天海（僧）とは (テンカイとは) [単語記事]

天海（てんかい、1536年? - 1643年）とは、安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した天台宗の僧侶である。徳川家のブレーンとして知られ、黒衣の宰相と呼ばれた。「南光坊天海」とも。

概要

徳川家康、秀忠、家光の3代の将軍に仕えるとともに信仰を受け、徳川家の宗教政策の基礎を築いた。

天海の前半生は良く分かっておらず、出身地、生年とも不明である。若くして出家し比叡山延暦寺などで修行を積んだらしい。

慶長4年に無量寿寺の北院（現埼玉県川越市）の住職となるが、この頃から家康に仕え始めたようで、一説には関が原の戦いにも参謀として参加していたといわれる。その後北院改め喜多院を改修し、日光山輪王寺の貫主となる。家康の死後、彼を神として祀る称号をめぐって、大明神を推す金地院崇伝と対立、天海が推した東照大権現に決定し、日光に東照宮を作る。徳川家光の仕えていた寛永元年（1624年）に、江戸の鬼門の位置に東叡山寛永寺を建てた。

寛永20年（1643年）に死去、享年 108歳。異説はあるが、当時のみならず現在で考えても、かなりの長寿だったと思われる。

正体は光秀？

「天海＝実は生き延びた明智光秀」という俗説はあまりにも有名だが、史実的な信憑性は限りなく薄い。ただ、有名な話であり、ロマン心をくすぐるからか、漫画・ゲーム等のネタに用いられる事もしばしば。信長の野望シリーズでも「将星録」において採用されている。

見事に別人と化している場合もあるが、どう見てもバレバレな作品もある。なんだか某赤くて3倍の人を見ているような気分である。

登場作品

そして――子連れ狼　刺客の子

劇画『子連れ狼』『新・子連れ狼』の続編となる『そして――子連れ狼　刺客の子』に登場。本作では天海＝明智光秀説を採用している。

劇中では108歳で死んだことになっているが、実はまだ存命で、齢120歳以上。本作では伊達政宗（90歳以上）や、源義経の都落ちに同道した常陸坊海尊（作中では残夢道人と通称される。400歳以上）も生きながらえており、彼らの尋常ならざる長命には大陸の寧夏（ねいか）に産する枸杞（くこ）の実が大きく関わっている。

すなわち光秀が枸杞の実を輸入し、料理の達人である政宗が秘伝の加工を施して長生の秘薬としていた。枸杞の実の仕入れ方法を光秀に、加工方法を政宗に、それぞれ教えたのが残夢である。光秀と政宗の二人が協力しなければ秘薬はつくれないという図式である。

光秀は天海として徳川歴代5代将軍を陰から操り、自らの死を偽装したのちも（さすがに100歳を大幅に超えてなお健在だと怪しまれるからか）、ことあるごとに天下に覇を唱えようとする政宗を抑え、ある意味で彼と切磋琢磨しながら日本をよりよい方向へ導こうとしていた。

本編では単行本3巻から登場。自らのルーツを知ることに生きる道を見出した大五郎と、伊達政宗の薫陶を受けた秋田高星（あきたたかあき）の二人の前に姿を現し、その命を奪おうとする。

それは政宗を誘い出すための芝居であった。政宗もまた、自身の悲願――徳川幕府を転覆させて天下を手中におさめる――を託した高星を奥州から江戸へ向かわせたのは天海をおびきだす囮だったので、双方ともに反目しあいながらも肝心なところでタイミングの合致する拈華微笑の間柄であったのであろう。

90年振りに政宗と再会した天海は、枸杞の実10年分を積んだ船が途上で沈没し、今から新たに船を仕立てても自分たちの寿命が尽きるまでに間に合わないことを告げる。ただ単にひさしぶりに会いたかっただけだった政宗もその驚愕の事実に絶句。天海は祖先が同郷でもある大五郎に、政宗は高星に、それぞれ自らの秘と意思を継がせようとするも、枸杞がないのでは明日をも知れぬ命、いかんせん時間がなく、「やンぬるかな」と失意に沈む。