エーデルヴァイス海賊団 単語

エーデルヴァイスカイゾクダン

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エーデルヴァイス海賊団とは、第二次世界大戦中にドイツに存在した抵抗組織または不良集団・愚連隊。

概要

ルール地方労働者で構成されており、同様の経緯で各地に誕生したファールテンシュテンツェ(エッセン)キッテルバッハ海賊団(デュッセルドルフ、ナバホ(ケルン)などの少年組織もエーデルヴァイス海賊団に含まれることがある。

ナチスにより加入が強制されたヒトラーユーゲントによる締め付けに反発し、ヒトラーユーゲント参加者への暴行やサボタージュ、配給食糧の強奪を行った。先鋭化したケルンではゲシュタポの責任者を殺しており、報復としてメンバー公開処刑される事件まで起こしている。

戦後も抑圧的な占領軍や不良外国人への抵抗も行っており、反ナチと言うよりは反体制・反権志向の強い集団であった。

歴史

抑圧の始まり

1933年ドイツにおいてアドルフ・ヒトラー率いるナチス国家社会主義ドイツ労働者党)が政権を握。既存のドイツ青年組織を吸収統合して行き、1936年には「ヒトラーユーゲント法」が成立。ヒトラーユーゲントとカトリック青年団を除いた青年団の活動を禁止し、10歳から18歳少年全員の加入を義務付けた。

ヒトラーユーゲント自体は階級にとらわれない全少年等を標榜していたが、実態としては日和見義的な上流階級の懐柔や彼らからの接近もあり、彼らの子たちが優遇され現場の導に当たっていた。また、頭パトロールを行い、少年に対する紀取り締まりを行った。

加入強制化により、この手の縦組織に適応出来ない少年が大量に流入し轢を起こし始める。また、少年のみに階級間の等をめるのは理があった。住み分けを中途半端に破壊し上流階級の子の下に貧困層子を置いて導や相互監視を行わせたことは、かえって双方に自分の所属階級を意識させてしまう結果を生んだ。

ヒトラーユーゲントの功罪

それでも、ヒトラーユーゲントは社会における子供たちの地位を高めてはいた。それまでは学習や余暇など許してはいなかった抑圧的なや雇いに対し、「少年は常に正しい」と半ば恫に近い働きかけを行い年中行事に参加させた。非協的な大人への反抗はむしろ推奨され、既存の上下関係は相対化されて行った。

「あれだけ威圧的で古い価値観に固執する大人たちが、ナチスの前には情けなくただ頭を垂れるしかない」実情を見た少年たちの間では「気に入らない社会的組織に属する必要はない」と言う思いを強くした者も多かった。少年非行を煽ったのは他ならぬヒトラーユーゲントでもあったと言える。

エーデルヴァイス海賊団結成

歓迎と反発が半ばした貧困層のヒトラーユーゲントへの参加だが、1939年第二次世界大戦が勃発すると余暇活動はほぼなくなり代わりに軍事教練や労働奉仕が行われ、この微温的な関係には終止符が打たれた。

軍事教練は当然ながら上下関係の強化であるため、軍隊式に上の階級から命を受けることへの反発を高めた。労働奉仕に至ってはそもそも彼ら自身が労働者であり、この階級がもっとも棄する「タダ働き」にしか映らなかった。また、学生と違い既に労働と言う社会的な義務を果たしており、そんな彼らの上に義務を免除されていた学生が立つなど反発をえて嘲笑のタネとなってしまう。

やがてヒトラーユーゲントに適応できない者たちの中から離反する者が出始める。しかし、旅行パーティーなどの余暇活動の楽しさも知った彼らは、さりとて旧体制下の勤労労働者に戻ることもなかった。特に旅行は戦時統制を理由に禁止されたが、多くは密かに楽しんでいた。

その際に立ち寄ったの売店で売られていたエーデルヴァイスった子供向けの勲章の玩具を面半分で身に着けるようになったが、いつしかそのエーデルヴァイスが彼らの徴となり「エーデルヴァイス海賊団」と自他共に呼称するようになる。

抵抗運動

1941年には独ソ戦が始まり、戦時体制がさらに強化された。すると共産主義者の残党も海賊団に加わり出し、徒党を組んだ抵抗運動が本格化する。な攻撃対は抑圧的で散々彼らを下に見ていたヒトラーユーゲントの構成員であった。

攻撃の態様は様々で、入隊した隊員を後ろにして笑い者にし学校や職場でいじめの対にすると言う軽いものから、不用意に彼らの縄張りに入った隊員をリンチにかけてや徽章類を奪うと言う過なものまであった。特には彼らの勢下におかれ、警察支援なしに頭パトロールを行うことは「自殺行為」となりヒトラーユーゲントの士気を低下させている。

