坂本龍馬は岩波新書から2008年に発刊された松浦玲の著書である。
勝海舟、横井小楠、徳川慶喜などの研究で知られる歴史学者・松浦玲による坂本龍馬の評伝。『検証・龍馬伝説』に続く龍馬ネタで、基本史料と最新の研究を援用しながら通説の誤りを都度指摘し、虚構ではない史実の坂本龍馬の実像に迫る。読む前の予備知識として坂本龍馬の生涯について一通り知っておいたほうが良い。
勝海舟(麟太郎)は日記でしばしば坂本龍馬にだけ「龍馬子」と「子」をつける。これは傑出した存在だと認めたことのあらわれである。ほとんど無意識のうちに筆が動いて「子」と書くのだと思われる。
政治的に天才的なところのある海舟だが、記録は不得意で、日記には日付の間違いや重要な事実の欠落が多い。しかしその時々の気分に従って勝手気ままに書いているのが特色で、それを心得て読むと、海舟の心の内側をのぞくことができる。ごく自然に「龍馬子」と書いているところも、その一つである。
(本書「はじめに」より引用)
大先生の客分 / 政治に海の時代を / 文久の幕政改革 / 大政奉還論の先駆
山内容堂の役割 / 攘夷奉承を決定 / 高官の海路と将軍の陸路
客分から浪士の巨魁へ / 密約を保証 / 龍馬の不思議な力 / 巨艦運用の夢
大政奉還後の京に死す
郷士坂本家 / 父・常八郎の時期 / 龍馬の家族 / 継母伊与 / 厳しいしつけ
剣術修行 / 千葉定吉に入門 / 河田小龍との出会い / 海運への道
山本琢磨の逃亡事件 / 長刀の免状を授与さる / 水戸藩士に呼び出される
豊信(容堂)の隠居 / 砲術家に入門 / 土佐勤王党 / 萩で久坂玄瑞と会う
第一次脱藩 / 久坂玄瑞と一酌
海舟日記の性格 / 要人海路の手始め / 龍馬出現 / 容堂の約束
順動丸に乗った土佐人 / 『雄魂姓名録』の問題点 / 春嶽と龍馬、順動丸に同乗
脱藩赦免 / 佐藤与之助、大坂に現れる / 日本第一の人の弟子に
大久保一翁の手紙を預り、春嶽へ届ける/ 神戸海軍操練所 / 第二回の福井行き
麟太郎の客分に / 「千両程」願いたい / 広井磐之助と乾十郎 / 日本を洗濯する
村田氏寿と会談 / 国事をめぐって / 越前改革派 / 松平大隅と勝塾の金
龍馬の海軍構想 / 福井の政変、京都の政変 / 龍馬、江戸へ / 長次郎の福井行き
行違いが続く麟太郎と龍馬 / 第二次脱藩 / 将軍、海路で上洛 / 龍馬、長崎へ
小楠の「海軍問答書」 / 勝、軍艦奉行に / 下田を訪れた龍馬 / 佐久間象山の遺児
観光丸乗組十二人は誰か / 龍馬は別船の艦長格 / 吉井と同道で上京
龍馬、勝の日記から消える / 勝、軍艦奉行を罷免 / 勝罷免後の土佐人
大坂薩摩屋敷に潜居 / 龍馬、江戸から京都へ / 吉井と同居
鹿児島から北上する龍馬 / 「偉人ナリ奇説家ナリ」 / 下関の土佐勢力と桂
西郷が来ない / 〆て五十両 / 与之助、龍馬に代って謝る
長崎の土佐連とユニオン号 / お龍を姉に紹介 / 再征勅許は「非義之勅命」
社中のユニオン号 / 幕府・長州の広島応接 / 第一次桜島条約 / 条約を容認せず
第二次条約 / 早く京へと木戸の要請 / 龍馬、遅れて上京
龍馬到着前の京都薩摩藩邸 / 難航する薩長の話合い / 幕府内部も紛糾
龍馬立会で木戸・小松・西郷密約 / 密約を整理した木戸書簡 / 寺田屋で遭難
木戸書簡への裏書 / 上杉宗次郎の自殺 / お龍を連れて薩摩へ
桜島丸とワイルウェフ号 / 馬関海戦 / 初めて実戦を経験
船を欠く社中 / 小曾根英四郎を救出 / 勝についての誤報 / 越前藩士下山尚
下山、春嶽に政権返上論を説く / 当時の天下の人物 / 社中と薩摩 / 木戸と龍馬
長崎と下関を本拠地に / 春嶽の建白 / 後藤象二郎との会談 / 蝦夷地と竹島
四侯会議に向けて / 海援隊の創立 / 「海援隊日史」、「海援隊約規」
破格の規則 / いろは丸沈没 / 鞆津からの手紙と下関 / お龍を三吉に頼む
いろは丸事件の談判 / 土佐の勝利
後藤の上京に同行 / いわゆる「船中八策」の謎 / 薩土盟約
盟約文の修正と長岡謙吉 / 盟約文の「目」 / 後藤ら土佐藩重臣の帰国
イカルス号事件 / パークスとの交渉 / 佐々木高行にお龍を紹介
倒幕戦争は不可避か / 長崎のサトウと木戸 / イカルス号事件のその後
武力討幕論に傾斜 / 小銃一千挺を購入 / 遅れに遅れた後藤の帰京と薩土盟約の破棄
お龍との別れ / 兄との再会 / 土佐の大政奉還建白提出 / 薩長芸三藩の出兵協定
倒幕挙兵のための時間稼ぎを主張 / 金融財政問題の提起 / 大政奉還
千載一遇の機会 / 新政府構想 / 薩長連合の運動方法 / 尾崎三良の回想
下宿・近江屋 / 長岡謙吉とサトウ / 三岡八郎(由利公正) / 山内容堂への期待
「八義」を自筆 / 諸侯会盟のリーダーシップ / 北海道開発の志
林謙三への遺書 / 暗殺 / 犯人は見廻組 / 松平勘太郎の話
お龍のその後 / 貴重な証言もあるが… / 西郷から二十円
『亡友帖』と『流芳遺墨』 / 龍馬自筆をめぐって / 『追賛一話』の坂本龍馬
海舟唯一の龍馬論 / 坂本直と西郷菊次郎 / 海援隊の終焉
大政奉還の「公」、王政復古の「私」
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最終更新:2024/05/01(水) 10:00
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