「俺の尻を舐めろ」とは、
直訳すれば「俺のケツを舐めろ」(Lick me in the ass!)。
要するに己へのご機嫌伺いをやれということになるが(例えば英語で「ゴマ摺り屋・おべっか使い」を表す brown nose は、媚びて尻にキスしたせいで鼻が茶色くなったというニュアンス)、アメリカ英語で言えば "Kiss my ass!" に相当し、いずれも「お前は俺に到底及ばない(だから俺のケツを舐めて(キスして)媚びてみせろ」という軽侮、あるいは「(俺のケツを舐めて(キスして)媚びる気が無いなら)何処かへ消え失せろ」という放逐の意味合いで使われる。
日本語で類似した表現を探すなら、クツとケツで語感も似ている「俺の靴を舐めろ」あたりになるが、どうせなら「私の靴をお舐めなさい」とエレガントに言われたいものである。
いずれの言語であれ、そこそこ侮辱的かつ下品な表現なので、下ネタとシャレの通じないような相手へや状況下では言わない方が無難な文句ではあるが、テレビのゴールデンタイムのバラエティ番組等でもしばしば飛び出すくらいごく日常的なフレーズである。
軽侮にせよ放逐にせよ、この場合は媚び諂いを介しての一繋がりの概念なので、『俺の尻を舐めろ』においても、どちらの意味で捉えようと根本の解釈に大差は生じない。
もともとこの表現はドイツ南西部の方言であったが、文豪ゲーテの戯曲『鉄の手のゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』(Götz von Berlichingen mit der eisernen Hand)初版で作中のセリフとして「Leck mich im Arsch!」(俺の尻を舐めろ!)が使われたことでドイツ語圏に広まった。また、その影響で今でも「Götz」(ゲッツ。ゴットフリート(Gottfried)の愛称形))と言えば上記の「俺のゲッツ尻を舐めろ」と同じ意味で受け取られるので、ダンディ坂野氏およびその物真似の得意な人はぜひ、ドイツ語圏に行った際には気を付けていただきたい。あとゲッツ板谷氏も。ちなみにこの作品、ゲーテの戯曲としては処女作にあたる。
題名からしてネタ曲と思われそうだが(いや、ネタはネタだが)、ガチでモーツァルト作詞作曲のクラシックである。
詳細は明らかではないが、元々は気心の知れた仲間内で楽しむために作られたネタ曲だと考えられている。幼いころは神童と讃えられながら仕事には恵まれぬ不遇をかこち、パトロンを探して各地を転々としては求めに応じて曲を書き、行く先々で自分同様の変わり者たちと交わったモーツァルトの、ある意味真骨頂とも言える小品である。
この曲は6声のカノンなので、正装した大のOTONAたちが6人以上で「俺の尻をなめろ」と合唱・追唱する。壮観。
一般には『トリビアの泉』(2004年放送)と『ひみつの嵐ちゃん!』(2009年放送)で取り上げられてよく知られるようになった。
この歌詞は現在広く?歌われているもので、『楽しんでいるのを邪魔するな』(Lasst uns froh sein)の題名で先述の全集で出版社によって充てられた歌詞の前後の「♪俺たちが~」を「♪俺のケツ~」に改めたもの。よくよく読めば割と説教臭い内容なのに前後に「♪俺のケツ~」が付いただけでここまでガラリと雰囲気が変わるのが面白い。
今のところモーツァルト自身によるとされる最古の歌詞は1991年に発見された、ひたすら「♪俺のケツ~」と「♪早く早く!」(g'schwindi)を繰り返すというカオスなもので、こっちは文字通りにお尻をペロペロするでも解釈可能なもんだから、もはやフォロー不可。
また『俺の尻を舐めろ、しっかりきちんときれいさっぱりに』(Leck mich im Arsch fine recht schön sauber, K. 233/K. 382d)という楽曲もある(この訳は一例)。
しかしこちらはモーツァルトの死後しばらくして出版された作品全集のために未亡人コンスタンツェ(Constance Weber Mozart)が楽譜を整理した際、同時代のボヘミアのアマチュア作曲家ヴァーツラフ・トルンカ(Václav Trnka z Křovic)の作品『あなたは嫉妬深い、本当に』(Tu sei gelosa, è vero)が他1曲と共に紛れ込んでいて、2曲ともそのままモーツァルト作として上梓されてしまったものだということが1988年のヴォルフガング・プラート(Wolfgang Plath)の研究で明らかになっている。ちなみにこの時に出版社によって付けられた題名および歌い出しは『葡萄酒に勝る我が慰めは無し』(Nichts labt mich mehr als Wein)で完全にワイン賛歌である。
そこで、ここでは1991年に発見された、トルンカの曲にモーツァルトが付けたとされている歌詞を示す。
Leck mire den Arsch recht schön,
fein sauber lecke ihn, fein sauber lecke, leck mire den Arsch. Das ist ein fettigs Begehren, nur gut mit Butter geschmiert, den das Lecken der Braten mein tagliches Thun. Drei lecken mehr als Zweie, nur her, machet die Prob' und leckt, leckt, leckt. Jeder leckt sein Arsch fur sich. |
はい完全にアウトですありがとうございました。
まあ少々フォローすると、現代ほど公衆衛生の観念が発達しておらず街中や庭先で人間や動物の排泄物を見かける機会の多かった近世ヨーロッパにおいて、特に気の置けない者たち同士でこの手の下ネタや猥談に興ずることはそこまで特殊ではなかったようだ。
クラシック音楽というものが真芯にある伝統の様式は堅持しつつも、その時代の様々な要素を取り入れて同時代の人々に広く受け入れられていたことがよく解る好例でもある。もちろん、市場がポピュラー音楽一辺倒になってしまった現代とて、それは決して例外ではない。
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最終更新:2023/03/25(土) 05:00
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