併殺(ダブルプレー、ゲッツー)とは、野球やソフトボールの守備で見られる記録の一つである。
攻撃側にとってはチャンスを潰してしまう形であり、守備側にとってはピンチを脱する理想的な形である。
概要
野球やソフトボールにおいて、一連のプレーで2つのアウトを取ること。基本的に、打者と走者1人をいっぺんにアウトにするパターンが多い(走者2人をアウトにし打者走者が残る場合もある。満塁での1-2-5ゲッツーなど)。日本では「ゲッツー」と呼ばれるが、これは和製英語で「ゲットツーアウト」の略。
いっぺんに3つのアウトをとった場合は「三重殺(トリプルプレー)」と呼ばれる。そちらの個別記事も参照。
その性質上、塁上に走者がいなければ発生することはない。ただしメジャー2のジャイロキャッチを除く。また、二死の場合も発生しない。
攻撃側にとっては、塁上の走者を失い、1イニングに許されるアウトの2/3を消費してしまうため、チャンスが潰える悪い形である。一方、守備側にとっては理想的な形であり、走者一塁からの内野ゴロゲッツーは「注文通り」とも評される。好守備による併殺は内野の連係プレーの華である。
走者が一塁にいる場合、内野手は内野ゴロ併殺をとるため、二塁手と遊撃手が二塁のカバーに入りやすいよう、通常の守備位置よりやや二塁に寄って守る。これをゲッツーシフトと呼ぶ。ピッチャー返しの打球を併殺にしやすい一方、一・二塁間と三遊間が通常より広く空くため、通常の陣形なら二ゴロや遊ゴロだった打球がヒットになることもある。なお、三塁にも走者がいる場合は、一塁手や三塁手へのゴロの時は三塁走者の生還を防ぐために本塁へ送球できるように、ゲッツーシフトと比較して両者が前進した中間守備と呼ばれるシフトもとられる。
ややこしいことに、守備側の記録としての「併殺」と、打者の記録としての「併殺打」は定義が異なる。そのため、併殺が発生しても、必ずしも打者に「併殺打」が記録されるとは限らない(後述)。なお、「三重殺」は守備側につく記録である。
打席から一塁への距離が長い分、左打者よりも右打者の方が併殺になりやすい。また、打球が強く速いほど併殺になる確率も高くなる。そのため、併殺打の多い打者は強打で鈍足の右打者であることが多い。
併殺の形
フォースダブルプレー
一番基本的な併殺の形。内野ゴロの打球を処理し、フォース状態(進塁義務のある状態)の走者2人をアウトにする。
一塁走者と打者走者を二塁→一塁でアウトにするのが多いが、満塁での本塁→一塁でのダブルプレー(いわゆるホームゲッツー)や、走者が一・二塁の場合に三塁→二塁や三塁→一塁でアウトにするのも同じフォースダブルプレー。
この形の併殺が記録された場合、スコアブックにはどのような形でアウトをとったのかを示すため、「4-6-3」や「6-4-3」のように、ボールを処理した順に野手の守備番号(投手が1、捕手が2、一塁手が3、二塁手が4、三塁手が5、遊撃手が6)が記録される。野球に詳しくない人には何のことだか解らないと思うので、以下に具体例を挙げる。
- 二塁手がゴロを捕球し、二塁に入った遊撃手に送球、遊撃手が一塁手に送球して併殺 → 4-6-3
- 遊撃手がゴロを捕球し、二塁に入った二塁手に送球、二塁手が一塁手に送球して併殺 → 6-4-3
- 三塁手がゴロを捕球し、二塁に入った二塁手に送球、二塁手が一塁手に送球して併殺 → 5-4-3
- 一塁手がゴロを捕球し、二塁に入った遊撃手に送球、遊撃手が一塁ベースカバーの投手に送球して併殺 → 3-6-1
- 投手がゴロを捕球し、二塁に入った二塁手に送球、二塁手が一塁手に送球して併殺 → 1-4-3
- 遊撃手がゴロを捕球し、そのまま二塁を踏み、一塁手に送球して併殺 → 6-6-3
- 満塁で、投手がゴロを捕球し、本塁の捕手に送球、捕手が一塁手に送球して併殺 → 1-2-3
この場合、打者には併殺打が記録される。
また、たとえば無死満塁から4-6-3の併殺打となった場合、三塁走者は本塁に生還して1点が入るが、この場合は野手に打点は記録されない。ただし、走者が三塁にいるときに、併殺をとろうとして打者が一塁セーフとなった場合は記録は内野ゴロとなるため、三塁走者が生還していれば打点がつく(これを併殺崩れという)。
リバースフォースダブルプレー
内野ゴロによって走者ひとりがアウトになったあと、それによってフォースを解かれた(進塁義務の無くなった)走者をアウトにする形の併殺。
