html
- *17式艦対艦誘導弾の量産初契約を三菱重工と実施 2019.5.29
- *ASM-3が開発完了、部隊配備へ 2018.11.19
- *潜水艦発射の長射程ミサイルも 自衛隊向け「スタンド・オフ防衛能力」三菱が受注 早くも量産へ 2023.4.13
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