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概要
何らかの原因で肝臓に炎症が起こり、発熱や食欲不振、倦怠感、黄疸、発疹、嘔吐などの症状があらわれる病気。ただし、原因によっては無症状で経過することもあり、放置すると慢性肝炎から肝硬変や肝臓癌などの重大な病気に進行することがある。
また、劇症肝炎といって肝臓の広範囲に急激な炎症が起こり、多臓器不全を起こすタイプの肝炎もごく稀に起こることがある。劇症肝炎の致死率は50%以上であり非常に危険である。
健康診断の血液検査(肝機能検査)でGOT(AST)またはGPT(ALT)が51U/L、γ-GTPが101U/L以上の場合は肝炎の疑いが強いので、病院で精密検査を受けるべきである。
経過による分類
急性肝炎
一般的に強い症状があらわれることが多い。主にA型肝炎やB型肝炎、E型肝炎などが原因となり得る。
ちゃんと治療すれば1〜2ヶ月程度で治ることが多いが、稀に後述の劇症肝炎という重篤な状態まで進行することがある。
慢性肝炎
一般的に急性肝炎より自覚症状が軽いことが多いが、放置すると肝臓の細胞が繊維化して硬くなり、肝硬変や肝臓癌の原因となる。
特に多いのがC型肝炎による慢性肝炎で、他にもB型肝炎や脂肪肝、アルコール性肝炎、薬剤性肝炎なども慢性肝炎の原因となり得る。
劇症肝炎
急性肝炎の重症型。肝臓の細胞が急激かつ大量に破壊され、肝不全に陥った状態のこと。
意識障害(肝性脳症)や全身の出血傾向、消化管出血(吐血・下血)などの重大な合併症を起こし、高確率で死に至る。致死率は50%以上。
主にB型肝炎が原因となることが多いが、他にもA型肝炎やE型肝炎、アルコール性肝炎、薬剤性肝炎なども劇症肝炎を起こし得る。
原因別の肝炎
ウイルス性肝炎
ウイルスによって肝臓に炎症が生じる病気の総称。原因となるウイルスによって感染経路や症状が異なる。
ちなみに感染症法ではA型肝炎とE型肝炎は四類感染症(マラリアやデング熱などと同じグループ)、それ以外のウイルス性肝炎は五類感染症(エイズやインフルエンザなどと同じグループ)とされている。
A型肝炎
A型肝炎ウイルス(HAV)による肝炎で、主に食中毒として発症する(生の魚介類が原因となることが多い)。
高熱が出るなど急性期の症状が激しいが、慢性化することは無い。基本的に安静にしていれば1ヶ月程度で治る。ただしごく稀に劇症肝炎という非常に危険な病気を併発することもあるので油断は厳禁(特に高齢者は要注意)。
予防のためのワクチンがある。
B型肝炎
B型肝炎ウイルス(HBV)による肝炎で、主に性感染症として発症する。血液から感染することもある。
C型肝炎ほどではないが慢性化する可能性が高い。稀に劇症肝炎になることもある。
予防のためのワクチンがある。
なおHBVの生物学的な情報として、DNAウイルス(天然痘ウイルスやアデノウイルスなどと同じ)であることがあげられる。(ちなみにHAVやHCV、インフルエンザウイルスなど多くの有名なウイルスはだいたいRNAウイルスである)
C型肝炎
C型肝炎ウイルス(HCV)による肝炎で、主にウイルスで汚染された血液を介して感染する。
輸血によって感染することもあり、この場合は特に輸血後肝炎と呼ばれる。(B型肝炎も同様)
B型肝炎と異なり予防のためのワクチンはないが、治療薬はある。
D型肝炎
D型肝炎ウイルス(HDV)による肝炎だが、基本的にB型肝炎ウイルス(HBV)との混合感染でしか発症しない。
ただし、HBVとHDVが混合感染するとB型肝炎が重症化しやすくなると言われている。
E型肝炎
E型肝炎ウイルス(HEV)による肝炎で、主に食中毒として発症する(野生動物の生肉が原因となることが多い)。
基本的に慢性化はしないが、劇症肝炎を併発することもある危険な病気である。特に妊婦さんは重症化しやすいので要注意。
A型肝炎と異なり予防のためのワクチンも存在しない。
その他のウイルス性肝炎
アデノウイルスや単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、ロタウイルス、コロナウイルスなども肝炎の原因となることがある。
自己免疫性肝炎
免疫システムの異常による肝炎。何らかの原因によって免疫システムが暴走し、自分自身の肝細胞を破壊してしまう病気。
多くは慢性肝炎として発症するが、他の肝炎に比べて進行が早く肝硬変になりやすい。
その他の肝炎
アルコールの飲み過ぎによるアルコール性肝炎や、医薬品の副作用による薬剤性肝炎もある。劇症肝炎を起こして死亡することもある。
また、食べ過ぎや運動不足が原因の脂肪肝も放置すると慢性肝炎を起こすことがある。軽視されがちだが肝硬変を起こすこともあるので、生活習慣に注意しよう。
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関連項目
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