「発酵サミット」とは、JR東日本(東日本旅客鉄道)が運行した、臨時の特別急行列車である。
2024年に開催された「第14回全国発酵食品サミットinかとり(通称・発酵サミット)」へのアクセス臨時特急として、2024年10月26日(土)・27日(日)の2日間に限って成田線方面で運行された。
概要
◆「全国発酵食品サミット」の開催にあわせて、便利な臨時列車を運転します。古くから伝統として引き継がれる醸造などの「発酵」の歴史や発酵食品と発酵文化の素晴らしさをぜひご堪能ください。
千葉県香取市における「第14回全国発酵食品サミットinかとり」の開催によるアクセス需要に応じ、新宿-佐原間(102.5km)に行き帰り一日一往復が設定された。中央本線、総武本線、成田線を経由し、列車番号は9409M(下り列車)、9410M(上り列車)。
東京都心の新宿駅から、香取市の代表駅である佐原駅まで、全区間の所要時間は1時間45分ほど。 朝の下り列車(行き)は佐原駅に9時30分ごろ着、夕の上り列車(帰り)は佐原駅を17時30分ごろ発と、両日9:30~16:00というイベントの開催日程にあわせた時刻が設定されていた。
全車指定席のB特急扱いで、指定席特急券は新宿-佐原間で1,890円(乗車券は同区間1,980円)。使用車両はE257系特急電車5両編成(両日ともNB-04編成を充当)で、ヘッドマークと側面幕の列車名欄は「特急」の文字のみ掲出された。
走行区間
| 運行方向 | ← 上り(帰り) ◆ 下り(行き) → | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 走行路線 | 中央快速線 | 総武緩行線 | 総武快速線 | 総武本線 | 成田線 | |||||
| 境界駅 | 新宿 | (御茶ノ水) | 錦糸町 | 千葉 | 佐倉 | 佐原 | ||||
新宿から房総方面を結ぶ特急列車としては、定期運転の特急「成田エクスプレス」の運行経路である山手線の南半分を繞回して山手貨物線(埼京線)から東京駅(総武地下ホーム)を経由するルートではなく、定番の臨時特急「新宿さざなみ」などと同様、中央本線(中央快速線)と総武本線支線(御茶ノ水-錦糸町)を経由して山手線の環を貫通する運行経路をとる。
都心側起終点である新宿駅では、始発駅となる下り列車は9番線(中央快速線上り・東京方面)を、終着駅となる上り列車は11番線(中央快速線下り・高尾方面)を使用した。
運行時刻
| 列車番号 | 新宿 | 錦糸町 | 船橋 | 千葉 | 佐倉 | 成田 | 下総神崎 | 佐原 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9409M | 07:42発 | 07:59発 | 08:10発 | 08:21発 | 08:35発 | 08:47発 | 09:14着 | 09:29着 |
| 列車番号 | 佐原 | 下総神崎 | 成田 | 佐倉 | 千葉 | 船橋 | 錦糸町 | 新宿 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9410M | 17:37発 | 17:46発 | 18:06着 | 18:19着 | 18:34着 | 18:47着 | 19:03着 | 19:22着 |
特急では本来25~30分程度である成田-佐原間(成田-久住-滑河-下総神崎-大戸-佐原)で、下り列車のみ42分を要している(上り列車は29分)。これは同区間が単線区間であることから、交換駅で反対方向の列車を待つ必要があるためである(久住で同駅9:01発の上り定期普通列車3528M、下総神崎で同駅9:21発の上り定期普通列車440Mと列車交換する)。上り列車も同様にこの区間で2本の下り定期列車と交換するが、始発駅に近いためか、よりスムーズに列車交換する時刻設定となっている。
当列車のような佐原(鹿島神宮)方面の臨時特急としては、7時台の都心発下り、19時台の都心着上りという時刻設定は、下り列車は朝早く、上り列車は夕遅いという点で特徴的である。遠くさかのぼった1960年代の臨時急行「あやめ」下り列車、準急「総武」上り列車には成田線内において近似した時刻設定が見られ、当時以来の時刻設定の生き残りという可能性もないではないが、経緯を追うことは難しい。
