缶(罐)とは、金属を延ばして作った容器である。
概要
鉄(ブリキが代表的)、鉄の合金、アルミニウムなどの薄板を延ばして作る容器で、密封性に優れ食料、飲料、燃料・油脂などを保存するのに用いられる。缶飲料、缶詰、ドラム缶などは身近に見られる。
特殊な機材などを用いずとも円筒形の金属素材にしやすく、ニコニコ動画でも空き缶などを使った動画が見られる。不燃性である特性を活かしたものもある。
缶(罐)は英語のcan、オランダ語のkanの当て字。ただ缶(罐)は容器を表す漢字で、意味はcanに近いといえば近い。
食糧保存容器としての缶の発明と普及
現代で使われる金属製の缶は、缶詰とともに発明された。1804年にビンを使った食糧保存法は開発されていたが、1810年にイギリス人ピーター・デュランがブリキを使った食糧保存法を発明し、缶詰が誕生した。もちろんそれ以前から金属製の容器はあったが、現代につながる缶の主な用途である食糧保存はここから始まる。余談として、缶詰発明の段階では缶切りは存在せず、初期はナイフや銃弾で容器ごと破壊していたというエピソードがある。日本では鯖缶、桃缶などが長きにわたって人気である。
缶詰は耐久性・賞味期限に優れ、非常食・保存食・戦闘糧食といった用途にも最適だが、金属製で重く缶切りが必要で使用後に小さく潰しづらいといった欠点もあり、現代では一部はレトルトパックで代替されている場合もある。
20世紀にはいると1935年にアメリカで缶ビールが誕生し、飲み物を缶に詰めた飲料缶が普及する。日本では1954年に缶入りオレンジジュースが発売され、1958年に日本産の缶ビールが発売された。1969年には缶コーヒーが生まれている。
1963年にアメリカでアルミ缶が発明されると、1971年には日本で初めてのアルミ製ビール缶が作られ、以降スチール缶との代替が進む。しかし、缶詰やホット飲料にはアルミ缶は不適であるため、スチール缶も残り続けている。
これらの缶飲料はそれまでのビン飲料と比べて紫外線からの保護などの保存性に優れ、また、コップが不要などの携帯性にも優れていた。さらに、運送の面でも重くデッドスペースが多くなりがちなビン飲料よりも円柱の缶のほうが効率よく運ぶことができた。
上記のような理由により、日本では1975年ごろからは缶飲料が普及し、それまでのビン飲料は数を減らしていく。自動販売機などでもビンを売るものから缶を売るものが主流になっていく。平成になるとふたがついてより携帯性に優れた小型のペットボトルも普及したが、缶ビールやホットコーヒーなどの缶需要を完全に代替することはできず、令和になっても缶飲料は一定のシェアを保ち続けている。
また、近年ではおでん缶などの料理を缶詰にした商品も売られている。
燃料保存・輸送用のドラム缶
ドラム缶は石油の保存・輸送用の容器として1903年に考案された。
現代では200Lドラム缶がほぼ世界共通の容器として使われている。
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内容物別 |
行為その他 |
関連静画
外部リンク
- 缶詰誕生200周年 - 日本缶詰びん詰レトルト食品協会
- 缶の歴史 - 缶パッケージの大阪製缶株式会社
- スチール缶の歴史食品・飲料容器として果たしてきた役割を探る - スチール缶リサイクル協会
- <アルミ缶を知ろう>アルミ缶の歴史 - アルミ缶リサイクル協会
- ドラム缶の歴史|ドラム缶の特長|ドラム缶工業会
漢字として
缶は、異なる二つの字に対応している。一つは罐(カン)の新字体の缶で、もう一つは缶(フ)である。ここでは缶・罐(カン)、缶(フ)の順に説明する。
缶・罐(カン)
- Unicode
- U+7F36
- JIS X 0213
- 1-20-44
- 部首
- 缶部
- 画数
- 6画
- Unicode
- U+7F50
- JIS X 0213
- 1-70-5
- 部首
- 缶部
- 画数
- 23画
- 意味
- 新字体は缶で、旧字体は罐。容器、カンという意味がある。罐は〔説文新附・巻五〕には「器なり」とある。また〔類篇〕に「汲む器なり」とあり、水を汲む釣瓶のこと。
- 鑵と通用する。
- 字形
- 形声で声符は雚。
- 音訓
- 音読みはカン、訓読みはつるべ。
- 規格・区分
- 缶は常用漢字である。JIS X 0213第一水準。当用漢字にはなく1981年に常用漢字になった。
- 罐は常用漢字表に参考字体として載っている。JIS X 0213第二水準。
- 語彙
- 缶子・缶底
異体字
- 礶は、Unicodeや〔漢語大辞典・異体字表〕にある異体字。
- 鑵は、〔漢語大辞典・異体字表〕にある異体字。
- 𤮴は、〔漢語大辞典・異体字表〕にある異体字。
- 𤮳は、〔漢語大辞典・異体字表〕にある異体字。〔字彙補〕にはセンと読んで、「行くこと正しからず」とある。
- 𢑆は、〔漢語大辞典・異体字表〕にある異体字。〔説文・巻十二〕には「弓曲ぐるなり」とある。
缶(フ)
- 意味
- ゆったりとした腹で口がすぼんだ素焼きの甕、ほとぎ、釣瓶の瓶、升目の名前で六斗もしくは十六斗、という意味がある。〔礼記・礼器〕に「五獻の尊、門外は缶、門內は壺」とあって壺と同じく容器のこと。
- 〔説文解字・巻五〕には「瓦器なり。酒𤖅を盛(い)るる所以なり」とあって、酒を容れる土器とある。
- また「秦人は之(こ)れを鼓(う)ちて以って謌(うた)を節す」とあり、秦ではこれを太鼓の代わりにしたという。〔史記・藺相如伝〕には秦王が趙王を脅して瑟を鼓たせた代わりに、相如が秦王を脅して缻を擊たせたという故事が載っている。
- 字形
- 土器の象形。
- 音訓
- 音読みはフ、フウ、訓読みは、ほとぎ、もたい。
- 部首
- 缶は部首、缶部を作る。部首としては偏や脚に用いられ、偏はほとぎへんと呼ばれる。土器、容器に関する字が属する。
- 声符
- 缶を声符とする漢字に㓡、宝(寶)、𪔕などがある。
- 語彙
- 缶米
異体字
- Unicode
- U+7F3B
- JIS X 0213
- 2-84-67
- 部首
- 缶部
- 画数
- 10画
- Unicode
- U+2F78
互換文字
- 2
- 0pt
- ページ番号: 4494119
- リビジョン番号: 3256742
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