🍎山形のりんご生産
「りんごといえば青森」、「山形といえばさくらんぼ」というイメージが持たれがちだが、山形のりんご生産量も多い。2018年の統計では全国4位であり、過去には全国3位だったこともあった。
各都道府県のりんご生産量(農林水産省の作物統計より)
都道府県 | 生産量(t) |
---|---|
青森県 | 445,500 |
長野県 | 142,200 |
岩手県 | 47,300 |
山形県 | 41,300 |
福島県 | 25,700 |
秋田県 | 23,000 |
群馬県 | 7,890 |
北海道 | 7,120 |
宮城県 | 2,730 |
青森と比べると大したことないように見えるが、これは青森の生産量があまりにもぶっ飛んでいるだけであり、日本全体でみればかなり多い方である。実際、山形のりんご生産量は、隣にある宮城の約15倍である。
県内を見ると、三大産地に「東根市」「天童市」「朝日町」、その他にも多くの産地がある。これについては後述。
🍎山形りんごの歴史
戦国時代に庄内地方を治めていた武将の北楯利長が、庄内地域の鮭や和りんごを最上義光に献上した記録があるとされる。和りんごは現在の西洋りんごとは異なる種であるが、おそらく東北地方の中でも最も古いりんごに関する記録と思われる。
西洋りんごの栽培は明治時代に東北地方で始まった。まず1875年に青森県から栽培が開始されたが、同年には神町(現:東根市神町)でも開拓者の板垣董五郎が栽培を試みている[1]。このときは失敗に終わったが、板垣が開拓した地には「板垣新田」という地名がつけられた。
さらに同じく1875年、米沢牛が有名になるきっかけを作ったお雇い外国人のチャールズ・ダラスが、米沢にりんごを植えたと言われる[2]。その翌年には、現在の米沢市舘山地区でりんごの栽培が始まった[3]。現在の「舘山りんご」の始まりとされ、これが山形県での最初の西洋りんご栽培の事例とされている。
後に神町地区に武田半十郎、中島三郎などの開拓者が現れ、明治中期からりんごの栽培を始める[4]。明治後期には他地域からの移住者も加わり、板垣新田を含めた神町の東側の地域が、さくらんぼ・りんごなどの果樹栽培地として発展する。現在、その場所には「フルーツライン」という道路が通っている。
大正時代に入ると舘山や神町以外でも広く商用の栽培がされるようになる。戦後になるとさらに生産量が増え、朝日町のように、農法の改良により全国の市場関係者から注目される産地も現れた。
🍎山形りんごの特徴
他地域でも栽培される「ふじ」「王林」「つがる」「シナノスイート」「昂林」「高徳」などの品種が多い[5]。一方、山形県オリジナルの品種もあり、2006年から流通している「秋陽」は甘味と酸味のバランスが良く、他の品種よりもやや硬いパリパリした食感になっている[6]。
また、「ふじ」のうち、実を太陽の光に当てて育てたものを「サンふじ」と呼ぶが、この誕生に山形県が関わっている。1970年代までは、ふじには実に袋をかけて育てる農法が一般的だった(有袋ふじ)。しかし、1980年代に山形県朝日町で袋をかけずに育てたほうが甘味が増すことが発見された(無袋ふじ)。その後、枝の長さや摘果の回数の調整、太陽光が当たるようにするための摘葉や玉回し(実を回転させること)の導入など、農法の改良が進められた。これを経て、おいしい「サンふじ」の栽培方法が確立された[7]。
山形りんごは1月~8月にはあまり出荷されず、実が完熟する9月~12月になると出荷量が増える。日本のりんごは年間を通じて青森県の出荷量が多いが、9月~12月については、東京では山形りんごは2位の長野県に匹敵する流通量を誇る[8]。
完熟期が収穫期と一致するため、山形りんごでは「完熟しているため、りんごの中に蜜が多く入っていること」がアピールされやすい。
🍎山形県内の主要産地
- 東根市
- 駅名が「さくらんぼ東根」になるほどさくらんぼ推しの地域だが、りんごの生産量も多い。先述した神町のフルーツライン沿いにりんご農家が多く、特に若木(おさなぎ)産が多い。市の平野部の多くが果樹栽培に適した扇状地になっていることなどから、フルーツライン以外の場所での栽培も多い。
- 天童市
- 東根市の南に隣接する地域。東根市と同じく扇状地が多く、東根市に並ぶ生産量を誇る。
- 朝日町
- 無袋ふじ発祥の地として知られる。県内では最もりんごのアピールに力を入れており、りんごの実が湯に浮かぶ「りんご温泉」や、道の駅「あさひまち りんごの森」などが挙げられる。「りんごの味にかけては日本一」と評されることもある。
- 山形市
- 天童市の南に隣接しており、市北東部に果樹園が広がっているため、やはりりんごの生産も多い。また、県庁所在地であるため、山形県のりんごの品評会やりんご生産についての会議もここで行われることが多い。
- 米沢市
- 生産量は少ないものの、市西部が舘山りんごの生産地である。「米沢の味ABC」というものがあり、AはApple、BはBeef(米沢牛)、CはCarp(鯉)とされる。
県内で年間出荷量100t以上の産地は以下の通り。ただしデータは2006年の作物統計調査なので注意。
市町村 | 生産量(t) |
---|---|
東根市 | 10,200 |
天童市 | 9,690 |
朝日町 | 8,120 |
山形市 | 3,040 |
大江町 | 2,790 |
中山町 | 2,020 |
寒河江市 | 1,870 |
南陽市 | 1,480 |
山辺町 | 1,300 |
村山市 | 773 |
高畠町 | 727 |
米沢市 | 756 |
白鷹町 | 649 |
上山市 | 367 |
河北町 | 340 |
長井市 | 251 |
鶴岡市 | 204 |
西川町 | 138 |
🍎ニコニコ動画での山形りんご
山形りんごは青森と比べるとそれほどの知名度はなかったが、ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」での辻野あかりのアピールに加え、2020年にニコニコ動画でそれをもとにした「たべるんごのうた」のMAD動画が流行し、一部で山形りんごが注目されている。
2021年11月には山形県のTwitterアカウントでも取り上げられた。
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/pref_yamagata/status/1456365942489899019
🍎他の「山形」のりんご
長野県松本市の南西には「山形村」が隣接しており、ここでもりんごが栽培されている。
また、青森県黒石市には「山形地区」がある。偶然にも、ここは青森県でりんご栽培を初期に行った企業「興農株式会社」の誕生の地であり、現在その場所には青森県りんご研究所がある[9]。
🍎関連動画
🍎関連リンク
🍎関連項目
脚注
- *東根市立神町小学校「神町りんごのMini歴史」
- *山形大学大学院理工学研究科木ノ内研究室HP「舘山りんご」
- *米沢市役所「A(Apple)舘山りんご」
- *東根市立神町小学校「神町りんごのMini歴史」
- *おいしい山形「りんご」
- *JA全農りんご情報局「秋陽」
- *山形味の農園「サンふじ(無袋ふじ)発祥の地、朝日町」(2015年11月2日)
- *東京都中央卸売市場「市場統計情報(月報)産地別検索>令和元年>果実>りんご類」
- *弘前りんご商業協同組合「りんごの歴史」
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