キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦とは (キーロフキュウゲンシリョクミサイルジュンヨウカンとは) [単語記事]

キーロフ級ミサイル巡洋艦とは、ロシア海軍（旧ソヴィエト海軍）の巡洋艦である。
尚、ロシアでは「重原子力ロケット巡洋艦」と呼ばれている（ロシア語ではミサイルとロケットは同意義語のため）。

概要

本級は第二次世界大戦以降に建造された水上戦闘艦（航空母艦は除く）では世界最大である。

全長：252m（世界最大の戦艦である大和で263m）

排水量：最大で26500ｔ（海自最大の艦艇である「ましゅう型補給艦」で最大25000ｔ）

これだけの巨体ながらステルスを意識した船体形状のためレーダー反射面は非常に小さい（実際に本級がデンマーク海峡を抜けたときにNATOのレーダーには2000t程の小型艦にしか写らなかったとか）。また世界初となるVLS(垂直発射システム)の採用に加え最大で12個の目標に対して同時に攻撃が可能な艦隊防空システム「フォールト」や現代では珍しい連装砲、さらに重要区画部分に最大100mmの装甲を施すなど流石ソ連（？）と言えるトンデモ艦となっている。

尚、上記の艦隊防空システム「フォールト」はあくまで最大12個の目標に対して同時攻撃が可能なシステムであり、アメリカ軍が開発したイージス・システムとは別物である（詳しくはイージス艦の項目を参照）。

計画では7隻（9隻説もあり）の建造を予定していたが本級もソ連崩壊の余波を受け、建造は4隻に留まった。
最も4番艦は極度の財政難のため艤装（各種装備の工事）が途中止めになっていたのだが、空気の読めないエリツィンおじさんが「途中なら最後まで造ってしまえ！」と半ば強引に工事を再開させ就役させた。その所為で細々と建造を続けていた他の艦艇は工事がストップしてしまった。ある意味最強のKYである。

現在は皮肉にも4番艦のみが稼働中。しかしその艦も装備・機械の故障、事故が絶えないという・・・

同型艦

1番艦「キーロフ」（後にアドミラール・ウシャーコフ（ウシャコフ）に改名される）
北方艦隊の所属であったが推進器にトラブルを起こして予備役に編入後、除籍となる。
予備役編入後に除籍になる予定だったところを議会が「ちょっと待て」と横槍を入れ、一度は復帰のために修理を行うことになった。だが結局、修理は断念してしまい何がしたかったのかと突っ込みたくなる。さらには2004年にキーロフの解体が発注されたという情報が流れたが、これは誤報であった。つーか、情報源はどこだ？
現在は北方艦隊の主要港であるセヴェロドヴィンスク市に係留されており、元乗組員と慈善基金によって出来る限るの保守作業が行われている。

2番艦「フルーンゼ」（後にアドミラール・ラーザリェフ（ラザレフ）に改名される）
太平洋艦隊所属であるが1993年に小規模な事故を起こし原子炉が緊急停止される。
で、すぐに再起動されるかと思いきや再起動に必要な艦隊司令官の許可が下りなかった。実は当時のロシア海軍太平洋艦隊は不祥事が相次ぎ、艦隊司令官・司令部要員が頻繁に交代しており誰も気に掛ける暇が無く、所謂「放置プレイ」を受けていたのだ。で、現在に至る。
因みに原子炉の停止後に、自称・環境保護団体「グリーンピース」の幹部が訪れ

「この艦は原子炉の機器が老朽化していて、しかも再起動の手順を知っている専門家が居ない！だから再起動は不可能だ！」

と言ったらしい。
・・・いや、艦隊司令官の許可が下りないだけなんですが。

2009年 9月にロシア国防省次官が“重原子力ロケット巡洋艦戦列復帰プログラムを立案する”と発表した。
その中で「太平洋艦隊に(キーロフ型が)1隻ある事を妥当と考えている」と次官は発言し、2002年のボヤ騒ぎ以来音沙汰の無かったラザレフが本格復帰する可能性が高い。

3番艦「カリーニン」（後にアドミラール・ナヒーモフ（ナヒモフ）に改名）
北方艦隊に所属で現在は近代改装（搭載装備の近代化）のための工事中。
予算不足のため中々近代改装が終わらなかったが、ナヒモフも上記の復帰プログラムにより近い将来改装工事を終え復帰する可能性がある。
尚、ナヒモフは改装によりそれまで主兵装として搭載していた対艦ミサイル「グラニート」から新型の「オーニクス」に換装予定でこれにより従来の20基から40基に対艦ミサイルの搭載数が増えるという。

4番艦「ユーリイ・アンドローポフ」（後にピョートル・ヴィェリーキイ（ヴェリキー）に改名）
北方艦隊所属で現在唯一の稼動艦。
2004年には「核爆発」騒ぎが起こる（当時の海軍総司令官が「ヴェリキーは故障しておりいつ爆発してもおかしくない」と発言したのが発端。但し、後に訂正）が、誤報と判明。
実は当時のヴェリキーの艦長の叔父である元海軍大将（退役大将。元ロシア海軍副総司令官）と非常に不仲であり（退役大将が2003年に発生した退役原潜の事故を巡って当の海軍総司令官を批判した事が原因）、艦長であった甥の経歴に傷を付けあわよくば失脚させようと目論んでいたらしい。
因みに当の海軍総司令官はなんやかんやあって定年を前に解任されている。