鏡音リンAI talkとは、某社(ここではC社としておこう)が秘密裏に開発した朗読音声合成技術並びにライブラリである。
概要
諸般の大人の事情によりVOCALOIDから袂を分けたC社は歌声合成に留まらずに朗読音声に市場拡大を目指すこととなった。
ライブラリに鏡音リンが選ばれたのは、C社のフラグシップライブラリで開発を行うよりも販売戦略に失敗した場合のキャラクター市場への影響が軽微であることとされているが、他にもコアなファン層がいるにも関わらず一歩譲った立ち位置にいる鏡音リンに白羽の矢が立ったのは必然だったとも言える。
しかしながら、発音のままならないライブラリでの開発は困難を極め既存の朗読音声合成技術に対抗しうるコンセプトは未だ打ち出せていない。
C社の非公式のコメントによると、「他社の製品はプロオーケストラのフルート奏者を目指しているのに対して、弊社の製品は小学校の気になるあの子のリコーダーを目指している」とのことである。
入手経路
私はツイッターより極秘入手した情報の真偽を確かめるべくにC社への潜入調査を開始した。
入社当初はお茶汲み兼シュレッダー係だったが、すぐに窓際にデスクを構えるまでに昇進した。その後もC社製品のデバッガーを経て個室完備された新部署の部長へと上り詰めようやく情報収集に着手することとなる。
微かにこぼした牛乳を拭いたモップの臭いの立ち込める個室ではあったが、配属された社員が私一人であったことにより誰にも気取られずに活動できたのは幸いである。
しかし、入手出来る情報は新型歌声合成技術に関してばかりで朗読合成技術の糸口へたどり着くまでは紆余曲折あったが、出来るだけ手短に話そう。
まず、私は清掃員のパートの初老の女性を拘束し成りすますことでサーバルームへの潜入を試みた。ここでまず最初の困難に遭遇することとなる。サーバルームの扉の前までは難なくたどり着けたのだが、清掃員のパートの初老の女性が持っていた鍵が尋常ではない数だったのだ。何重もの扉で隔てられてる訳でもなく耳をすませば室内のファンの音が聞こえてくるくらい壁の薄さだ。だが、よりによって何故こんなに大量の鍵があるのか。社内の部屋数の数倍の数がある。おそらくはダミーの鍵を混ぜることで容易な侵入を阻止するセキュリティ対策なのだろうとその時点では私はそのように予想した。しかし、後に判明した驚愕の事実を、まぁ良い、この話は本題を逸れるのでここまでにしておこう。簡潔に言ってしまえば大量の鍵は社長の性癖の一部であるとだけ言っておく。
そうこうする内にサーバルームの鍵を開けることに成功した私は静かに扉を開いた時に信じがたい光景を目にすることになる。大量のサーバ機器が夏休みの宿題のアサガオのごとく整然と並べられていると思われた室内には、たった一つ所々塗装が剥げサビが目立ってきたデスクに少女が一人黙々とパピコンに繋がれたカセットデッキに向かってなにやらプログラムコードらしきものを吹き込んでいたのだ。
私は少女に向かって「はじめまして、君の名前は?」と尋ねたが、少女は私の存在をその時初めて認知したのか少し上目遣いに私を見た後、作業を止めるでもなく無言のまままた視線を落とすと元の世界へ戻っていった。
やれやれ。
私はその少女の唇からこぼれてくるプログラムコードを一言一言聞き漏らさないように用意したチラシの裏に書き留めて行った。それは草原の羊が草を食むような作業だったが、私が39枚目のチラシを書き終えた時に、いや、正しく言えば私が持って行ったチラシはそれが全部だったのだ。その時に少女はピタリと言葉を止めて微かな声で何かを、人の言葉のような何か、深い森の暗闇から時折こぼれる木漏れ日のような、サンゴ礁に隔てられかつて海の一部であった浅瀬のような、地底から掘り起こされ悠久の眠りから目覚めた翠玉のような、そんな声でつぶやいた気がした。
少女はそこで喋るのをやめた。私に対してではなく、カセットデッキに向かって、だ。私はしばらく様子を観察していたが、もう一度「はじめまして、君の名前は?」と尋ねてみた。しかし、私と少女の間を隔てる沈黙は雪の下の洞穴で眠りにつく熊の親子みたいに安らかなものだった。
私は緑なす黒髪の少女に軽く会釈した後、諦めて部屋を出た。体格に合わない清掃員のパートの初老の女性の作業服にもそろそろくたびれてきた頃だ。身の安全を考え、書き留めたコードの解析は部署に持ち帰ってから解読することになるが、この時点ではまだ欲しい情報が得られてるかどうかはフィフティフィフティだろう。
結果から先に言ってしまえば私は幸運だった。こうして、ようやく鏡音リンAI talkを手に入れたのは調査を始めてから39日後のことであった。
入手に成功した私は素性が公になることを恐れ退職届を出し無事C社より生還した。
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関連項目
また騙されてネタ記事まで来たわけだが
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| X_入__ノ ミ そんな餌で俺様が釣られクマ――
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