ドム(MS-09 DOM)とは、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するジオン公国軍の重モビルスーツ(MS)の名称である。
機体設定
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一年戦争においてジオン公国軍は3度の地球降下作戦を皮切りに、主に北米地区(キャリフォルニアベース)から地上用MS部隊を地球各地域へ展開していった。
その拡大する戦局の中で、従来のMSを小隊規模で展開する際、歩行するザクⅡ等ではその進撃速度は遅く、かといってわざわざガウやファットアンクル等の輸送機を使用する事は配備数の問題もあり非効率甚だしく、作戦一つにかけるコストも馬鹿にならなかった。そこで、脚部の熱核ホバー推進によるMSの浮上走行が考案された。この計画から開発されたのが本機ドムである。
本機の登場によって、ジオン公国軍のMS単体での機動力、移動範囲は大幅にアップした。本機の最高速度は時速381km/hにもなり、高速戦闘機には劣るもののザクⅡの最高歩行速度80~100km/hの3倍以上であった。陸戦兵器としては破格の移動速度を誇り、実戦においてもガンダムのビームライフルを回避するなど、対MS戦における機動性能の向上にも一役買っていた。
加えて、その移動方法ゆえに当時モノコック構造を採用していたMSの課題であった、膝や踝の関節部分にかかる負担は、ザクやグフよりも軽減されたと言われる。
もっともこれが採用されたのは、現実にはアニメの原画製作時の労力・コスト削減の為だとか・・・(グフがオデッサで搭乗したドダイYSもこれと同じ理由である)
武装はジャイアント・バズ、ヒート・サーベルを基本とし各種武器を運用可能。元々は重量軽減のためにビーム兵器を搭載する予定だったが、開発の遅れからジャイアント・バズに変更された。シールドは空気抵抗を増やして高速移動の妨げになる事から装備が見送られた。代わりに装甲を厚くして重モビルスーツにする対策を施した。固定武装として胴体に拡散ビーム砲を装備。しかし技術的な問題から威力を持つほどの出力を得られず、敵MSに対する目くらましとして活用された。なお、リック・ドムⅡでは改良され必要十分な威力を持つに至った。
余談ではあるが、ドム系のヒート・サーベルは発熱効率が非常に高く溶断能力もかなりのものであるが、その代わりに使い捨てとなっている。なお、シールドは基本的に装備しないが前線では画像のようにザクの物を携行する様が多々見られた他、バズーカより取り回しと汎用性の高いマシンガンを装備した機体も多かった。
ちなみに本機の機体色は黒い三連星のカラーリングをそのまま頂いている。これはランバ・ラルのグフと同じように、エースパイロットに肖るジオンの伝統である。(実際のところ最初に登場したものをそのまま使い回しただけだが、大人の事情なのであんまり言わないであげよう)
一年戦争では
0079年6月4日、ツィマット社において試作一号機が開発される。軍から派遣されてきたフレデリック・クランペリー大佐が性能テストに参加。その性能からザクをも上回る期待が寄せられたという。7月には正式採用され、各拠点で生産開始、同月31日には次期主力機の座を争うコンペが行われ、宇宙用のリック・ドムが、高機動ザクを破って採用された。ザクⅡ後期型の生産ラインはリック・ドムに変更され、9月には量産体制が整ったとされる。
陸戦において戦車の最高速を上回る高い機動性もさることながら、防御力も高い部類に入る。走攻守に優れた、非常に高性能な機体であったといえる。連邦軍は「スカート付き」と呼んでドムを警戒していた。強力な機体ではあったが、量産開始が戦争中期なのとコストの高さが祟って地上への配備がなかなか進まず。オデッサ防衛戦やジャブロー攻撃には何機か参加していたようだが、数は少なかった。オーストラリア戦線に至っては、遂に1機も配備されなかった(出現したのはマッチモニードが北米から持ち込んだ機体のみ)。
なお大戦後期は戦局が宇宙に移行したこともあり、本機の熱核ジェット・エンジンを熱核ロケット・エンジンに換装し宇宙用とした、MS-09R リック・ドムが投入されている。ゲルググの配備ままならない大戦末期においても、ジオンの宇宙用主力MSとして幅広く使用されていた。このリック・ドムの推進関係には、EMS-04 ヅダに採用された木星エンジンの発展系である「土星エンジン」が用いられている。
機体スペック
※カッコ内のデータはリック・ドムのもの
ドム系MSの一覧
ここではドムの試作機・後継機などを説明します。他にもあったらどんどん追加・訂正お願いします。
- YMS-09 プロトタイプドム
- 『MSV』に登場。ドムの試作機。まだ頭部の動力パイプが露出している。フレデリック・クランベリーが搭乗し、一説には時速381km/hで5時間の走行に耐えたとも。
