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毒素原性大腸菌(ETEC)とは、危険な大腸菌(病原性大腸菌)の一種である。
概要
そもそも大腸菌の多くは無害な存在なのだが、時々胃腸炎や食中毒などの病気を起こすタイプの大腸菌もある。人間(ヒト)に病気を起こすタイプの大腸菌を総称して病原性大腸菌と呼ぶ。
病原性大腸菌の中でもコレラトキシン(コレラ菌が産生する毒素)に似たエンテロトキシンを産生するタイプを毒素原性大腸菌(ETEC)と呼ぶ。ETECは主に小腸に感染し、コレラのような激しい下痢を起こす。
ただし、赤痢菌や腸管侵入性大腸菌(EIEC)、サルモネラ菌などのように細胞内に侵入することはない。
ETECによる胃腸炎は発展途上国(東南アジア、アフリカ、中南米)に多く、日本などの先進国では少ない。国によっては乳幼児の死亡原因の一つにもなっている。
※ちなみに病原性大腸菌でも腸管出血性大腸菌(O157など)はむしろ先進国に多い。
感染経路
経口感染(食中毒)。ETECに汚染された水を飲んだり、生の魚介類(刺身、寿司など)や野菜、果物などを食べて感染することが多い。
上下水道やトイレが発達していない発展途上国では、患者の大便・下痢便から感染が広がりやすい。
症状
軽症の場合は数日程度で治るが、重症になるとコレラやロタウイルスと同様に「米のとぎ汁のような真っ白い水様便」が大量に出て脱水症状に陥ることもある。特に乳幼児は重症化しやすく危険である。
ただしETECは小腸で毒素は出しても血管を破壊することは無いため、細菌性赤痢やO157と異なり血便が出る(下血する)ことは無い。また、腹痛や発熱も軽度である(ちなみに赤痢やO157では激痛や高熱を伴うこともある)。
治療方法
コレラに準ずる。抗生物質と水分補給が重要で、脱水症状が酷い場合は入院して点滴(輸液)を受ける必要がある。
ETECによる胃腸炎の死因はほぼ脱水症状であり、赤痢菌やO157と異なり毒素が他の臓器(腎臓など)を攻撃することは無いため、脱水症状さえ回避・改善できれば予後は良好である。
予防方法
ETECは高温には弱いので、75℃以上かつ1分以上の加熱調理で死滅する。そのため飲料水や食品は加熱してから食べると良い。
また、発展途上国では魚介類や野菜、果物などの生食を避けるか、どうしても刺身や寿司を食べたい場合は信用できる飲食店に行くと良い。
ETECによる胃腸炎は日本の感染症法では比較的危険度が低めの五類感染症(ノロウイルス、カンピロバクターなどと同等)となっているため、法律上は三類感染症(コレラ、O157、細菌性赤痢、腸チフスなど)のような就業制限は必要ないとされているが、人から人に伝染する可能性があるので治るまでは飲食業やサービス業で働くのはやめておこう。
関連項目
- 医学記事一覧
- 食中毒、胃腸炎
- 感染症、細菌
- コレラ
- 腸管出血性大腸菌(EHEC)…大腸菌の中でも特に危険なタイプ。赤痢菌の毒素(志賀毒素)に似たベロ毒素を出し、大腸からの出血や急性腎不全などの重大な病気を引き起こす。O157、O111、O104などが有名。
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