エルリックサーガとは、白子の皇子エルリックを主人公とするエピックファンタジー小説シリーズ。
著者はマイクル・ムアコック。同著者のエターナルチャンピオンシリーズの代表作である。
日本ではハヤカワ文庫より翻訳井辻朱美(初刊のみ安田均)、挿絵天野喜孝で発売されている。
有名な魔剣ストームブリンガーはこの小説が初出。
概要
人類よりも古い歴史を持つメルニボネ皇国は高度な魔術により一万年以上世界を支配していたが
いつしか外の世界に出ることも無くなり、享楽的で退廃的な文化に耽溺していた。
父の跡をついで皇帝となった皇子エルリックは、そんなメルニボネ人の有様に馴染めずにいた。
エルリックは生まれつきの白子で特殊な薬が無くては一人で立ち上がれないほどの虚弱体質だった。
物語は従兄弟イイルクーンの反乱、混沌の神アリオッチとの邂逅、魔剣ストームブリンガーの探索など
エルリックの前に立ちふさがる凄惨な運命の戦いが描かれている。
斬りつけた相手の魂を食らう魔剣ストームブリンガーは、所有者に強大な生命力を流入させる。
だが、この悪意の意思を持つ黒い剣は、所有者の恋人や友人を気まぐれに斬り殺す。
エルリックは剣を忌みつつも、剣から流れてくる力が無ければ指先一つ動かせない虚弱体質ゆえに
剣を持ち続けねばならなかった。そのジレンマがエルリックサーガの根幹となる。
そしてエルリックは、平行世界すべてを巻き込んだ法と混沌の神々の闘争に巻き込まれていく。
登場人物
■ メルニボネのエルリック
主人公。白子の皇子、メルニボネ最後の皇帝、裏切り者、女殺しなどの異名を持つ。
黒い魔剣ストームブリンガーの所有者であり、国を失った放浪者。
アルビノ体質であり、薬なくしては日常生活もままならない虚弱体質だが剣と魔法の腕は高い。
「正義」や「善意」と言った感情を解さないメルニボネ人としては非常に稀なことに、正義感が強く理想主義的。
法や混沌の支配を嫌い「天秤」の世界を理想とするが、その一方で混沌の神アリオッチを主神とし、ストームブリンガーなくしては生命の維持すらおぼつかないジレンマに悩む。
物語の冒頭では、何らかの油断や失敗によりだいたいいつも死にかけているうっかり皇子である。
■ イイルクーン
エルリックの従兄弟。メルニボネ人の退廃的文化に興味を示さないエルリックは皇帝に相応しくないと考えている。
自らが皇帝に相応しいとして簒奪を決意し反逆する。
■ サイモリル
エルリックの理解者であり恋人、イイルクーンの妹。反逆した兄により幽閉される。
■ アリオッチ神
混沌勢力に属する神。メルニボネの主神。エルリックの求めに応じ、ストームブリンガーの在り処を教える。
諧謔的で捉えどころのない性格をしており、エルリックの求めに応じないこともしばしば。
必要に迫られて契約したに過ぎないエルリックとの関係は決して良好なものではなく、腐れ縁に近いものがある。
新訳版では「アリオッホ神」に名前が変更されている。
■ ストームブリンガー
魂を食らう黒き魔剣。斬られた者は普通の死を受けられないため、敵ですらこの剣以外で殺してくれと哀願する。
邪悪な意思を持ち、戯れに所有者の愛する者を殺すことがある。
魂を討つという性質上、魂を有するものであれば神すら殺しうる力を持つが、逆に魂を持たない者に対しては効果が薄いことも。
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関連項目
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