たとえば、走者が一塁にいる状態で打者が一ゴロを打ち、一塁手が一塁を踏んで打者をアウトにしてから、一・二塁間に挟まれた一塁走者をタッチプレイでアウトにする形がこれである。満塁での三ゴロや、一・二塁での二ゴロ、遊ゴロなどでも成立する。
この場合も、打者には併殺打が記録される。
フライ・ライナーアウトによる併殺
打者がフライを打ち上げたり、ライナーが直接野手に捕球された際に、離塁していた走者が、リタッチするべき塁に戻れず、タッチされたり戻るべき塁に送球されてアウトになる形。
特に痛烈なライナーの打球が内野で捕球された際に発生しやすく、その場合は「ライナーゲッツー」と呼ばれ攻撃側にとっては非常に不運な形として扱われる。ヒットエンドランがライナーやフライになってしまったというケースもある。凡フライで戻れなかった場合は走者のボーンヘッドである(関連→ふるきあーっと!)。
この場合、走者のアウトは走者自身の責任であるため、打者に併殺打は記録されない。
タッチアップ失敗による併殺
フライが打ち上がった際、タッチアップによる進塁を試みた走者が進塁先の塁でアウトになる形。
この場合も走者の走塁死であるため、打者に併殺打は記録されない。
ヒットエンドラン失敗による併殺(三振ゲッツー)
攻撃側がツーストライクからヒットエンドランを仕掛けるものの、打者が空振りして三振となり、スタートした走者も捕手からの送球によりアウトとなる形。俗に「三振ゲッツー」と呼ばれる。
この場合、記録上は三振と走者の盗塁失敗となり、打者に併殺打は記録されない。
要するに
打者に「併殺打」が記録されるのは、走者のアウトに関して走者に責任が無い場合である。
フォースダブルプレーでの走者のアウトは不可抗力であるため打者の責任だが、ライナーゲッツーや三振ゲッツーは走者の判断で回避することができるため走者の責任である。つまり走塁死による併殺は打者のプレーと直接的な関係はないため、打撃成績には反映されない。注意されたい。
1イニング2併殺打?
非常に珍しいことだが、稀に「1イニング2併殺打」が記録されることがある。
これは、フォースダブルプレーにおいて、2アウト目をとる送球を野手が捕球できなかった場合、記録上は「併殺打と失策」として扱われるため。この場合1アウトのみで走者が残るため、1イニングに2併殺打が記録されることがある。
一方、2アウト目をとるための送球が悪送球であった場合は、たとえ明らかにアウトのタイミングであったとしても併殺打は記録されず、その悪送球によって進塁されることがなければ失策も記録されない。
長いプロ野球の歴史でも通算で5回しか記録されたことのない珍記録。最近では2010年4月4日に北海道日本ハムファイターズが埼玉西武ライオンズ戦で、2011年7月15日には広島東洋カープが中日ドラゴンズ戦で記録している。
併殺打に関する日本記録
通算併殺打のNPB最多記録保持者は野村克也で、通算で378の併殺打を記録している。通算2位の衣笠祥雄に100以上の差をつけており、ほとんど知られていないが、球史に残るアンタッチャブル・レコードのひとつである。野村の記録は長年、MLB記録(カル・リプケンの350)をも上回る数字として君臨してきたが、2019年にアルバート・プホルスに更新された。
NPBのシーズン最多記録は1989年にブーマー・ウェルズが記録した34併殺打。セ・リーグ記録は1994年に駒田徳広が記録した29併殺打。MLBでのシーズン最多はジム・ライスの36併殺打(1984年)。
また、チームでのNPBシーズン記録は、2007年に東北楽天ゴールデンイーグルスが144併殺打を記録したのが最多。
逆に連続打席無併殺打は金本知憲が2000年5月12日から2001年9月28日にかけて記録した1002打席。いくら左打者で足が速いとは言え、中軸を打つ強打者でこれは驚異的な記録である。
また、シーズン規定打席に到達して併殺打0は、2リーグ制以降では過去12人しか達成者がいない。直近の達成者は2016年の西川遥輝(日本ハム)。
関連動画
関連項目
- 野球
- 三重殺(トリプルプレー)
- 内野手
- ストレート 140km/h 真中中央 ゴロ(二併打)
- ISOBE / 高級アイス
- ふるきあーっと!
- ツラゲ
- もう許してやれよ
- 内野5人シフト
- しらたま
- ルールブックの盲点の1点
- 2
- 0pt