サーバルとは、
- 食肉目ネコ科Leptailurus属に分類される動物。サーバルキャットとも呼ばれる。
- ドイツ製の戦闘車両、AGF サーバル。
- メディアミックス作品「けものフレンズ」の看板動物(アニマルガール)。→サーバル(けものフレンズ)
当記事では1について解説する。
概要
アフリカのサバンナに広く浅く生息している野生種の猫で、ヒョウ柄でスレンダーな体から細く長い足が伸びており、顔は小さく、まるでファッションモデルのような体型である。顔には大きな耳がついており、聴力が非常に良い。体長は67〜100センチ、重さは8〜18キロと、ネコ科の中では中型である。聴力のほか、ジャンプ力にも優れていて、発達した後ろ脚を使って地面から2メートルの高さまでジャンプし、飛び立つ鳥を捕らえることができる。
ちなみに、鳴き声は「ニャッ」である(関連動画参照)。犬のように「ワン」と鳴いたという話もある。
大型ネコ科動物同様、白変種(ルーシズム)や黒変種(メラニズム)の個体が存在する。黒変種は、サーバルのそのスレンダーな体型から、真っ黒なヘルガーのような外見をしている。白変種に関しては、もはや単なる白ネコである。(関連動画参照)
サーバルという名前について
オックスフォード英英辞典によると、”serval”の由来はラテン語の”cervus”(シカ)であり、これがポルトガル語の”cerval”(シカのような、”cervo”(シカ)の形容詞型)を経てフランス語で”serval”になったという[1]。
さらに、オックスフォードと並んで英英辞典の代名詞的存在となっているアメリカのメリアム=ウェブスターによると、中世ラテン語で「シカのようなオオカミ」(英語で"deerlike wolf")を意味する”lupus cervalis”がポルトガル語で”lobo cerval”(loboはオオカミ、cervalは「シカ」の形容詞型、つまり「シカのような」となり、直訳すれば「シカのようなオオカミ」だが、ポルトガル語では「オオヤマネコ」の意味で使われていた)となり、フランス語で”serval”となったそうである。なお、メリアム=ウェブスターはさらに、”serval”という言葉が使われた最初の記録が1771年であるとも説明している[2]。
ところで「サーバル」という言葉の意味についてネットで検索すると「サーバルはスペイン語(サイトによってはポルトガル語)で猟犬という意味である」という説明がなされているサイトが多く、Wikipedia日本語版や→最近改定された個人サイトだけでなく、動物園のサイトや一部の日本語の書籍(以前の版のWikipedia日本語版で上記の主張の根拠となった書籍を含む)でもこのように説明されている。
然し、ほとんどの英語の資料は、各種英英辞典のほかWikipedia英語版でも、前述のポルトガル語 "cerval" が由来だと説明している(その説明の根拠として引用された書籍でも。そしてその一次ソースはオックスフォード辞典)だが、これについて一次ソースが不明だったため調べたところ、Online Etymology Dictionaryにそれらしき記述を発見した。
これによると、元々"serval"という言葉は印欧祖語の語幹”*ker-wo-”(ツノを持っている)であり、ラテン語”cervus”(シカ)→同”cervarius”(シカに関係した)→同”lupus cervarius”(オオヤマネコという意味で使われるが、直訳するとシカを狩るオオカミとなる)→ポルトガル語”(lobo) cerval”(オオヤマネコ)→フランス語”serval”という過程を経たという説明がなされている[3]。
ちなみに、上記の印欧祖語の語幹”*ker-wo-”に単数形の主格を表す語尾"-s"をつけて"*ker-wo-s"とすると「シカ」(英語で"a stag")という意味になる。結論を言うと、「サーバルは猟犬という意味である」というのは間違いというわけでもないのだが、大本をたどると、結局、"serval"は「シカ」という意味になる。
サーバル(日本語)
< serval (English、「サーバル」)
< serval (Français、「サーバル」)
< lobo cerval (português、「オオヤマネコ」) (lobo(「狼、オオカミ」)+cerval(「シカのような」))
< lupus cervalis (ラテン語、「オオヤマネコ」、直訳すると「鹿を狩る狼」) (lupus(ラテン語、「狼」) cervalis(ラテン語、「シカのような」)
cervalis (ラテン語、形容詞、「シカの」「シカに関する」「シカのような」)
< cervus (ラテン語、「シカ」)+ -arius (ラテン語、形容詞化接尾辞)
< *ḱér-wo-s (印欧祖語、「シカ、角を持ったもの」)
< *ḱerh₂- (印欧祖語、「角」、英語 "horn" 等と同源) + *-wós (接尾辞)
また、サーバルの学名であるLeptailurus servalのLeptailurusの部分については、「細身のネコ」を意味するギリシャ語(古典ギリシャ語"λεπτός"〈痩せた〉と"αἴλουρος"〈猫〉の複合語、ラテン文字で"leptaelurus")を語根として持つそうである。
人間との関わり
サーバルは獰猛な動物だが、小さいときから人と過ごすと人に懐きやすくなる。ペットとして日本でも飼うことが出来るが、1匹100万円以上する。また、日本では特定動物(簡単に言うと、人に危害を与える可能性があるため、飼育には注意が必要な動物)に指定されている。そのため、適切な施設・設備を用意した上で、都道府県知事に許可を得なければならない。さらに許可を得た施設の外では飼育できない(すなわち、イエネコのように外で放し飼いしたり猫の集会に参加したり出来ない)ので、どうしても日本でサーバルを飼いたい人は、サーバルのためにも広い家と庭を用意してあげよう。
