バルブ(MotoGP)とは、バイクの部品の1つである。
2012年以降のMotoGPは、全てのクラスにおいて4ストロークエンジンが採用されている。4ストロークエンジンを使うバイクの中で話題となるバルブは、以下の2つである。
本記事では、2.について解説する。
まずは、この動画や、このgif画像や、この動画や、この動画を眺めながら、エンジンのことを簡単におさらいしよう。
エンジンとは、回転エネルギーを作り出す装置である。
まず、液体のガソリンを霧(きり)にして、空気と混ぜ合わせて混合気を作る。ガソリンを燃焼爆発させるためには空気の中の酸素が必要だからである。先ほどのgif画像の中で黄色く塗られているのが混合気である。
シリンダーに付いている弁(バルブ valve)がパカッと開いて、混合気をシリンダーの燃焼室に送り込む。このバルブはラッパのような形をしているが、正式にはポペットバルブという。
そしてピストンで混合気を圧縮する。そして、丁度良いタイミングを見計らって、点火プラグ(スパークプラグ)で火花を起こし、ドカンと爆発させる。するとピストンが押される。
ピストンが押されると、ピストンの下に付いたコンロッド(コネクティングロッド)がクランクシャフトをぐるっと回す。これで、→の直線運動が、回転運動に変換される。
クランクシャフトの回転エネルギーは、ギアやチェーンによってリアタイヤまで伝達され、リアタイヤを回転させる。こうして、バイクは進んでいく。
シリンダーの燃焼室でガソリンが燃焼爆発すると、排気ガスが発生する。排気ガスが燃焼室に充満したままでは、次のガソリンの燃焼爆発が上手くいかない。このため、シリンダーに付いている弁(バルブ valve)がパカッと開いて、排気ガスが外に出るようにする。先ほどのgif画像の中で灰色に塗られているのが排気ガスである。
以上のように、バルブとは、エンジンの吸気と排気を担当する部品である。
MotoGPのニュース記事で「エンジンの排気効率を上げるためエギゾーストを新しくしたら最高速が上がった」などと語られることがある(記事)。そこからも想像が付くように、吸気や排気はエンジンの性能に直結する。
つまり、バルブがエンジンの性能を左右することになる。このため、どのようなバルブが採用されているか、というのは、MotoGPでしばしば話題になる。
2020年現在のMotoGP最大排気量クラスは、すべてのマシンが4バルブとなっている。4バルブとは、1つのシリンダー(気筒)につき、吸気のバルブが2つ、排気のバルブが2つ付いていることをいう。
2020年現在のMotoGP最大排気量クラスは、すべてのマシンが4気筒である。このためすべてのマシンに16個のバルブが付いていることになる。
このgif画像をもう一度よく見てみよう。
バルブが、卵のような形のカムで押されてパカッと開き、一定のリズムで吸気・排気を行っていることがわかる。
カム(cam)とは、回転運動を直線運動に変換する部品である。ぐるぐると回転運動するカムシャフトに、卵のような形のカムを取り付ければ、一定の周期で直線方向に押す動きを作り出すことができる。
エンジンのバルブを押して開ける動きは、カムによって作り出される、というのが、MotoGPで使われるバイクの共通点である。最大排気量クラスの6メーカーのマシンも、Moto2クラスのトライアンフエンジンも、Moto3クラスのKTMエンジンやホンダエンジンも、「カムでバルブを押して開ける」という点で共通している。
一方、バルブを戻して閉じる動きをどのように作り出すかは、3つの種類に分かれている。スプリングバルブ、ニューマチックバルブ、デスモドロミックバルブの3種類があり、それらについては本記事で後述する。
ちなみに、カムを取り付けているカムシャフトを回転させるエネルギーは、エンジンの主軸であるクランクシャフトから伝導させてくる。ゴムなどでできているカムベルト(タイミングベルト)か、金属でできているカムチェーン(タイミングチェーン)か、金属でできているギアをずらりと並べたカムギアトレインのどれかの方法を選び、回転エネルギーを伝導させる。
エンジンの動きを解説するこの動画やこの動画では、カムベルトを採用したエンジンを映している。
MotoGP最大排気量クラスのヤマハYZR-M1は、2004年までは回転数が低めだったのでカムチェーン、2005年からはカムギアトレインを採用した(ヤマハワークス内情本150~152ページ)。
こちらの動画は、BMWのS1000RRのバルブをシリンダー内部のピストンの視点から見た図である。このバイクは4バルブと公表されているが、その通りに、シリンダー1つに4つのバルブが付いている。