- YMS-09D ドム・トロピカルテストタイプ
- 『MSV』に登場。YMS-09をベースに、熱帯・砂漠戦用に改修した機体。ドムのロールアウト後に再びテストが行われたという妙な経歴を持つ。
- ロイ・グリンウッドが搭乗。
- YMS-09J ドム高速実験型
- 『MSV-R』に登場。ドムのロールアウト後にホバリング性能の向上を目指して改修された試作実験機。『ザ・トラブルメーカーズ』ではパートナー役の機体を担当。
- MS-09 ドム寒冷地仕様
- 『MSV-R』に登場。ドムの初期生産型をベースに、人工雪を噴射する特殊バックパックを装備した機体。
- MS-09K-1 ドム・キャノン単砲仕様
- 『戦場の絆』などに登場。ドムの右肩にキャノン砲を装備した機体。頭部の動力パイプが露出している点や胴体の形状から、プロトタイプドムを改修した機体と思われる。
- MS-09K-2 ドム・キャノン複砲仕様
- 『戦場の絆』などに登場。ドム・キャノンのキャノン砲を2つに増やした機体。…だがキャノン砲は右肩に連続して付いている。両肩に1門ずつ装備するという発想はなかったのか。
- MS-09R リック・ドム
- 熱核ジェット・エンジンを熱核ロケット・エンジンに換装し、ゲルググの不在を補う存在として急遽配備された機体。宇宙用になっただけでドムとは大差ないが、姿勢制御スラスターが増設されている。
- 本機の開発前に宇宙用高機動試験型ザクⅡで推進器のテストが行われている。高機動型ザクⅡR-2型と採用を争ったが、ビーム兵器はほぼ使用できないもののドムのフレームが流用できることによるコスト面や、かつドムの存在により信頼性も獲得していた本機が採用された。
- ア・バオア・クー戦ではゲルググだけでなく本機にも多くの学徒兵が搭乗した。
- YMS-09R-2 プロトタイプリック・ドムⅡ
- 『0083』に登場。リック・ドムⅡのプロトタイプでありドムトローペンによく似た形状をしている。
- この機体は、かねてよりドム・フュンフではないかといわれていたグワデン配備のドムであるがBD-BOX収録の『宇宙の蜉蝣2』において別の機体であることが判明した。
- MS-09R-2 リック・ドムⅡ
- 『0080』に登場。「Ⅱ」は「ツヴァイ」と読む。統合整備計画に基づきリック・ドムを全面改修した機体。推進力の強化とそれに合わせたプロペラントタンクの増設、胸部拡散ビームの威力強化、球状のモノアイレールによる視野拡大、改良型ジャイアントバズの装備などを行い、基本的なスペックの底上げを図っている。
- 映像作品では黒と紫の通常カラーやコロニー内仕様のグリーンカラーのものが確認されている。
- 『0083』ではヒートサーベルを追加装備し、宇宙戦の主力機として多数参戦。
- MS-09R4・MS-09RN シュネー・ヴァイス
- 漫画『機動戦士ガンダムC.D.A若き彗星の肖像』に登場。アクシズが開発したNT用の試験機。後継機にトゥッシェ・シュヴァルツが存在する。
- MS-09S ドワス
- リック・ドムの最終生産型で、機動力が強化されている。プラモデルの説明書に後ろ姿と頭部が描かれているのみなので詳細は不明だが、実戦に参加せずに戦後はリック・ディアスの開発母体になったと言われている。
- MS-09F ドム・フュンフ
- 各地で設定が語られつつ、結局どういう機体なのかがはっきりしていない謎のドム。『0083』序盤に登場するグワデンの赤いドムだとか言われたり(設定が確定したためこの説は否定された)、素のドムに近い姿でゲームに登場したりと地味に名前の出る機会は少なくない。
- 出てきた設定をまとめると宇宙も地上も行ける汎用ドム的な予想も立つが、未だ詳細は語られていない。
- MS-09F/TROP ドム・トローペン
- 『0083』に登場。ドム・フュンフの熱帯・砂漠地専用機。
- トロピカルテストタイプにより得られたデータを使用しつつ、脚部の吸気口に防塵フィルターを設ける、頭頂部のセンサー追加など改良が施され、そして名前の言語も変わった。スカートアーマーには様々なオプションを装備出来る。
- MS-09F/Bn ドム・バインニヒツ
- 『Gジェネレーション ギャザービート』に登場。ドム・フュンフの改修機。下半身は大型のスラスターになっており機動性を大幅に強化した機体。バインニヒツとはドイツ語で「足無し」の意味。
- MS-09F/Gb ドム・グロウスバイル
- 『Gジェネレーション ギャザービート』に登場。ドム・フュンフの改修機。全長に匹敵する巨大な大型ヒート・ソードを装備し格闘性能を強化した機体。グロウスバイルとはドイツ語で「大ナタ」の意味。
- MS-09F/Br ドム・バラッジ
