ウェストオーストラリアン

ウェストオーストラリアン(West Australian)は、1850年生まれのイギリスの元競走馬・元種牡馬。

1809年に英2000ギニーが創設されて牡馬のクラシックが確立されてから約半世紀を経て現れた、英国競馬史上初の三冠馬^[1]。

概要

父Melbourne 、母Mowerina、母父Touchstoneという血統。母は英ダービー馬マンディグ、英2000ギニー・ダービー優勝馬コザーストーンといった活躍馬の妹で、自身も1000ギニーで2着に入った活躍馬という良血である。

英国ダラム州にあるストリートラム城という城において、これを所有するジョン・ボウズという資産家によって生産所有され、最終的に生涯でクラシック42勝を挙げることになった「北方の魔法使い」ことジョン・スコット調教師に預けられた。

競走成績

体重が増えやすい上に脚元があまり丈夫ではなく、強い調教が掛けられなかった本馬だが、2歳8月に3歳馬と併せ馬をして楽々先着した。馬主のボウズはこれを見て素質を確信し、ロンドンに赴いてブックメーカーで翌年のウェストオーストラリアンのダービー制覇に3万ポンド(現在の貨幣価値の日本円換算で2億円以上)という大金を賭けた。10月のデビュー戦ではスローペースに苦しんで半馬身差2着に敗れたが、2戦目で勝ち上がって2歳時を終えた。

3歳時は4月の2000ギニーから始動し、7頭立てで単勝1.67倍の1番人気となった。大雨の中でのレースとなったが、半馬身差で勝利した。続く英ダービーでも中団追走から抜け出し、2000ギニーで2着だったシッティングボーンを再びクビ差の2着に競り落として勝利を収めた。

夏を休養に充てて、秋はセントレジャーから始動した。10頭立てで単勝2.5倍の支持を集めたが、鞍上のフランク・バトラー騎手が一発ムチを入れただけで、後は殆ど追われることなく3馬身差を付けて楽勝。史上初の英国クラシック三冠を達成した。

3歳時はその後2戦に出走したが、いずれも対戦相手が全て回避したために単走となった。3歳時は5戦全勝だった。

4歳初戦のマッチレースを対戦相手の回避のために単走で勝利した後、ウェストオーストラリアンはイギリスの政治家である初代ロンデスボロー男爵に5000ポンドという高額で購入された。その後アスコットゴールドカップを含む3連勝を挙げて引退した。

通算成績は11戦10勝で、敗れたのはデビュー戦だけであった。1886年6月に「スポーティング・タイムズ」誌上で競馬関係者100人に対して行われた「19世紀の名馬」アンケートでは63票で、次代の三冠馬グラディアトゥール(65票)に次ぐ2位となった。

種牡馬時代

ロンデスボロー男爵の牧場で種牡馬入りしたウェストオーストラリアンは英オークス馬サマーサイドや2000ギニー馬ザウィザードなどを出して成功したが、同じ牧場に「種牡馬の皇帝」という異名を取ったストックウェルがいたため、大成功とまでは行かなかった。

1860年にロンデスボロー男爵が死去するとセリに掛けられ、フランスのシャルル・ド・モルニー公爵(GI・モルニ賞の名前の由来となった人物)に4000ギニーで購入されて、フランスに移動した。その後モルニー公爵の死去によって彼の異父兄のナポレオン3世に引き取られた後、1870年にフランス国立牧場で20歳で死亡した。

生まれ故郷であるストリートラム城には後に記念碑が建立された。なお、直系は父系子孫からマンノウォーやハリーオンが出て現在も続いており、現在のゴドルフィンアラビアン系の主軸となっている。

血統表

Melbourne 1834 黒鹿毛	Humphrey Clinker 1822 鹿毛	Comus	Sorcerer
			Houghton Lass
		Clinkerina	Clinker
			Pewet
	Cervantes Mare 1825 鹿毛	Cervantes	Don Quixote
			Evelina
		Golumpus Mare	Golumpus
			Paynator Mare
Mowerina 1843 鹿毛 FNo.7-a	Touchstone 1831 黒鹿毛	Camel	Whalebone
			Selim Mare
		Banter	Master Henry
			Boadicea
	Emma 1824 栗毛	Whisker	Waxy
			Penelope
		Gibside Fairy	Hermes
			Vicissitude

クロス:Whalebone=Whisker 4×3(18.75%)、Trumpator 5×5(6.25%)、Sir Peter 5×5(6.25%)、Termagent 5×5(6.25%)

• 父メルボルンは本馬が活躍した1853年に英国リーディングサイアーとなり、1857年にももう一度獲得している。
• 母父タッチストンは英国リーディングサイアー4回。現在でも直系が残っている大成功種牡馬である。

主な産駒

• Summerside (1856年産 牝 母 Ellerdale 母父 Lanercost)
  • 1859年オークスステークス
• The Wizard (1857年産 牡 母 The Cure Mare 母父 The Cure)
  • 1860年2000ギニーステークス
• Jeune Premiere (1864年産 牝 母 Partlet 母父 Birdcatcher)
  • 1867年ディアヌ賞(仏オークス)

関連コミュニティ

関連項目

• 競馬
• 競走馬の一覧

脚注

1. *クラシック3勝自体はクルシフィックス(1000ギニー、2000ギニー、オークス)が初。