14000rpmにエンジンを回したときのバルブは、ざっと、このようになる。ちなみにMoto3クラスのエンジンは最高回転数13500rpmと運営に決められており、Moto2クラスは最高回転数14500rpmとメーカーが決めており(記事)、最大排気量クラスは最高回転数18000rpmぐらいとされている。
14000rpmにエンジンを回しているということは、エンジンの中のクランクシャフトが14000rpmで回転していることを意味する。クランクシャフトが2回転する間にバルブが1往復するので(このgif動画を見ると確認できる)、14000rpm、つまり1分間に14000回転するエンジンのバルブは、1分間に7000回往復していることになる。7000÷60=116なので、1秒に116回往復している。
こちらの動画は、BMWのS1000RRのシリンダーを横から見た図である。バルブが卵形のカムで押され、スプリング(バネ)で元に戻っている様子がわかる。
14200rpmにエンジンを回したときのバルブは、ざっと、このようになる。クランクシャフト14200rpmなのでカムシャフトはその半分の7100rpm、カムシャフトに付いているカムで押されるバルブは1分間に7100回往復する。7100÷60=118なので、1秒に118回往復している。
MotoGP最大排気量クラスでは、たまに、マシンのエンジンが壊れることがある。
メーカーは、エンジン故障の原因を明言しないことが多いが、原因を公表することもある。
メーカーが「バルブが壊れた」と明言したのは、次のケースである。
鋼でできたバネの反発力で閉じるバルブをスプリングバルブ(spring valve)という。
このgif画像でも、スプリングバルブの絵になっている。
なんといっても、バネを1ヶ置けばよくて、部品点数が少なくて済むのが最大の長所である。
生産のコストを下げることができるので、世界中のバイクメーカーから市販されている公道向け車両のほとんどに、スプリングバルブが採用されている。
唯一、ドゥカティだけは、公道向け市販車にもデスモドロミックバルブを採用しているのだが、それ以外の全メーカーは公道向け市販車にスプリングバルブを採用していると考えておいてよい。
エンジンが高い回転数で回り、バルブが高速の往復運動をするようになると、バネが振動(共振)を起こす。その振動(共振)により、バルブが上手く開かなくなったり、閉じるはずが完全に閉じなくなったりして、バルブの開閉に異常が生じる。これをバルブサージング(valve surging)という。
スプリングバルブだと、どうしても高回転の領域でバルブサージングが起きやすい。
人間社会において鋼を作る技術が年々向上しており、スプリングバルブのバネの品質も向上しているのだが、それでもやはり、高回転の領域においてバルブサージングが起きてしまうのが現状である。
それなのに、MotoGP最大排気量クラスは、どんどん高回転・高出力・大型馬力の傾向が強まっている。このため、スプリングバルブを捨ててニューマチックバルブに流れるメーカーが続出していった。
MotoGP最大排気量クラスでは、2020年現在、スプリングバルブを採用するメーカーが存在しない。このクラスは世間に対する露出度がもっとも高くて広告効果が高いので、各メーカーは大量の予算をつぎ込むことができる。安価で性能の劣るスプリングバルブを我慢して使うことがない。
Moto2クラスやMoto3クラスでは、全メーカーがスプリングバルブを使っている。この2クラスは世間に対する露出度が低く、広告効果が低く、参加チームの予算も少ない。参加チームの金銭事情に配慮するため、安価なスプリングバルブばかりが使われている。
圧縮空気(圧搾空気)を使って閉じるバルブをニューマチックバルブ(pneumatic valve)という。
英語を見るとついつい「ぷにゅーまちっく」と読みたくなるが、先端のpは黙字なので発音しない。
日常生活で最も身近に存在する圧縮空気は、自転車の空気入れ機械である(画像)。ボタンを押すと自転車のタイヤに空気を入れてくれる。
圧縮空気の空気圧で機械を作動させる例は多い。最も身近なのは、バスのドアである。空気圧でドアを閉め、「プシュ~」と音を立てて空気圧を緩めてドアを開ける(動画1、動画2)。
圧縮空気を作り出す機械をコンプレッサーという(画像)。製造業の工場には、必ずと言っていいほどコンプレッサーがあり、コンプレッサーから工場の色んな場所へ管が伸びており、圧縮空気を色んな場所で使えるようになっている。工場作業員は、圧縮空気を掃除に使うことが多い。
この動画やこの動画では、ニューマチックバルブの断面図を描いてくれている。
F1では「マシンがピットインしたとき、ニューマチックバルブの空気を補充した」ということをしばしばいう(記事)。
総じていうと、エンジンの高回転に対応しやすいというのが長所となっている。