- 『ブレイジングシャドウ』に登場。ドム・フュンフの改修機。異様なまでに巨大化したスカートアーマーとTOTOカニンガム社製のXGC84-D5J ガトリングキャノンが特徴。
- MS-09G ドワッジ
- 『ZZ』及び『UC』に登場。陸戦機たるドムの最終生産型。放熱対策のパイプ露出、脚部へのプロペラントタンク追加など施している。一年戦争後コクピットをリニア・シート化、装甲に一部ガンダリウム合金を使用するなど部分的に改造を施た機体も存在した。
- MS-09H ドワッジ改
- 『ZZ』に登場。上記G型の改修機で、主に指揮官・エースパイロット向けにチューンしたハイエンド機。肩部にスラスターを増設する等の改修が行われている。その中でもロンメル中佐の機体はビームカノンを標準で装備するなどさらに強化されている。
- MS-10 ペズン・ドワッジ
- 『MS-X』に登場。ペズン計画により開発される予定だったリック・ドムの後継機である突撃型MS。ドムの改良型が「ドワッジ」の名称が付くことからこの名を使いペズン・ドワッジという名になっている。
- YMS-08A 高機動型試作機
- 『MSV』に登場。ツィマッド社製のザクJ型後継機。プロトタイプ・グフの競作機だったが、性能が不足していたことが原因で採用が見送られ、後にこれまでの試作機のデータを基にドム試作実験機が開発された。
- YMS-08B ドム試作実験機
- 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD』に登場。この機体とYMS-08Aから得られたデータをもとにプロトタイプドムが開発された。
- 機体各所にザクとグフのパーツが流用されておりグフタイプの胸部の地上仕様と、ザクタイプの胸部の宇宙仕様の2種類が存在し、MSとしては初のビーム兵器であるビームバズーカを装備している。
- AMX-009 ドライセン
- 『ZZ』『UC』で登場したドムの後継機。アクシズによる設計で、ドムの直系としては最後の機体となる。
- 陸戦・ホバーによる射撃戦を主眼にしたドムのスタイルからビーム・ランサーやトライブレードなど格闘戦に主眼を置いた装備になっており、SFSをメインにした汎用機になっている。
- UC0088の第一次ネオ・ジオン戦争後は、『袖付き』の所属になり腕部にエングレービングを施されている。なお、ホバーが廃されているが宇宙、地上どちらでも運用できるようにするためには致し方ないこと。
- OMS-09RF RFドム
- 『機動戦士ガンダムF90』、『機動戦士ガンダムF91フォーミュラー戦記0122』に登場。
- オールズモビルが過去のジオンMSを最新技術で再現した機体の一つ。武装もビーム中心ながらほぼドムのそれを踏襲しているが、胸のビームはちゃんとした拡散メガ粒子砲へと進化している。
- 派生としてRFデザート・ドムやRFスノー・ドムがあり、RFシリーズの中でも比較的豊富なバリエーションを持つ機体である。
その他
宇宙世紀以外の作品やゲームに登場する機体
- RMS-009 セプテム
- 『機動新世紀ガンダムX』に登場。旧宇宙革命軍が開発した重モビルスーツ。
- 大出力のバーニアで巨大化した脚が特徴でリック・ドムに相当する機体。
- RMS-009G セプテム改
- 『機動新世紀ガンダムX』に登場。セプテムの地上仕様でドムに相当する機体。
- ZGMF-XX09T ドムトルーパー
- 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場。ザフトの次期主力候補として開発されていた機体の設計図を基にクライン派が独自に装備や武装を改良し完成させた機体。簡易型のイージーウィザードを装備。
- ZGMF-XX09T オリジナル仕様ドムトルーパー
- 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY MSV』に登場。ザフトの次期主力候補としてコンペに提出されていたオリジナル仕様の機体。
- 完成機との大きな違いはビームシールドではなく実体型の対ビームシールドと白兵戦用武器のドリルランスを装備しており。ギガランチャーの弾丸をベルト給弾しドリルランスの弾頭を収納するナイトウィザードを装備。
- MS-09R-35 ドムR35
- 『ガンダムビルドファイターズトライ』に登場。ガンプラバトル部コーチのラルさんが使用するガンプラ。
豆知識
…とネタに尽きないMSである。
余談
セガの擬似3D-STG「スペースハリアー」(1985年)には同名のよく似たモビルスーツが登場し、ジェットストリームアタックも使ってくる。
当時は他社製品のパロディについても寛容な時代で特に問題にはならなかったが、後にPS2に移植された時にはデザインが変更された。
関連動画
関連静画
関連項目