「定命の者」とは、神とかエルフとかドラゴンとかそういうファンタジーっぽい存在が、ヒトのように死すべき定めを負って生まれた種族について、上から目線で語るときの呼称だ。理解できたか? 定命の者よ。
たいていは「定命」と書いて「じょうみょう」と読む。実はこれは仏教用語であって、「前世の因縁によって定まる人間の寿命」くらいの意味である。やや特徴的な読み方「じょうみょう」は、仏教用語であるためにいわゆる「呉音」で発音されるためにこの読み方になっているらしい。
だが、現在の多くの日本人(特にオタク)にとっては、仏教用語としてよりも、本記事冒頭で述べたようなファンタジー作品などでの文脈で触れることが多くなった言葉であろう。
様々な文章の用例を調べることができる謎の怪しいサイト「用例.jp」で「定命の者」を調べると、『指輪物語』『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ』『グローランサ』『ウォーハンマー』『ソードワールド』『ロードス島戦記』などの、国内外の著名なファンタジー作品で用いられていたようではある。
そしてこの中では最も歴史が古いのはJ・R・R・トールキンによる泣く子も黙る名作ファンタジー『指輪物語』であろう。どうも、不死では無い種族に対して用いられる表現「mortal」(モータル。「死を免れない」といった意味)と言う言葉が、和訳されたときに「定命の者」と翻訳されることがあったっぽい。
『指輪物語』以後のファンタジー作品はたいてい『指輪物語』からの影響を受けまくっているので、海外ファンタジー小説を和訳する際にも類似の概念について『指輪物語』の和訳での表現に影響されて「定命の者」として翻訳されたのではないだろうか。そして、『ソードワールド』『ロードス島戦記』などの日本語のファンタジー作品の執筆の際にも、『指輪物語』やそういった海外ファンタジーの和訳から影響されてこの「定命の者」という言葉を使ったのではなかろうか。
なお国立国会図書館デジタルコレクションで「定命の者」を調べると、検索にヒットする範囲で最も古いファンタジー作品関連での用例は1988年3月に出版された『相模女子大学紀要』51巻に掲載された、本多英明による『魔法を失うということ――プリデイン物語』という著作内での使用。
これによって伝説の時代は終わり、人間による歴史時代に移ってゆくことになるが、アリグザンダーの物語もまた、死の王アローンが倒れたのち、プリデインの地から半神的な英雄や妖精たちは「常夏の国」へと旅立ち、この地の将来は定命の者である人間の手に委ねられることになる。
これはロイド・アリグザンダーによるファンタジー作品『プリデイン物語』に関するものであるが、『プリデイン物語』と『指輪物語』を対比させた箇所もあり、やはり『指輪物語』からの影響が考えられそうである。
ちなみに、神々などと対比させて人間を「死すべき定めにある者」と見なす/呼称するような概念はかなり古く、たとえばギリシア神話などにもあった。よって、『指輪物語』の和訳よりも先に、こういった概念を和訳する際に「定命の者」とした前例があってもおかしくはない。発見することはできなかったが。
「mortal」の訳語にはお国柄があり、例えば近年の韓国で一般的に使われる「필멸자」は「必滅者」のハングル表記。韓国開発のとあるゲームではとあるキャラがレトロゲームで憶えた単語として「必滅者」がそのままお出しされたことがあり、聞き慣れない言葉に日本人プレイヤーはちょっとフフッとなったらしい。
掲示板
4 ななしのよっしん
2024/11/24(日) 21:03:32 ID: Uo0C4KKzpu
ウルトラマンのようなヒトと比べて極めて長い寿命と強大な力を持つ種族がヒトに対して
「彼等の肉体は我々のそれに比べ脆く、命の限りも短い。儚い種と映っても無理はない」
「だが、彼等には他者を思い自らの命を燃やし使命に臨む偉大な不滅の意志がある」
という旨の発言をする使い方もあるんだろうか
5 ななしのよっしん
2025/01/15(水) 14:39:00 ID: M1Ru7DGfEz
型月しかりヘルシングしかり、魂を賭け、強靭な意志で壁を乗り越えるちっぽけな人間に心を奪われるし、同じ人間も脳を焼かれる それが醍醐味だね
6 ななしのよっしん
2025/02/07(金) 14:27:45 ID: eW/PVZ1zm3
傲慢なエルフや魔族からの発言で、侮蔑の意が込められてるなら
「死にぞこない」でも合ってる気がする
ダークファンタジー系だと上位の種族が人間に対して
好意的ではない場合が多く、アレなニュアンスの場合もあるので
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/20(土) 16:00
最終更新:2025/12/20(土) 16:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。