スプリングバルブではエンジン高回転時に振動(共振)でバルブサージングを起こしやすいのだが、ニューマチックバルブならエンジン高回転時もバルブサージングが起こりにくい。
圧縮空気を使っているので軽量化が達成できる、というのも長所である。スプリングバルブは鋼でできたバネなので、重い。エンジンに慣れていないと「エンジンのバルブを押すバネなんて、小さくて軽いじゃないか」と思いがちだが、エンジンが高回転で回るとき、バネの重さというのは大きく響くのである。エンジンが14000rpmで回るとバルブが1分間に7000回、1秒に116回往復する。その往復エネルギーで、小さいはずのバネの重量が増幅され、マシンの動きに影響を与えるほどの重さになってしまう。エンジンを改造する人の中には、「スプリングバルブのバネを1gでも軽いものに交換すると効果がある」と語る人がいる(記事)。
スプリングバルブのバネは、「走行中に金属が変質してバルブを押す力が変わる」などという超常現象が発生しない。ところが、ニューマチックバルブなら、走行中に空気圧を変化させてバルブを押す力を変えることが可能である。「低回転時に空気圧をこれだけにして、高回転時に空気圧をこれだけにする」という細かい設定変更が可能であり、そうした変更をコンピューター制御(電子制御)で行うことが可能である。
スプリングバルブよりもバルブを押し戻す力が強いので、バルブを開けるときに使うカムの形状を過激なものに変更できる。カムの形状をカムプロファイル(カムプロフィール)というのだが、作用角が狭くて尖ったような形をしていて、バルブがいきなりガバッと開くカムプロファイルを使うことができる。すると、エンジンの吸気や排気の量が大きくなり、高回転の領域でより力強いエンジンになる。あるいは、カムの長径を長くして、リフト量そのものを大きくしたカムプロファイルを使うことができる。その場合でも、エンジンの吸気や排気の量が大きくなり、高回転の領域でより力強いエンジンになる(解説記事)。
※この項の参考資料・・・RACERSのvol.40 42ページ、Moto公式サイト記事1
とても難しくて、高価な技術である。
バルブを押し戻す空気圧を発生させる装置をどのように置くかが問題である。高圧の空気圧を作る装置なので大きなものとなりやすい。四輪のF1の車両ならそういうものを置くスペースがあるが、オートバイはスペースが狭い。オートバイメーカーは、高額のお金を掛けて技術開発をして、高圧の空気圧を作る装置を小型軽量化しなければならない。
公道向け市販車にフィードバックするのは不可能であると、技術者にしばしば断言される(記事)。やはり、高圧の空気圧を作る装置を小型軽量化するのが大変な高コストになる。四輪であれ、二輪であれ、「レースで培った技術が市販車製造に役立ち、世のため人のためになる」というのが技術者達にとって1つのモチベーションになるのだが、そういうモチベーションが刺激されない。
F1に参戦するルノーが、1986年に採用を始めた。F1に参戦していたホンダは1992年にニューマチックバルブの採用を始めた。同じくF1に参戦していたヤマハは1994年にニューマチックバルブの採用を始めた(記事)。
MotoGPで初めてニューマチックバルブを採用したのは、アプリリアワークスである。2002年ごろのアプリリアはF1に技術を提供する企業と仲良くしていたので、2002年から登場させたRS3 CUBE(キューブ)という車両にF1技術をたっぷり盛り込んだのだが、そのうちの1つがニューマチックバルブだった。アプリリアのニューマチックバルブ搭載マシンは、ジジ・ダッリーニャの手をもってしても成績が伸びなかった。
2003年日本GPで事故が起こり、「バイクの最高速を落とそう」という議論が広まり、2006年まで990ccだった排気量を2007年から800ccに減らすことに決まった。
「800ccでは、高回転・高出力の戦いになる」と予測したスズキワークスは、2006年から当時走らせていたGSV-Rにニューマチックバルブを搭載するようになった。その先行開発が実を結び、2007年のスズキワークスは割と好成績を残しており、フランスGPで久々の優勝を勝ち取っている(成績表)。
2007年になって大躍進したのがドゥカティワークスだった。ケーシー・ストーナーが18戦で10勝を収めるという爆発的大成功を収めた(成績表)。ケーシーが乗るデスモセディチは最高速が速く、日本メーカー達を戦慄させた。
2007年開幕戦のカタールGPで、ケーシー・ストーナーの駆るデスモセディチは最高速で10kmほど上回っていて、直線で軽々と日本車を抜いていた。それを見たホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキの日本人技術者達が、珍しいことに、メーカーの垣根を越えて何やら喋り合っていた(ヤマハワークス内情本248ページ)。
