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コカイン(Cocaine)は、コカノキに含まれるアルカロイドで、無色無臭の柱状結晶の有機化合物である。
概要
Na+チャネル遮断による局所麻酔作用をもち、組織浸透性が高いため、局所麻酔薬として用いられる。局所麻酔とは、意識の消失を伴うことなく、部分的に痛覚を消失させること。一般に局所麻酔は、何かしらの身体の変化に患者自身が気付くこと、意識消失がなく呼吸も保たれること、妊婦の帝王切開手術のように意識消失に使用する全身麻酔の薬剤が使用できない患者でも手術を行うことが可能などの利点がある。一方、全身麻酔では呼吸ができないため人工呼吸器が必須なこと、心臓への負担が大きく合併症のリスクがあることから、麻酔科医による注意深いモニターが必要になる。局所麻酔のうち脊髄麻酔は、全身麻酔よりも投薬量が少なく済み、患者の肉体的負担を抑えられるというメリットがある。もっとも、後述する中枢興奮作用のため、現在コカインは表面麻酔にのみ適応。表面麻酔以外の局所麻酔では、プロカインなどが代替薬として用いられている。プロカインはコカインよりも効果が弱いため、抜歯用麻酔ではアドレナリンと併用することで持続時間を伸ばしている。
コカインは粘膜などに麻酔作用を示すが、中枢神経に到達するとモノアミントランスポーターを阻害、ドーパミンなどの再取り込みを抑制することで、シナプス間隙のドーパミン量を増やし、ドーパミン受容体を過剰に刺激する。その結果、精神的、肉体的に活力が増大した感覚を与える。脳がスーパーパワーを手に入れたと勘違いしているだけなので、効果が切れると麻痺していた疲れがどっと押し寄せ使用者は耐えがたい脱力感と無気力に悩まされる。
耐性や身体依存が形成されにくい反面、精神依存を形成する。精神依存とは、喫煙者がタバコを吸わないときでも手元にタバコの箱が無いと安心できないようなものだと言えばわかりやすいだろう。コカインにより精神依存が形成された中毒者は、コカイン摂取に異常な執着を示すようになり、自分の意思で摂取をやめることができなくなる。本人は、自分が薬を求めていることにさえ気付いていないかもしれない。犯罪に繋がりやすいため、麻薬に関する単一条約により国際的に規制されているほか、日本でも麻薬及び向精神薬取締法において麻薬に指定され、規制の対象となっている。
医療用医薬品として以外、善良な市民が触れる機会はまず無い薬物であり、間違っても興味本位で手を出してよい代物では無いであろう。
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