ニコ生主富士山滑落事故とは、令和元年にニコニコ生放送配信者が起こした事故である。
令和元年(2019年)10月28日に1人のニコ生配信者(以下、生放送主)が雪が積もっている富士山山頂付近を歩いていた所、「あ、滑る!」と言った後に斜面を滑り落ちていった。その後、配信はストップした。
番組を視聴していた人々が110番通報し、29日朝から山岳救助隊が捜索にあたった。
その生放送主かは不明だが、同月30日(配信から2日後)に7合目付近、標高約3000mのところで遺体が発見された[1]。発見時には性別が不明なほど遺体が損傷していた。
この生放送主は過去にも富士登山をしており、同年5月から少なくとも26回にわたって富士登山の様子をライブ配信していた[2]。
富士山は9月上旬には閉山しており、登山道も道路法第46条の規定により閉鎖されていた。環境省・山梨県・静岡県が中心となって作られた「富士山における適正利用推進協議会」のガイドラインによると、夏山期間以外での富士登山については、
過去には冬の富士山では何度も滑落事故が発生している。2016年11月20日の18歳・65歳の男性が滑落した事故では、富士吉田警察署の井上久副署長が
一気に下まで滑落したと思う。9合目付近の斜面は雪が堅く凍結したアイスバーン状態で、スケートリンクのような感じ。一度スリップしたら止めるのは不可能だ
と述べている[4]。
11月12日、遺体の身元が東京・新宿区の47歳男性であることが判明し、生放送主本人であることが確認された。
この事故が起こった10月28日に富士登山をしていたベテラン登山者もいた。富士スバルライン五合目を8時半に出発し吉田ルートでの登頂を目指したものの、九合目手前まで到着したのが13時40分となり、頂上まで登ったら下山途中に日が暮れてしまうと考えて下山している。
彼の登山記録によればアイゼンの爪痕は残るものの靴跡はまるで残らないとのことであったため、ニコ生で映っていた足跡は前日の登山者によるもののようである。
なお、下山中に下山コースを一人でしゃべりながら登山している人を見かけていたらしい。アイゼンやピッケルなど、雪山登山に必要な装備をしっかりと用意していたベテラン登山者が五合目到着と同時に日が暮れていたことを考えると、装備が不十分な以上、やはり断念していたとしても下山は極めて困難だったと言わざるを得ない。
野口健氏(@kennoguchi0821、アルピニスト)は、同月31日のTwitter上にて、この生放送主の服装について、「ハイカットの登山靴ではなく軽登山靴または運動靴。スパッツなし」「雪山に登るという自覚が全く感じられない」「ノリだけで登ってしまったような印象も」と指摘した。
松本圭司氏(@keizi666、登山学校講師、アプリ制作者)は、同月31日のTwitter上にて、「遭難はなかなか自覚できず、パニックになっていても自覚できない」「視野が狭まり自分の状況を俯瞰できない。これは誰にでも起こりうる」と警鐘を鳴らしている。また、公認会計士で税理士の森井じゅん氏の「お金というよりは承認欲求、かつ中毒性がある。動画の生配信中に視聴者から『危ない』『やめて』などと言われることで、『もっとやらなければ』とより過激になったり、人からの反応が欲しいと中毒性が高まったりするのでは」[6]等、動画配信行為を事故の主因とする説に対し、「たしかにそれも一因ではあるだろうけど本質ではない。日本では1年間に3100人が山で遭難して340人が死ぬんだけど、その殆どが『配信なんかしていない』」と論駁した。
工藤誠志氏(地元・富士宮山岳会の会長)は、同年11月1日、J-CASTニュースの取材に次のような見方を示した。
男性の方が足を滑らせた地点から下山するとすれば、標高2400メートルの富士宮口か、1450メートルの御殿場口か、のいずれかだと思います。でも、夏山の基準で言いましても、富士宮口まで3、4時間、御殿場口まで5時間はかかります。冬山で日没も早いですので、17時には真っ暗になります。コースが分かっていたとしても、明るいうちには着けないでしょうね。
風がありますと、10月でも低体温症になった事例があります。男性が山頂にいたときは、気温がマイナス5度にまで下がっています。指に凍傷ができても動けますが、低体温症になりますと、脳の機能が低下して動けなくなってしまいます。また、昼に溶けた雪が夜に固まり、積もった雪が風で飛ばされ、つるつるのアイスバーンになっており、アイゼンの刃でも少ししか刺さりません。ですから、とても滑りやすくもなっており、冬の富士山で訓練してから、ヒマラヤ登山を目指す人も多いですね。
2020年6月、愚かな死を遂げた人物に贈られる「ダーウィン賞」の20年度の受賞者にこの生放送主が選ばれた[7]。日本人では初の受賞となる。彼は極めて不名誉な形で歴史に名を残す事になってしまった。
ただし、このダーウィン賞の説明文にはいくつかの誤りがある。まず、頂上まであとわずかの地点で滑落したと書かれているが、実際には吉田口・須走口下山道の頂上には到達しており、その後、御鉢巡りで最高峰の剣ヶ峰へ向かう途中、成就岳の横を抜けて伊豆岳付近へ達したところで滑落している。つまり、登頂を焦って滑落したのではなく、「富士登山としては」無事頂上までは到着しているにも関わらず、欲張って最高峰まで行こうとしたときに滑落したのである。(もちろん、最高地点に到達しなければ頂上に達したとは言えないという考えもあるが、登山では頂上として指定されたところに着けばよいという考え方が一般的である。なお彼の場合、そもそも登頂が遅かったため、頂上に到着した時点で引き返していても下山中に日没を迎えてしまい、凍死する可能性が非常に高かった。)
また、スマホを手に持って撮影しながら配信していたのでピッケルを使えなかったように書かれているが、実際にはスマホはポケットに入っており、アクションカメラで撮影をしながら配信をしていた[8]。決してスマホを手に持っていたわけではない。つまり、スマホがあったから滑落時にピッケルを突き立てられなかったのではなく、秋の富士山を舐めていて冬装備を持ってきていなかったからピッケルを突き立てられなかっただけである。
この生放送主がダーウィン賞を受賞したことで、富士山での死亡事故が珍しいと思う人もいるかもしれないが、実際の所そうではない。記録が残っている昭和31年(1956年)から平成25年(2013年)の58年の間に、山梨県側だけで293人が亡くなっており[9]、ここ10年でも山梨県側・静岡県側を併せ、平均して毎年10人程度が亡くなっている。もちろん、閉山中(冬期)の事故死が大半であり、開山期間中(夏期)は0人という年も多いのだが、夏期の遭難事故は冬期よりも多い。この生放送主が死亡した平成31年・令和元年(2019年)には合計8人(うち冬期4人)が死亡している[10]。
掲示板
2765 ななしのよっしん
2023/09/07(木) 02:16:58 ID: vp/CIDsE0B
統べるッ
2766 ななしのよっしん
2023/09/10(日) 15:47:42 ID: t+8U3KAhI4
巨人の火の釜
2767 削除しました
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最終更新:2023/09/27(水) 02:00
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