CERN(セルン)とは、スイスのジュネーブ郊外にある素粒子物理学の研究機関である。英語読みに基づいてサーンと読まれることもある。
概要
正式名称は欧州原子核研究機構(または欧州合同原子核研究機関、European Organization for Nuclear Research)である。CERNというのは1952年に欧州に基礎物理の研究機関を設立するために設けられた評議会 Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire の頭文字をとったもの。1954年に研究機関が設立され、評議会は解体したが、その後もCERNという名称は使われ続けることになった。なお、欧州「原子核」研究機構というのは1950年代に名称が付けられたためで、現在は主として素粒子の研究が行われている。
CERNはヨーロッパの20ヶ国によって運営されているが、他の国も様々な形で関わっている。日本はオブザーバー国の一つである。
CERNは大小いくつかの加速器を有している。加速器実験では粒子を加速して標的にぶつけたり、加速した粒子同士を衝突させたりする。衝突によって生成される粒子を検出器によって捕らえ調べることで、素粒子の性質が分かったり、新たな素粒子を発見できたりする。現在の世界最大の加速器であるLHC(大型ハドロン衝突型加速器、Large Hadron Collider)を持っているのもCERNで、その大きさは一周27kmである。日本だとよく山手線ほどの大きさと言われる。
ニコニコ動画では、ゲーム「STEINS;GATE」に登場する研究機関SERNの元ネタとして有名。
World Wide Web
CERNはWorld Wide Web (WWW) が誕生した場所でもある。1989年、ティム・バーナーズ=リーが世界中の大学・研究機関で働く科学者たちが情報を共有できるようにWWWを発案した。実際に利用可能になったのは1991年で、世界最初のウェブサイトは http://info.cern.ch で、世界最初のウェブヘージのアドレスは http://info.cern.ch/hypertext/WWW/TheProject.html である。最初の内容は残っていないが、1992年のコピーがここで見られる。
CERNでの発見・話題
- 多芯比例計数管の発明(1968年)
- 新しいタイプの検出器の発明。これにより検出器の出力を電子的に処理するのが容易になった。発明したジョルジュ・シャルパクは1992年にノーベル物理学賞を受賞。
- 中性カレントの発見(1973年)
- 新しいタイプの弱い相互作用を発見。グラショウ、ワインバーグ、サラムの電弱統一理論が予言したものを実験によって見つけ出した。
- WボソンとZボソンの発見(1983年)
- 弱い相互作用を媒介する粒子を発見。これによりカルロ・ルビアとシモン・ファンデルメールは翌年のノーベル物理学賞を受賞。
- 反水素原子を生成(1995年)
- このとき生成されたのは9個の反水素原子だった。その後もっとたくさん(数万個)生成できるようになり、長時間(15分以上)保持していられるようになった。
- 直接的CPの破れの検出(1999年)
- 素粒子がCPを破る崩壊をするのを観測した。CPの破れというのは、物質と反物質との違いを生むので、素粒子物理学において重要な現象である。
- 超光速ニュートリノ(2011年)
- CERNからイタリアに向けて放ったニュートリノの速さを計ったら光速以上だったという実験結果を公表。ニュースで取りあげられるほど話題になった。
- →翌年、実験に不備があったことが発覚、実験結果は間違いと分かった。
- ヒッグス粒子探索(2012年)
- 7月4日、LHCで実験を行っている、アトラスとCMSという二つのグループが新粒子の発見を報告した。この粒子は、以前からその存在が予言されていたヒッグス粒子ではないかと考えられている。今後の実験によって新粒子のより詳しい性質が明らかになっていくであろう。
- マイクロブラックホール
- ある種の素粒子物理学の模型では、LHCでマイクロブラックホールができることが予言される。これが地球を飲み込むんじゃないかと心配する人がいて、CERNがLHCの安全性についてのレポートを公表した。
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関連項目
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