なみえ焼そばとは (ナミエヤキソバとは) [単語記事]

なみえ焼そばとは、福島県双葉郡浪江町にルーツのあるご当地焼きそばの呼称のひとつである。

概要

いわゆる「太麺焼そば」の一種で、うどんのような極太の中華麺が使われている事が最大の特徴。具材は豚バラ肉ともやしが主で、それをラードで炒め、しっかり茹でた太麺を加えて更に炒める。豚バラ肉の脂やラードがソースと共に麺に絡みつき、濃厚な味わいとなる。見た目は「焼うどん」にも似ているが、麺は「うどんのように太い」もののあくまで中華麺である。

1955年 7月12日に浪江町で開店したラーメン屋/焼き鳥居酒屋「縄のれん」の名物料理だった焼きそばが元祖であるとされ、開店したはいいものの客足が今一つとなったことに危機感を初代店主が作り出したものだという。太い麺も「時間をおいてものびないものを」求めて地元の製麺所と試行錯誤した末に生まれたものだという^[1]。ちなみにこの「縄のれん」では、一味唐辛子にニンニク粉を加えた「二味」が焼きそば専用の調味料として机に置いてあったそう^[2]。

同店の看板メニューとなった太麺焼きそばは周囲の食堂や居酒屋でも出されるようになり、また太い焼きそば麺も地元スーパーなどで売られるようになった。浪江町は農業・漁業・林業などの一次産業が盛んで、体力を使う労働者に腹持ちがいいこの太麺が合っていたのだ、という説もあるようだ。

ただし、元々は「なみえ焼そば」という名称は付いておらず単に「焼きそば」と呼ばれていた。そこに育った人々にとっては「焼きそばとはこういう太い麺であるもの」だったのである。初めて町外で焼きそばを食べて「こんなに麺が細いの？」と違和感を覚えた、という話が浪江町出身者のあるあるだったらしい。家庭での調理用に販売されていた麺も「なみえ焼そば」ではなく「太っちょ焼そば」といった商品名だった。

そこに転機が訪れたのは2008年で、浪江町の町おこしのために同町商工会の青年部の人々などが「浪江焼麺太国」（なみえやきそばたいこく）という団体を設立。「なみえ焼そば」の名称での振興活動を開始した。

2011年の東日本大震災やそれに伴う福島第一原子力発電所事故では浪江町が大打撃を受け、元祖だった店「縄のれん」も店主一家が避難ののち東京に移り住むことになったために閉店してしまった。

しかしその後にも「浪江焼麺太国」は故郷の為に活動を継続。2013年には全国のご当地B級グルメが鎬を削るイベントとして有名な「B-1 グランプリ」にて見事優勝を果たすなどの快挙を成し遂げ一気に「なみえ焼そば」の知名度を押し上げた。このような経緯から、「なみえ焼そば」の名称は「浪江焼麺太国」の母体となった浪江町商工会が有している。

商標登録第5934383号　なみえ焼そば（なみえやきそば） | 経済産業省特許庁

この「浪江焼麺太国」は「なみえ焼そば」の定義やクオリティを維持するためか、「なみえ焼そば」の名称で料理を出したいと希望する店には同団体への協賛の上で「厳密な調理方法や材料を守る。例えば使っていい具材は基本的に豚バラ肉ともやしだけである。場合によっては調理の実技指導も行う」「「なみえ焼そばを伝承する心」を求める」「これらを守って「お墨付き」を得ても一年ごとの更新制」^[3]といった割と厳しい条件を付けているそう。

とはいえ、似たメニューを出しても「なみえ焼そば」とさえ名乗らなければ問題はない。よって例えば「太っちょ焼そば」という名称^[4]で実質的には「なみえ焼そば」とほぼ同じメニュー^[5]を出す飲食店もある^[6]。

2025年 5月には「なみえ焼そば」の名称を使っていた約25の事業者に対して浪江町商工会から「1社3000円の登録料とロイヤルティーとして売り上げの2.5%を徴収する」ことが通知され、同年10月からロイヤルティー徴収が開始された。このことを不服として、それまで使っていた「なみえ焼そば」の名称使用を取りやめる店舗も複数出てきたという^[7]。