近年においては、下り列車はおそらく2024年4月の臨時特急「日本遺産北総四都市号」から使用されるようになった時刻設定である。上り列車も2005年の臨時特急「あやめ祭り」4号、2014年の臨時特急「香取神幸祭号」上り列車など近い例はあるものの、やはりかなり珍しいパターンといえる。
ちなみに、当列車運行ののちも2025年3月の臨時特急「こうざき酒蔵まつり」下り列車や2025年初夏の臨時特急「あやめ祭り」下り列車について、従来年の運行より時間を繰り上げ、新宿-佐原間で当特急の時刻を踏襲して設定されている(2025年4月の臨時特急「日本遺産北総四都市」下り列車も同様)。利用状況次第では、成田線・鹿島線方面の下り臨時特急がこの時間帯に定着していくかもしれない。
列車名
列車の運行目的である催事「全国発酵食品サミット(発酵サミット)」に由来する。
JR東日本には、沿線でのイベント開催にあわせた臨時列車の設定時にこまめに当該のイベント名をつける習性があり(他社でもそれなりに類似例はあるが、JR東日本には特に多い[1])、当列車もそれに倣っている。例えば当列車運行日の2週間前には、同じ区間で特急「佐原秋祭り」が設定されている。
こうした列車名は、機械的な命名ゆえに特急らしい風情にはいささか欠けることもあるものの「イベント名の列車に乗ればイベント最寄り駅に行き着ける」わけで、この2日間のイベントのためになんらか趣のある名称の列車を設定するよりも遥かにわかりやすく、合理的なスタイルである。
当列車の設定が発表された際のSNS等では、かつて同区間で運行されていた特急「あやめ」の名を使えばよいのでは?という反応もあったが、その「あやめ」の廃止は2015年3月改正、9年半も前である。こうなると、残念ながらもはや「あやめ」は“過去の列車”といってよい。
「今年は特急あやめの廃止から9年です」
「それは流石に嘘だよ。あやめ廃止は平成末期だよ」
しかも「あやめ」には廃止後にも臨時特急としての継続的な運行実績はなく、成田線方面での各種イベントの臨時列車は当列車同様、例年とも当該のイベント名を冠して運行される慣例となっている。というか根本的問題として10月末はアヤメの季節ではない(アヤメの季節である5月~6月には例年「水郷潮来あやめまつり」にあわせて特急「あやめ祭り」が運行されている)。
結局、10年近くも前に存在しなくなった列車名(しかも季節外れ)をわざわざ使用するより、イベント名をそのまま付けてしまったほうが利があるという判断になったものであろう。
今後の運行
「全国発酵食品サミット」そのものは年一回開催のイベントだが、開催地は毎年異なる都市が選定される。このため2025年以降も別の土地での開催となる。よって今後、当列車同様の成田線方面で「発酵サミット」号が運行されることは当面考えられない。
むろん、2025年以降も「全国発酵食品サミット」が開催されるかぎり、その年の開催地へのアクセス臨時列車が設定・運行される可能性はありうる。その場合、実際に設定されるかどうかは需要や運行側の都合から勘案されることとなろうが、もし運行されるにしても「発酵サミット」の列車名になるかはまったく未知数である(既存列車の臨時増発という可能性も当然ある)。
なお、2025年は宮城県富谷市での開催。同市には鉄道が通っていない。
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
- *古くは1964年東京オリンピックと1972年札幌冬季オリンピック時の準急/特急「オリンピア」、現代ではJR東海の特急「鈴鹿グランプリ」号といった事例があるが、イベント時も既存の特急列車の臨時増発で対応することが多い他社に対しJR東日本は定期運転の特急列車が存在しない区間へのこの手の臨時特急列車設定に積極的で、結果的に独自列車名の臨時列車も多い。
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