OPSとは、出塁率と長打率を足し合わせた野球の指標である。On-base Plus Slugging(出塁+長打)の略。
概要
打者の評価を表すものとして、打率、打点、本塁打、という三つの指標が長く使われてきた。
しかし、打者の残す数字は
打席、打数、得点、安打、二塁打、三塁打、本塁打、打点、四球、死球、犠打、犠飛、三振、併殺、と多岐にわたり、
そのうち、打率は打数と安打、本塁打は本塁打のみしか表わさず、打点は打者ごとに機会がバラつき、公平な評価が出来ないという、大きな欠点があった。
特に、四球に関しては、旧来の指標では全くと言っていいほど考慮されず、むしろ四球を選ぶほど、打数が減り、本塁打や打点が減るという傾向まであった。
そこで考案されたのがOPSで、名前の通り出塁率と長打率を足し合わせたものである。その有用性については、以下の表でなんとなく分かるように思う。
四球 | 死球 | 単打 | 二塁打 | 三塁打 | 本塁打 | 分母 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
打率 | 1 | 1 | 1 | 1 | ÷ 打数 | ||
出塁率 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | ÷ (打数+四球+死球+犠飛) |
長打率 | 1 | 2 | 3 | 4 | ÷ 打数 | ||
OPS | 1 | 1 | 2+a | 3+2a | 4+3a | 5+4a | ÷ (打数+四球+死球+犠飛) (a = (四球+死球+犠飛) / 打数 ≒ 0) |
つまり、旧来の指標では表すことができなかった二塁打や三塁打、四球が考慮されるようになり、打者の実力をより適切に判断することができるようになったのである。
そのOPSの基準については、0.8で平均よりやや上の打者、0.9を上回れば優秀な打者、1を超えれば球界を代表する強打者、となっていたこともあるが、年代によって投手有利、打者有利とプレー環境が一定しないことも考慮されたい。シーズンやリーグの違う選手同士を比較する場合は、リーグ平均からの傑出度を測るOPS+が考案されている。
OPSの問題点
無論のこと、OPSも万能な指標ではなく、一概にOPSの高低で全ての打者の能力を測れるわけではない。
例えば、OPS自体は単純に出塁率と長打率を足し合わせたものだが、出塁率はどんなに優秀な打者でも5割を超えることはまず無いのに対して、長打率は本塁打王クラスとなると6割を超えることも珍しくはない(例えば、2010年のセ・リーグ最高出塁率と最高長打率はともに中日の和田一浩だが、出塁率.437に対して長打率は.624である)。後述するがOPSでは出塁率が過小評価されている問題があり、出塁率が高いが長打率が低いリードオフマンタイプよりも、長打を多く放つ長距離打者の方がOPSの上では有利となってしまう。
また、走塁能力が軽視されているという指摘も多い。二塁打や三塁打を放つ上では走力は重要な要素であるため、長打率が走力を全く反映していないわけではない。が、少なくとも盗塁能力、出塁後の走塁能力は全く考慮されないので、やはりOPSにおいては長打力に比べて走塁能力の占めるウェイトは低いと言える。
他、OPSは単純な足し算であるため、OPSの数字だけでは出塁率の高い打者なのか、長打率の高い打者なのかが解らないという問題もある。例えば2010年の青木宣親(OPS.944)とアレックス・ラミレス(OPS.951)では、青木は出塁率.435の長打率.509に対し、ラミレスは出塁率.338の長打率.613でどちらも1割の差があるにもかかわらず、OPSではほとんど同じ数字になってしまう。以上のような問題点があるため、アメリカでは打率/出塁率/長打率をスラッシュで区切って併記しており、そのことからそれら3つの指標は「スラッシュライン」と呼ばれ、打率本塁打打点にかわる打撃三冠として評価されている。
上記のようにOPSでは出塁率の占めるウェイトがやや過小評価されている問題があり、出塁率と長打率を単純に足すのではなく、出塁率の3倍と長打率を足したNOIという指標も考案されたことがある。
近年は、それらの問題点を克服し更に細分化した、wOBA、wRC+といった指標がセイバーメトリクスの世界では主流となっているが、それらは計算が複雑で把握が困難なため、フロントやマニアだけが理解していれば充分だと捉える人もいる。それに対してOPSは算出が容易でありながらも、チーム得点との高い相関係数を現していることから、比較的簡単に打者の実力を読み取れる総合指標として、一般層に定着させられる限界ギリギリのレベルであるともいえるだろう。
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