ユーバーリンゲン空中衝突事故とは、2002年7月1日に起こった空中衝突事故である。
ロシアの旅客機とバーレーンの貨物機が、ドイツ南部の都市ユーバーリンゲン上空で空中衝突した事故。「TCAS」(空中衝突防止装置)の指示と管制官の指示が食い違った場合、どちらに従うのかのルールが存在しなかったために発生した事故である。その上、数年後に事故の一因となった管制官が遺族に殺害されるという悲劇の連鎖を招いた。
空中衝突防止装置、通称TCAS(ティーキャス)はその名の通り、空中衝突を防ぐための装置である。このままでは空中衝突の恐れがあるとレーダーが検知すると、片方に上昇を、もう片方に下降を指示することで衝突を回避するシステムである。
TCAS自体は基本的に設置が義務付けられているが、設置基準は国ごとにバラバラで、小型機などにはついていなかったりする。その為TCASの普及後も、空中衝突の可能性に気付いた管制官が地上から上昇or降下を指示する事も普通にあった。
そして、TCASと管制官の指示が食い違った場合、どちらに従うのか……そのルールは当時まだ決まっていなかった。
事故を起こしたのはロシアのバシキール航空2937便(乗員4人乗客60人)と、バーレーンのDHL611便(乗員2人、定期貨物便)だった。バシキール便はチャーター機で、成績優秀な小中学生達がその褒賞としてスペイン旅行に招かれ搭乗していた。事故発生直前、2機は上空3万6千フィートを飛行していた(この高度で飛ぶと色々と効率が良い)。
ドイツ南部のユーバーリンゲン周辺はスイスの「スカイガイド社」が管制を担当していた。だがその管制は上空だけでなく空港への進入管制も兼ねており、その上本来は2人態勢で管制を行うべきところ1人が休憩に入っていたため(違反行為だが会社からは黙認されていた)管制官ピーター・ニールセンが1人で複数の業務に忙殺されていた。更にこの時、接近警報装置のメンテナンスが行われていたため、管制のアラームが鳴らないというアクシデントもあった。
こうした状況のため、地上の管制官は空港の管制にかかり切りになって、空中衝突の危険性に気付くのが遅れてしまった。衝突まで1分を切ったとき、ようやく危険に気付いた管制官はロシア機に降下を指示した。ロシア機はバーレーン機を目視していた為、特に疑問を抱くことなく降下を始めた。その直後、TCASが作動してロシア機には上昇、バーレーン機には降下を指示する警報が鳴った。ロシア機は管制が降下を、TCASが上昇を指示するという状態になったため、管制に従って降下した。更にここで管制がロシア機に対し「2時の方角より別機体が接近する」という誤った情報を伝えてしまったため(実際は10時の方角)、ロシア機はバーレーン機を見失ってしまう。この結果、双方が降下したために空中衝突が発生し、乗員乗客71人全員が死亡した。
実はこの前年2001年に「日本航空機駿河湾上空ニアミス事故」という同様の事故が発生していた。この際は寸前で衝突せずに済んだが、両機合わせて677人の命が危険にさらされたため(もし衝突していたら世界最悪の事故となっていた)、日本は国際民間航空機関(ICAO)にこのような管制とTCASの食い違いが起こった場合のルール作りを要求していた。それにも関わらず、この教訓を活かさずに1年以上ルール作りを放置した結果、遂に死亡事故が発生してしまったのである。これを受けてようやくICAOが動き、「食い違いが起こったらTCASに従う」というルールがようやく定められたのであった。
事故を起こしてしまった管制官ピーター・ニールセン(デンマーク人)は辞職し、名前も変えて家族と暮らしていた。
一方、この事故で妻と2人の子供を亡くしたロシア人建築士ヴィタリー・カロエフは心神を病み、一日のほとんどを家族の墓の前で過ごしていたという。そして探偵を雇いニールセンの居場所を突き止めると、2004年2月24日、彼の家に乗り込み、死んだ家族の写真を見せて謝罪を要求したが、謝罪を拒まれ写真も投げ捨てられた為、ニールセンを刺殺した。ニールセン、享年38歳。
カロエフはスイスで刑期を終えてロシアに帰国すると、殺人犯にも関わらず英雄として称賛され、ロシア連邦内の一国・北オセチア共和国の建設副大臣のポストが与えられたという(2016年引退)。うーんこのロシアっぷり……。
なお、2017年にこの事故をモデルとした映画「アフターマス」が製作された。アメリカを舞台として、主演はカロエフをモデルにした人物でアーノルド・シュワルツェネッガーが演じ、ニールセンをモデルにした人物をスクート・マクネイリーが演じた。ただ評論家からの評価は凡作止まりであり、当のカロエフも事実と異なるとして批判している。
大人の事情で載せられないのかよ、騙された!
掲示板
12 ななしのよっしん
2025/08/07(木) 17:59:25 ID: Z/Y81SQGq4
>>6
事故の原因となった人を刺殺したまでは同情されるだろうがそれを理由にポストを与えれば絶対批判が殺到するぞ
英語版のWikipediaに当人の記事があったけど、Googleの翻訳だから正確ではないが、どうもロシアはこういうお国柄らしい
減刑のために嘘の証言をされないため、正しい証言を元に新たな事故を未然に防ぐために当事者を極刑にかけないものなのに
ロシア人の多くはこの考えを理解できないのだろうか
> ロシアの航空事故犠牲者の遺族支援団体のメンバーであるヴィタリー・ユスコ氏は、「カロエフ氏は英雄だ。航空事故を起こした罪人はしばしば処罰されない。
>このような極端な処罰こそが、彼らに罪の責任を負わせる唯一の方法だ」と述べた。
>多くのロシア人もユスコ氏と同じ意見で、カロエフ氏は「家族の死を復讐する英雄的な行為」をしたと信じているようだ。
13 ななしのよっしん
2025/08/19(火) 02:47:39 ID: RbZYj1AmoM
管制官は死ぬまで塀の中に入っていた方が幸せだったのかもな。
なまじ自由の身でいたばかりに遺族の刃に斃れる羽目になったんだし。
遺族の目の前で死んだ人の写真をはたき落とすような者には似合いの末路ともいえるが。
14 ななしのよっしん
2025/09/02(火) 23:32:44 ID: 8gjVMEnZQR
※13
まだこんなこと言う奴がいることが驚きだわ
悪いのは上層部やICAOだということが理解できんとか
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/16(火) 08:00
最終更新:2025/12/16(火) 08:00
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