自律型致死兵器システムとは、「人間が関与しなくても人工知能(AI)が自律的に致死的攻撃を行うことができる兵器システム」を指す言葉である。
概要
英語「Lethal Autonomous Weapons Systems」を翻訳した言葉である。これを略して「LAWS」とも呼ばれる。
「致死性自律型ロボット」とも呼ばれることがある。これは「Lethal Autonomous Robotics」(略してLARs)を翻訳したもの。
「自動的に発動する殺傷兵器」は「地雷」「ブービートラップ」などとしてAI技術が普及するより以前から用いられている。しかしこれらとLAWSが異なる点は、「AIが能動的に攻撃する」という点である。
技術的には、既に普及している技術群を組み合わせるだけで開発可能な兵器であり、既に「SF作品に登場するだけの架空兵器」ではない。例えば「AIによって制御されて飛行するドローン」も「人間の顔や所持品を認識するAI」も民間レベルで既に存在しており、これらを組み合わせれば「自動で飛行し、特定の条件に合致したターゲットに向かって自動で致死的な攻撃を加えるドローン」が開発可能であろうことは容易に想像がつく。
ただし倫理的な問題や潜在的な脅威を懸念する声があり、規制するべきではないかとも議論されている。
2007年には人工知能やロボット工学を専門とする学者「ノエル・シャーキー」が完全自律的に致死的攻撃を行うロボット兵器の可能性について懸念する文章を発表している。[1]2009年には自律する致死的攻撃ロボットを規制することを求めるNGOなども立ち上げられている。
その後LAWSに対する国際的な懸念の声は高まり、2014年からは兵器規制に関する国際条約「特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons:CCW)」に関する国際議論の枠組みの中でLAWSに関する会合が複数回開かれている。[2]
日本の外務省もLAWSに関する専用のウェブページを設けているが、そのページ中で
- 我が国は、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性兵器の開発を行う意図はなく、また、当然のことながら国際法や国内法により使用が認められない装備品の研究開発を行うことはありません。
- 一方で、自律性を有する兵器システムは、ヒューマンエラーの減少、省力化・省人化といった安全保障上の意義を有することから、今後も、主要国を含め、広く国際社会において共通の認識が得られるよう、我が国自身の安全保障の観点も考慮しつつ、引き続き、国際的なルール作りに積極的かつ建設的に参加していく考えです。
との考え方を掲げている。
実戦使用例?
規制議論が継続中であるためか、大々的に開発したと謳う兵器メーカーや配備したと宣伝する国家は2022年1月時点では存在しないようだ。
しかし2021年には「2020年に、リビアでの内戦において暫定政府軍がトルコ製の無人機を「人間の指示を受けずに自ら攻撃目標を定めて実行する」方式で使用した」という報道がなされている。この報道が正しければ、LAWSは既に実用化されて実戦使用されていることになる。
少なくとも、そういった報道で名指しされたトルコ製の無人機は実在している。STM社のクアッドコプター型ドローン「KARGU」のシリーズ製品であったと言われており、同社公式サイトにある同機の公式ページにはカタログPDF
が掲載されているが、そこには「Automatic Target Recognition System」(自動ターゲット認識システム)を有するとも記されている。
規制の声などがあるためか同社はKARGUを「無人自律兵器」として販売しているわけではなく、同カタログPDFには「Operable by single personnel」(一名の人員で運用可能)としている。上記のような報道が正しければ、リビア暫定政府軍はこの兵器に改変を加えて自律的に攻撃させたと推定されていることになろうか。または購入者にのみ知らされる自律攻撃モードなどがあるのかもしれないが。
関連リンク
関連項目
脚注
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