「スプリングバルブのままではデスモセディチに勝てない」というのがホンダとヤマハとカワサキの到達した結論で、2007年になって3社ともニューマチックバルブを開発し始めた。
ヤマハワークスでニューマチックバルブを開発したのは、F1エンジンの製造に関わってきた辻幸一である。古沢政生に呼ばれて、2003年10月1日からMotoGPの世界にやってきた人である。
2007年9月のサンマリノGPで、初めてヤマハワークスがニューマチックバルブのエンジンを投入した。まだ完成度が低く、辻幸一も「壊れるかもしれない」と言っていたが、この年のヤマハワークスとヴァレンティーノ・ロッシはケーシー・ストーナーに後れを取っていたので、破れかぶれで使った。案の定、レース中にエンジンが壊れ(動画)、ヴァレンティーノは定例の囲み記者会見を拒否してサーキットを後にした(ヤマハワークス内情本250ページ)。このように、ニューマチックバルブの採用は、苦い経験を伴うのである。
2007年にカワサキワークス、2007年終盤からヤマハワークス、2008年第8戦からレプソルホンダ、と次々にニューマチックバルブを導入していった。
2020年のMotoGP最大排気量クラスには6メーカーが参戦しているが、ドゥカティを除く5メーカーのすべてが、ニューマチックバルブを採用している。
カムを使って閉じるバルブをデスモドロミックバルブ(desmodromic valve)という。
カムを使ってバルブを開き、カムを使ってバルブを閉じる。両方の動作にカムという機械的要素をつかっている。
スプリングバルブやニューマチックバルブではバネや空気の反発力でバルブを押しているが、デスモドロミックバルブは機械の力で強制的にバルブを押している。このため強制開閉機構と呼ばれる。
desmodromicは造語で、ギリシア語のdesmosと、ギリシア語のdromicを合わせている。desmosは束縛という意味で(記事)、dromicは競走という意味である(記事)。
エンジンの主軸であるクランクシャフトから、ベルトまたはチェーンまたはギアトレインで回転エネルギーを伝達し、バルブの近くで2本のカムシャフトを回す。吸気のバルブにカムシャフトを1つ、排気のバルブにカムシャフトを1つ、合計2本のカムシャフトを回す(いわゆるDOHCである)。
吸気のバルブのカムシャフト1本に、2つのカムを付ける。1つは開くためのカムで、オープンカムという。1つは閉じるためのカムで、クローズカムという。どちらも、ロッカーアームを押す。
この動画やこの動画で、デスモドロミックバルブの様子がわかる。オープンカムが押すロッカーアームと、クローズカムが押すロッカーアームは、逆の方向に取り付けられる。
エンジンが高回転するときも、バルブの開閉をとても正確に行うことができる。
エンジンが高回転するときというと、長い直線のなかば以降である。MotoGP最大排気量クラスにおいて、ドゥカティのマシン(デスモセディチ)が、長い直線において他のメーカーのマシンをグーンと引き離すことができるのは、デスモドロミックバルブのおかげである。
スプリングバルブに比べて部品点数が多く、費用がかかる。ニューマチックバルブほど高コストではないが、スプリングバルブよりは高コストである。
また、スプリングバルブに比べて整備の手間がかかる。スプリングバルブならバルブを閉じる側のオープンカムだけを考えれば良いが、デスモドロミックバルブはオープンカムだけでなくバルブを閉じる側のクローズカムの調整を行わねばならず、カム関連の手間が2倍に増える。
大昔の鋼は性質が悪く、鋼で作られるバネの性質が悪かった。エンジンにスプリングバルブを採用して高回転にすると、バネが破損してしまうことが多かった。
高回転でエンジンを回しても大丈夫であるようなバルブというと、デスモドロミックバルブだった。20世紀の前半では、色んなメーカーがデスモドロミックバルブのエンジンを作った。
鋼の製造方法が次第に向上し、鋼で作られるバネの品質が向上すると、スプリングバルブでできたエンジンを高回転で回しても、バネが破損しなくなった。こうして、デスモドロミックバルブを作るメーカーは減っていった。
しかし、ただ1社だけ、好んでデスモドロミックバルブのエンジンを作り続けるメーカーがあった。それが、ドゥカティである。ドゥカティは、公道向け市販車にデスモドロミックバルブを採用し続けている。
ドゥカティは2003年からMotoGP最大排気量クラスに参戦するようになったが、そのときも、やはりデスモドロミックバルブを採用した。2020年現在も、当然のように、デスモドロミックバルブを採用している。
