LAPA航空3142便離陸失敗事故とは、1999年8月31日にアルゼンチン、ブエノスアイレス、ホルヘ・ニューベリー空港にて起きたB737型旅客機による離陸失敗事故である。
事故概要
1999年8月31日現地時間午後8時30分頃にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスよりコルドバに向かう予定のLAPA航空に属するB737型旅客機、3142便が客室乗務員5名、乗客95名を乗せ、ホルヘ・ニューベリー空港より離陸を試みるが失敗。止まり切れずに滑走路をオーバーランし、空港外に飛び出した挙句にガス工場に突入し大破炎上した。
この事故で乗員乗客(機長・副操縦士含む)63名と空港外で旅客機に跳ね飛ばされた乗用車の運転手など2名の計65名が死亡した。
事故の原因
事故の直接の原因はフラップが離陸前に降りておらず、離陸速度を超えても必要な揚力が不足したために起きたものであった。事故調査委員会の調べでパイロットらが操作を失念していたことが明らかになる。
コックピットボイスレコーダーを解析したところ、機長のグスタポ・ウェイゲルと副操縦士のルイス・エチェヴェリが女性客室乗務員と離陸前にコクピット内で世間話(それも恋愛話や帰った後の夕食の約束など仕事に全く関係ない類の物)やコクピットにおける禁則事項である喫煙行為をしており、それにより気を散らしてチェック項目にあったフラップ操作をスルーしてしまった可能性が非常に強かったとされている。
挙句の果てに離陸動作中に機体に装着されているマスターアラームがフラップが下りていないために離陸不可能であることを大音量で伝えていたにもかかわらず(時間にして30秒以上もである)、両パイロット共に「何のアラームなのかわからないけど大丈夫だ、問題ない」という何の根拠もない自信を発揮して早期に離陸を中断せずに強行した結果、事故につながったのだった。チェックリストの読み上げも手順を逸脱した杜撰極まりないものだったため、音声を聞いた事故調査委員会のメンバーをあきれさせてしまったという。
このような「フラップを離陸前に下さなかったために揚力不足を起こして離陸に失敗した事故」は複数存在しており、例として挙げると1988年に起きたデルタ航空1141便墜落事故も同様にフラップの下げ忘れが原因で尚且つパイロットらが客室乗務員とお喋りしていた様子がボイスレコーダーに残されていた、というものである。
ただし、離陸不可能であることを知らせるマスターアラームが故障していたという複合的な要因があり、その他の事故でもアラームに問題(例えば別件のノースウエスト航空255便墜落事故はアラームの不具合から故意にアラームを殺していた)があったためにパイロットが離陸中断の判断をできなかったという場合ばかりであり、パイロットらが鳴っているアラームを30秒以上ガン無視して離陸を強行したというのは本件くらいのものである。
本件の機長はベテランであったがその経歴はとても褒められたものではなく、事故当時機長らが所属していたLAPA航空は急伸の航空会社であり、パイロット不足から質の低いパイロットを雇用しなければならなかった台所事情があったのも一因である。
とはいうものの、複数の命を預かる者がそういう言い訳をしていいわけがなく、ステライルコクピット(高度約3000メートル以下において客室乗務員からコックピットへの連絡を原則として禁止し、チェックに集中させること。前述の1141便事故でFAAが各社に徹底させるように勧告していた案件である)を遵守しないパイロットを使っていたことでLAPA航空は後に集団訴訟を起こされることとなるのだった。なお、この事故の生存者は「機内に着席して安全のしおりに目を通そうと思ったら備え付けられていなかった」という証言を残しており、このことからもLAPA航空の航空事業者としての態度を窺うことができる。
本件はメーデー! シーズン15にて取り上げられたがニコニコメーデー民よりウェイゲル、エチェヴェリ両名はあのピエール・セドリック・ボナン(エールフランス447便墜落事故)やハンス・ウルリッヒ・ルッツ(クロスエア3597便墜落事故)を超えるメーデー登場史上最低パイロットとしての地位を確立しており、怠惰の愚かさというものを存分に印象付けることとなったのであった。
関連動画
関連項目
- フィクションじゃないのかよ!騙された!(メーデー語集)
- 航空事故
- ブラックボックス(コックピットボイスレコーダー)
- エールフランス447便墜落事故(ボナン)
- クロスエア3597便墜落事故(ハンス・ウルリッヒ・ルッツ)
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