年齢主義 単語

ネンレイシュギ

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年齢主義とは、次の意味を持つ言葉である。

  1. 労働者賃金を与える方法に関する思想の1つで、労働者年齢に応じて賃金の額を決めることをいう。
  2. 教育学で使われる言葉で、児童・生徒学生入学と進級と卒業を決めるときに児童・生徒学生が一定の年齢に達したら入学や進級や卒業許可することを言う。課程義の反対語である。
  3. エイジズム(ageism)を翻訳した言葉で、年齢に基づいた差別偏見を持つことをいう。エイジズムを翻訳した言葉としては他に年齢差別という言葉がある。

本記事では1.について解説する。

概要

定義

年齢主義とは、労働者年齢に応じて賃金の額を決めることをいう。

性質

年齢主義とは、労働者に対して年齢を重ねることを推奨するものであり、労働者に対して年齢を重ねることについて正の外発的動機付けを掛けるものである。

年功主義との比較

年齢主義によく似た思想として年功主義年功序列)というものがある。

新卒採用で勤続30年で53歳の労働者Aと、中途採用で勤続5年で53歳の労働者Bと、新卒採用で勤続5年で28歳の労働者Cがいるとする。

AとBを同じ賃金にするのが年齢主義であり、BとCを同じ賃金にするのが年功主義である。

年齢主義と年功主義がほとんど完全に一体化する例

「全ての社員を新卒採用でまかない、一切の中途採用をしない」という形態は昭和時代末期日本における大企業に多く見られる形態だった。そういう形態の企業では、年齢主義と年功主義がほとんど全に一体化する。

成果主義・能力主義との比較

年齢主義と正反対に近い思想として成果主義能力主義がある。

新卒採用で勤続30年で53歳の労働者Aと労働者A’と労働者A”がいるとする。

AとA’とA”を同じ賃金にするのが年齢主義や年功主義であり、使用者が成果の差を測定してAとA’とA”を異なる賃金にするのが成果主義であり、使用者力の差を測定してAとA’とA”を異なる賃金にするのが能力主義である。

年齢主義の長所

労働者の生活を保障する

年齢主義は労働者生活保障を重んずる思想である。労働者を含むすべての人は、一定の年齢になると結婚出産家族が増え、一定の年齢になると子ども教育費が増え、一定の年齢になると隣近所との付き合いが増えるという傾向がある。つまり労働者を含むすべての人は年齢に応じて出費が増えていく傾向がある。

このため年齢に応じて賃金を増やす年齢主義を採用すると、労働者生活を高い準で保障できる。

非婚化・少子化・人口減少が進みにくい

年齢主義を採用する企業ばかりになったは、50代の高齢労働者が手厚い賃金を得ることになる。

50代の高齢労働者大学に進学したがる息子を抱えていることが多い。そうした50代の高齢労働者が高給になると、息子に「奨学金をもらって大学に通ってくれ」と頼まなくなり、息子奨学金漬けにならなくなる。

奨学金という負債を抱えていない20代若者は、結婚しようという意欲が起こるようになり、非婚化が進まなくなる。非婚化が進まなくなると少子化も進まなくなり、人口減少が進まなくなる。

労働者の間で平等意識が高まり、平等社会や無階級社会に近づく

年齢主義を採用すると、同じ年齢で全く同じ賃金になるので、同じ年齢労働者どうしで等意識が芽生えていく。

さらには、違う年齢労働者が2人いる場合、低年齢労働者が高年齢労働者を見るときに「自分も年齢を重ねるとあのような労働者になる」と予測するようになり、高年齢労働者が低年齢労働者を見るときに「自分も若いときはあのような労働者だった」と思い返すようになり、労働者同士で等意識が芽生えていく。

年齢主義を採用すると労働者たちが等意識を持ち、職場が平等社会無階級社会に近づいていく。そうなると「自分はこの人に話しかける資格がある」と思う潮が広まり、人が人に気軽に話しかけるようになり、人が積極的情報提供権(表現の自由)を存分に行使するようになり、情報が円滑に流通し、欠点が即座に摘され修正される職場になり、職場が発展しやすくなる。

使用者の権力が制限され、平等社会や無階級社会に近づき、職務専念義務の遂行を促す

年齢主義は労働者年齢という要素で労働者賃金が決まるので、使用者恣意的な判断で労働者賃金を操作できない。このため年齢主義を採用すると使用者の権力が大きく制限される。

権力が大きく制限された使用者に対して労働者等意識を持ち、職場が平等社会無階級社会に近づいていく。そうなると労働者使用者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を存分に行使するようになり、上意下達(トップダウン)だけではなく下意上達(ボトムアップ)が行われる組織になり、組織内で情報が円滑に流通し、欠点が即座に摘されて修正される職場になり、職場が発展しやすくなる。

また、権力が大きく制限された使用者に対して労働者恐怖を感じなくなり、「使用者のご機嫌伺いをすることを労働よりも優先しよう」などと考えなくなり、職務専念義務を遂行するようになる。職務専念義務を遂行する労働者が増えると、労働強化が達成され、職場の生産性が高まる。さらには国家実質GDP(Y)が増え、資本量Kや労働時間Lが一定なのに生産技術が向上して国家実質GDP(Y)が増え、国家の資本生産性Y/K(実質GDPを資本量で割った数値)や労働生産性Y/L(実質GDPを労働時間で割った数値)が上昇する。

中途社員と新卒社員が同格になり、中途社員による職場改革が発生しやすい

年齢主義を採用すると、中途入社で勤続年数が少ない労働者と新卒入社で勤続年数が多い労働者が同じ賃金をもらうようになり、同格になる。

年功主義を採用した職場で中途社員を採用すると、中途社員と新卒社員の格差が発生してしまい、格差社会階級社会になってしまう。そのため年功主義を採用する職場では中途社員を採用すること自体を自粛する傾向にある。