ドゥカティワークス首脳のジジ・ダッリーニャは、「Moto3クラスに参戦するのは、良い考えだ」と言うことがある。ホンダやKTMがMoto3クラスに参戦して若手ライダーを囲い込んでいるのを見て、真似したいという気持ちが起こっているようである。そのとき、「デスモドロミックバルブでMoto3クラスのマシンを作ることになるだろう」と喋っている(記事)。Moto3クラスの規則でニューマチックバルブが禁止されているが、デスモドロミックバルブは禁止されていない。
オートバイのエンジンは、カムを使ってバルブを開けるという点で共通している。
カムを回すカムシャフトの本数や置き場所が異なることがある。本項目では、代表的な方法を3つ紹介する。
DOHCは、Double Over Head Camshaft(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)のことである。
エンジンの主軸であるクランクシャフトから、ベルトまたはチェーンまたはギアトレインで回転エネルギーを伝達し、バルブの近くで2本のカムシャフトを回す。吸気のバルブにカムシャフトを1つ、排気のバルブにカムシャフトを1つ、合計2本のカムシャフトを回す。
このgif動画では、DOHCが描かれている。画像検索すると、DOHCの様子がわかる。
高回転に対応しやすいのが長所である。
MotoGPで採用されているのはDOHCである。最大排気量クラスのマシンも、Moto3クラスのマシンも、ことごくDOHCを採用している。
SOHCは、Single Over Head Camshaft(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)のことである。
エンジンの主軸であるクランクシャフトから、ベルトまたはチェーンまたはギアトレインで回転エネルギーを伝達し、バルブの近くで1本のカムシャフトを回す。1本のカムシャフトには吸気バルブ向けのカムと、排気バルブ向けのカムを付ける。そして、カムはバルブを直接押すのではなく、ロッカーアームを押す。ロッカーアームがバルブを押して、バルブを開ける。
画像検索すると、SOHCの様子がわかる。
カムシャフトが1本で済むため、カムシャフト2本のDOHCに比べて燃費が良い。DOHCほどではないが、高回転に対応できる。
OHVは、 Over Head Valve(オーバー・ヘッド・バルブ)のことである。
エンジンの主軸であるクランクシャフトに非常に近いところ、つまりバルブから遠く離れたところに、1本のカムシャフトを回す。1本のカムシャフトには吸気バルブ向けのカムと、排気バルブ向けのカムを付ける。そして、カムからプッシュロッドという長い棒が伸びていて、ロッカーアームを押す。ロッカーアームがバルブを押して、バルブを開ける。
高回転に対応しにくいのが欠点である。
オートバイのエンジンは、カムを使ってバルブを開けるという点で共通している。
カムによるバルブの押し方が異なることがある。本項目では、代表的な例を3つ紹介する。
ロッカーアーム式は、カムに押されたロッカーアームがバルブの端を押す方法である。
SOHCとOHVはロッカーアーム式である。
直打式(直押し式)というのは、カムが直接バルブの端を叩く方法である。
この写真は、典型的な直打式(直押し式)である。卵形のカムと接する部分が円柱になっている。ちなみにこの円柱をバルブリフターとかタペットという。
DOHC(カムシャフト2本方式)だけがこの方式を採用できる。
かつては、MotoGP最大排気量クラスにおいても、この方式が主流だった。
フィンガーフォロワー式(finger follower)というのは、カムとバルブの端にフィンガーフォロワーを挟む方式である。
フィンガーフォロワーとは、ロッカーアームの一種である。このため「フィンガーフォロワ-・ロッカーアーム」が正式名称である。
この記事の画像で、緑色に塗られている部品がフィンガーフォロワーである。
近年のMotoGP最大排気量クラスにおいて、この方式が主流になっている。MotoGP最大排気量クラスから技術をフィードバックするスポーツ市販車でも、この方式を採用する例が多い。
先ほど紹介したこの動画は、BMWのS1000RRという最先端スポーツ市販車のバルブを写すものだが、フィンガーフォロワー式になっている。
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最終更新:2024/05/02(木) 21:00
最終更新:2024/05/02(木) 21:00
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