浦河渡辺牧場 単語

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ウラカワワタナベボクジョウ

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浦河渡辺牧場とは、北海道にある引退馬の養老牧場である。

歴史

昭和6年頃に競走馬の生産牧場として創業する。平成に入ってからは引退馬の預託事業も並行して行うようになり、平成23年には生産事業を停止し養老牧場として一本化した。な生産ナイスネイチャ(1991年小倉記念1992年毎日王冠1994年高松宮杯等)、セントミサイル(1993年クリスタルC)など。

馬の瞳を見つめて

ナイスネイチャ(ウマ娘)からの転記となります。転記元の史実と合わせてお読みください。


引退馬は往々にして"行方不明"になる。
動物を一頭生かし続けるためには広大な土地と膨大な資、多額の費用が必要で、寿命といわれる25歳まで生かすとすると預託料にして10003000万円*1はかかるという。したがって将来性のない若駒や結果を残せなかった引退馬、繁殖用や再就職先からもリストラされた老といった今後の採算が見込めないたちは、一部の例外を除き居場所を失う。
不要になった畜商*2や屠殺業者に引き渡し最終処分を代行してもらうのが一般的なパターンのようだ。生産し、育成、調教して出走、引退後は一部は再利用され、そして最後は棄する。この一連の流れが競馬産業の仕組みだが最後の過程は大っぴらにはされておらず、の末路については"行方不明"という言葉で濁される。

の瞳を見つめてという乗界で有名な著作がある。ナイスネイチャの生である渡辺牧場を経営する渡辺はるみさんが自身の牧場生活ったノンフィクション作品だ。
渡辺さんは医学を学ぶ大学生の時に休暇アルバイトで偶然訪れた渡辺牧場での魅に惚れこみ、それまで追ってきたを捨てて産の世界に飛び込んだ。
を飼養管理し種付けから出産が離するまで育てる生産牧場。そこでと触れ合う日常の描写からは渡辺さんの彼らへのと敬意が伝わってくる。気品に満ちた気高き女王ウラカワミユキ名前通りの暴走セントミサイル、いつも威勢のいい大ベテランあてのジイなど、渡辺牧場のたちがまるで人間かのように個性豊かにられる。牧場から送り出すときなんかはまるで出征する息子を見送る母親のようだ。

そんな渡辺さんはこと競馬に関しては全くの無知だった。だから初めて自分が育てた競争が"行方不明"になってようやく彼らが置かれている過酷な現実を知る。以来、渡辺牧場の生産を追跡し用にされそうになった場合は利益を度外視して自分たちで引き取る活動を始めた。
それと同時にの最期についてある考えを固めていく。

人はしもの上でしい人たちに見守られながら苦痛なく死にたいと思うもので、それはも同じだろう。屠場でボルトガンを撃ち込まれて殺されたり病気で長く苦しみながら死ぬくらいなら、たとえ短い間だとしても生まれ故郷の広々とした放牧地で存分に走り回り、いっぱい美味しいものを食べて、最期の間は麻酔を使って安らかな死を迎えさせたほうがにとって幸せなのではないか。の最期を他人に預けてそれで終わりではなく、つらくとも死ぬ最期の間まで努めて見届けるのがその命を生産した者の責任ではないのか。
論すべての生産寿を全うさせることが一番望ましいが、渡辺牧場の規模でそれがうのは1、2頭が限界で、そのもすでに埋まっていた。にとってしてみれば殺されるまでの過程が違うだけで美談にもならない人間の勝手な考えかもしれないが、品のように扱う、人の努が伴わない末路よりはずっとマシな最期だろう。

やがて、当然のことだが増え続ける養老の経費に圧迫され牧場経営が傾き始める。一縷の望みをかけた資集めもとん挫し、牧場を維持するためにはもはや頭数を減らす他ないところまで追いつめられる。
安楽死覚悟はしていたもののなかなか実行することができなかった。しているうちに安楽死させる予定だったが発病し、もがき苦しみながら死ぬ。
そんな折に決断の機会を与えてくれたのがナイスネイチャだった。渡辺牧場最大の功労がついに帰ってくるのだ。

イチャの帰郷が三日後に迫ったその日、二頭の安楽死を決行する。

この本には、もが眼をそらしてきた競争の最期に正面から向き合い、周囲の理解に苦しみながらも、愛したわがたちを安楽死させていく壮絶な実体験がられている。途中、渡辺さんの気が狂うんじゃないかと心配になるほどに内容は悲痛だ。どんな場面でも気丈にふるまっていた渡辺さんがすべてが終わった後、もいない場所でを押し殺して嗚咽する姿が印的で痛ましい。

すべてを投げ出し牧場の事業から手を引く選択肢もあったはずだが、そうなればネイチャはその後どうなっていただろう。ナイスネイチャファンとして彼の引退生活の裏には多くの犠牲があることを知っておくべきだし、苦しい中でも牧場経営を維持し、ネイチャを生かし続けてくださった渡辺牧場に深く感謝したい。
願わくば、この本が復刊され多くの人が手にとり広く読まれますように。

*1 地域によって預託料は大きく変わる。北海道均的な預託料は11万円である。なお医療費は含まれていない。
*2 馬主の代行として畜の売買、交換を旋する者。喰とも。

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