一方で年齢主義を採用すると、中途社員を採用しても中途社員と新卒社員の格差が発生せず、格差社会階級社会にならない。このため年齢主義を採用する職場では中途社員を気軽に雇用できる。中途社員は、他の会社の企業土を知っており、職場に新鮮な感覚をもたらすことがあり、職場の改革に貢献する可性がある。

年齢主義の短所

高年齢労働者の構造的失業を生み、高年齢労働者の転職を生まない

年齢労働者は頭筋肉が衰えていて、労働市場に出したときに形成される均衡賃金が低くなる傾向にある。

年齢主義を採用すると、高年齢労働者に対して労働市場で形成される均衡準よりも高い金額の賃金を支払うことになりやすく、高年齢労働者構造的失業になりやすく、高年齢労働者が就職しにくくなる。

「年齢主義の長所」の章の『中途社員と新卒社員が同格になり、中途社員による職場改革が発生しやすい』の項で、“年齢主義を採用した職場は中途採用しやすい“と論じた。そうした長所は、低年齢労働者だけに適用され、高年齢労働者に適用されない。

再就職が難しいことを悟った高年齢労働者は、解雇規制に頼るなどして現在の職場にしがみつくしかなく、転職をしたがらない。

高年齢労働者が職場に残留する企業は税引後当期純利益を増やしにくい

年齢労働者というものは頭筋肉が衰えていることが多く、解雇規制に頼るなどして現在の職場にしがみつくことが多い。

企業が年齢主義を採用すると、頭筋肉が衰えて力を劣化させて成果を出せなくなった労働者に高額の給与を支払わねばならず、収益のわりに費用がかさむようになり、税引後当期純利益を増やしにくい。

高額の賃金を受け取る高年齢労働者は、「高額の賃金をもらっているのだから守秘義務を忠実に守るだろう」とされて強い権限を持つ管理労働者になることが多い。その高年齢労働者の頭の衰えがしいのなら、組織全体の足を引っることになり、収益が増えず、税引後当期純利益が増えなくなる。

低年齢労働者が低い賃金で我慢させられる

年齢労働者というものは頭筋肉元気であることが多いが、そのわりに低い賃金慢することを強いられる。

年齢労働者は、「低額の賃金をもらっているのだから守秘義務を忠実に守らないかもしれない」とされて強い権限を持つ管理労働者になれないことが多い。つまり平社員の地位で慢することを強いられる。

低年齢労働者の離職率が高まり、教育費用が増え、教育が下火になる

年齢主義を採用すると、中途入社で勤続年数が少ない労働者と新卒入社で勤続年数が多い労働者が同じ賃金をもらうようになり、同格になる。そのため年齢主義を採用する職場ばかりになった国家は、特に低年齢労働者が「他の職場に行っても同じ待遇を得られる」と確信するようになり、転職の敷居が低くなり、転職が活発化する。

使用者にとって、労働者が簡単に転職してしまうと新たな労働者に対する教育費用が増えることになり望ましくない。

効率賃金仮説という思想があり、その中には「労働者賃金を増やせば離職率を減らすことができ、職場の教育費用を削減できる」というものがある。年齢主義はそうした思想に合致しない。

年齢主義を採用した職場では低年齢労働者に対して「この人は簡単に離職するかもしれない」と疑う潮が強まる。そのため、年齢主義を採用した職場では「低年齢労働者に対して教育をしても損をするかもしれない」という気が強まり、低年齢労働者への教育をあまり盛んに行わなくなる。「労働者教育することを他社にまかせる」とか「他社が教育して成長した労働者を引き抜く」という気を持ちやすくなり、労働者を自社で育成する気が弱まる。

成果を挙げたり能力を高めたりすることについて外発的動機付けが掛からない

年齢主義を採用すると、成果を挙げたり力を高めたりすることについて労働者に対して外発的動機付けを掛けられない。

このため、年齢主義を採用する職場は、成果を挙げたり力を高めたりすることについて労働者に対して内発的動機付けを掛ける必要がある。具体的にいうと、「成果を挙げたり力を高めたりすると顧客に感謝される」と労働者に言い聞かせたり、顧客の感謝労働者に聞かせたりする必要がある。

顧客の感謝を収集してそれを労働者に伝える力の低い職場は、言い換えると営業部門の実力が低い職場は、内発的動機付けを掛けることが上手ではない。そういう職場が年齢主義を採用すると、労働者が成果を挙げず力を高めないという結果を生みやすい。

年齢主義を採用する企業が多い国の特徴

転職市場が大きくなる

年齢主義を採用する企業ばかりになったは、どこの企業でも離職率が上がる。そしてどこの企業も「人を教育することを他社にまかせる」とか「他社が教育した人材を引き抜く」という気を持ちやすくなる。

そういうでは転職市場が大きくなり、転職を通じた労働者の再配置が多くなり、転職を仲介する企業かるようになる。

部門間シフトの際に新規ベンチャーが多く出現する

新しい産業が生まれるときにそうした産業へ労働力を円滑に移転させることは、どこのにとっても重要な課題である。つまり「部門間シフトの円滑化」「労働力の円滑な移転」「円滑な労働移動」「労働移動円滑化」はどこのにとっても重要な課題である。

年齢主義を採用する企業ばかりになったは、転職を通じて労働者を再配置するという手法で対応する。新しい産業が生まれそうなときに、起業家ベンチャー企業を立ち上げて転職者を雇って新しい産業に参加することが多くなる。

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