厳しい統制下にあったにもかかわらず、この頃にはケルンのナバホを中心に反ヒトラーの歌を口ずさみ旅行で訪れた観光地を練り歩く姿も散見された。

また、職場では底的に上に反抗し、気に入らなければすぐに職を辞してさらに良い待遇の職場を探した。この行為は結果的に生産性を悪化させ、賃上げ圧を加えることで効率的な戦時体制への移行を遅らせる遠因ともなっている。

1942年には拡大する組織に既存の抵抗組織も着し、彼らを積極的に勧誘した。連合軍が航空機から撒いた伝単(ビラ)を拾って各庭のポストに入れる者や逃走した外国人徴用者や捕虜を匿う者もおり、抵抗組織の片棒を担いだ。

1943年になるとドイツの劣勢は決定的となり、生活は急速に悪化。配給制の強化が行われたが、海賊団員はこれに底的に反発し隙を見ては倉庫や配給所を襲撃して物資を強奪した。襲も本格化し、一般国民はもちろん少年たちもこの戦争には勝ちがないことを実感しはじめる。戦争被害海賊団の横行は例関係にあり、被害が出ると特に非行傾向はなかった者まで海賊団に加わり、逆にヒトラーユーゲントへの参加を厭いだす傾向があることが報告されている。特に海賊団の本拠地であるルールドイツ心臓部であり、彼らのサボタージュはまさに獅子身中の虫と見られた。

1944年には死傷者を出す直接的な攻撃も始まり、末にはついにケルンのゲシュタポ本部長を殺。これはドイツ内の民間抵抗組織では最大の戦果であった。報復として首謀者とされた者が公開処刑に処され、ドイツ各地で数名もの少年拘束される。しかし、貧困に対する反発は抑えようがなく、終戦に至るまで活動は継続され当局に脅威を与え続けた。

戦後(アプレゲール)

戦後ヒトラーユーゲントは消滅したが、海賊団が期待した自由社会は訪れなかった。西側諸国ドイツ人に対しては大柄であり、それにナチスドイツと同様に屈する大人たち(特に彼ら相手に売春をする女性)は侮蔑の対でしかなかった。東側諸国共産主義と言う形でヒトラーユーゲントと同様の少年統制を行い出した。海賊団は引き続き彼ら相手に反抗を試みた。

戦後海賊団には、祖国崩壊により虚無感に陥った元ヒトラーユーゲントや少年兵も多く参加していたことが報告されている。戦中に著名だった海賊団の名を借りただけの愚連隊とも見られるが、それは「エーデルヴァイス」がロマンあふれる伝説となっていたことも意味した。

西ドイツ権をもった政権が誕生しドイツ人としての意識が戻る頃合いまで、エーデルヴァイス少年の心の拠り所として機したのだった。

評価

防軍による抵抗を除き、表立った抵抗運動を行った組織の中では最大規模であり、与えた脅威や損も大きなものだった。にもかかわらず、白いバラとは対照的に大きな評価は現在にいたるまで得られていない。少年非行と区別がつかないことがな原因であり、大人側が評価することは心理的な抵抗感があるためであろう。このため、ナチスによる犠牲者とされながら、抵抗運動による犠牲とはみなされず遺族に対する補償は行われなかった。

一つ留意しなくてはならないのは、少年非行として抵抗運動を行うことは有効であった点である。実際、当時の取り締まり当局でさえ、これが抵抗運動なのか少年非行なのかの区別をつけることが出来ず、対応は後手後手に回った。抵抗運動であるなら処刑を含めた厳しい処罰を行うべきであるが、少年非行であるなら少年悛させ社会復帰させるために大な予算と人員を割かなくてはならない。戦時中にそれは不可能であり、軽い訓告程度で済ませて釈放する他ない事例も多かった。このため、明らか海賊団を隠れ蓑にした抵抗組織も存在し、余計に取り締まりを困難なものとした。

これは海賊団と逆の階級にいたスウィング・ボーイも同様であり、戦後の反戦運動にも共通した傾向である。

現実問題、海賊団の存在自体がそもそもヒトラーユーゲントへの魅不足が原因であり、ナチス側がこの手の不良少年悛させることなど不可能であった。また、大人たちがをそらしている「ホロコースト」や「占領地域への圧政」「戦局の悪化」に気付く子供たちも多く、道徳的な非難を行うことの矛盾に直面した大人もいた。とりわけ末期の戦局の悪化は、大人たちですら信じなくなった「ドイツ勝利」をなぜ子供たちが信じなくてはならないのかと言う疑問を白日のもとにさらけ出した。

ヒトラーは「少年に何かをめるならまず大人から」が口であったと言われるが、皮なことにこれは当たっていた。めることしか出来なくなった大人に対する子供の拒否反応、海賊団の存在は大人の偽らざる本音であり、まさに断末魔にあえぐドイツであったと言えるのではないのだろうか。

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