ちなみに都道府県知事に許可をもらえる目安は、環境省が定めた動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第十七条「許可の基準」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18F18001000001.htmlがある。これを簡単に言うと、(あくまで要約です)
- サーバルが逃げ出したりしない、飼い主以外がサーバルに簡単に触れない構造の頑丈な飼育小屋や家を用意できること。
- サーバルを飼うことで誰かが怪我をしたり、他人に迷惑(鳴き声や臭いも含む)をかけないように、きちんとした対策をとっていること。
- 飼えなくなったときは、引き取って飼ってくれる動物園や友達がいる。いなくても次の飼い主を見つけることができるようにいろんな手を打っていること。どうしても次の飼い主が見つからない場合は飼い主の責任で殺処分すること。
となる。ちょっとでかい猫に随分大げさと思うかもしれないが、特定動物のねこ科には、トラやライオンといった面子が並んでいる。ねこ科の動物は人の言うことを犬のように聞いてくれるわけではないので、サーバル並みに体が大きいと制御不能の危険な肉食動物というカテゴリーになってしまうのだ。飼うときは猛獣を飼うという覚悟を持って飼ってほしい。
サーバルは、イエネコとの間に交雑が起こる。特にオスのサーバルとメスのシャム猫の雑種をサバンナキャットといい、サーバルの血の濃さによって7段階に分けられている。サーバルの血が濃く入っている上位3段階のサバンナキャットは特定動物に指定されるが、下位の4段階は特定動物ではなく、特別な許可を得ることなく飼うことが出来る。性格は人に対して非常に友好的で、大きさはイエネコ以上、サーバル以下。しかしサーバル同様非常に高価で、1匹あたり数十万円ほど、サーバルの血が特に濃いものはサーバルより高いこともある[4]。ちなみに、サーバル、サバンナキャット共に非常に力が強いため、イエネコと同じような感覚で遊ぶと強力な猫パンチや噛み付きでこちら側が大怪我をするので注意。
動物愛護管理法が改正され、令和2年(2020年)6月1日から特定動物をペットとして飼育することに許可が出なくなってしまった。この規制以降はサーバルや特定動物扱いのサバンナキャットをペットとして飼育することはできず、今ペットとして飼われているサーバルやサバンナキャットは、規制前に輸入されたものだけになっている。詳しくは以下のリンク先にて。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/danger.html
サーバルの保全状況は、IUCNのレッドリストによると”LC”(軽度懸念)となっている。しかし、ヒョウのような美しい毛皮を持つサーバルは、しばしば密猟の標的にされ、さらには実際には家畜を食べないにも関わらず、家畜を襲う害獣とみなされて駆除されるなどし、個体数を減らしつつある。
サーバルを飼育している動物園の一覧
公益社団法人日本動物園水族館協会に加盟している動物園の中で、サーバルを飼育している動物園の一覧は以下の通り。
- 札幌市円山動物園(北海道)
- 多摩動物公園(東京都)
- 羽村市動物公園(東京都)
- 東山動植物園(愛知県)
- 豊橋総合動植物公園(愛知県)
- アドベンチャーワールド(和歌山県)
- 神戸どうぶつ王国(兵庫県)
- とべ動物園(愛媛県)
- わんぱーくこうちアニマルランド(高知県)
- 福山市立動物園(広島県)
また、上記の協会に非加盟でサーバルを飼育している動物園として主に以下がある。
ニコニコ動画では
2017年1月アニメ(及び配信終了したアプリ)「けものフレンズ」にて、主人公ポジションの「フレンズ」としてサーバルキャットの「サーバル」が登場。ヒロインポジションの「かばんちゃん」をその優れた身体能力で助け、また非常に天真爛漫かつ愛らしい言動もあって人気を博している。所謂「サーバルジャンプ」もCGでよく再現されていると評判。アニメの影響で、上記の動物園でもサーバルキャットの人気が高まっている様だ。
勿論、現実のサーバルちゃんと触れ合う際は、係員の言う事をよく聞いて問題を起こしたりしないように。
ちなみに、けものフレンズのキャラデザインを担当している吉崎観音氏は、動物園で偶然サーバルキャットを目にした際、「なんて魅力的な動物なんだ」と感じ、サーバルちゃんが生まれるに至ったとのこと[5]。
関連動画
関連商品
関連項目
脚注
- *"Serval"
. Oxford Living Dictionaries. 2017. https://en.oxforddictionaries.com/
. (7 Feb. 2017).
- *"Serval
". Merriam-Webster.com
. Merriam-Webster, n.d. Web. 7 Feb. 2017.
- *"Serval
". Online Etymology Dictionary. http://www.etymonline.com
. (Feb. 7, 2017).
- *"Serval Cat as Pet, Cost, Facts, Videos, and Adoption". My Exotic World. http://myexoticworld.com/serval-cat-as-pet/
. (9th Feb. 2017).
- *月刊ニュータイプ 2017年3月号 インタビュー記事より
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