グレゴール・フォン・クルムバッハ(Gregor von Kulmbach)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
CV.石井康嗣(長篇アニメ「黄金の翼」)、なし(石黒監督版OVA外伝「朝の夢、夜の歌」)
外伝短篇「黄金の翼」の登場人物で、ゴールデンバウム朝銀河帝国軍の憲兵少佐。帝国暦483年(宇宙暦792年)5月当時に30代前半、やせてとがった印象の陰険な人物。
軍人としては生え抜きの憲兵職であって、前線勤務の経験はなかった。宮廷の一部勢力、おそらくは侯爵夫人シュザンナ・フォン・ベーネミュンデの意を受け、第五次イゼルローン要塞攻防戦中にラインハルトの謀殺を目論んだが、失敗して横死する。
「黄金の翼」は道原かつみ版コミック向けの原作として書き下ろされた作品であり、原作小説はコミカライズより幾年も後になって発表された。このため、逆輸入でもないあくまで小説由来の存在ながら初出はコミックという、やや特異な経歴を持つ登場人物である。
帝国暦483年5月初頭、クルムバッハは宮廷の密命をうけて定期連絡便でイゼルローン要塞を訪れる。彼の目的は、駐留艦隊所属の駆逐艦<エルムラントII号>の艦長ラインハルト・フォン・ミューゼル少佐の「調査」だった。彼は、前年ラインハルトの上官だった惑星カプチェランカのBIII基地司令官ヘルダー大佐が戦死した件[1]の解釈について、(当人いわくの)「全権」を与えられていたのだ。
駐留艦隊司令部の査閲部次長ヘルムート・レンネンカンプ大佐からごく消極的な協力を得たクルムバッハは、要塞内の憲兵本部にラインハルトを出頭させて揺さぶりをかける。さらにラインハルトの股肱である副長ジークフリード・キルヒアイス中尉を尋問のうえ拘留しようとしたが、同盟軍の攻撃が近いことを理由にレンネンカンプから異議が出たため解放せざるをえず、前哨偵察を命じられた<エルムラントII号>の出動を妨害することもできなかった。
数日後に始まった第五次イゼルローン要塞攻防戦では、クルムバッハも<エルムラントII号>に同乗したが、出撃中はラインハルトの才に圧倒されるばかりだった。艦が要塞に帰還すると、彼は憲兵を引き連れ、放棄区画でラインハルトを「処刑」しようとする。駆けつけたキルヒアイスも加わった銃撃戦のすえ、回廊の端から転落しかけたラインハルトの片手を掴むキルヒアイスを脅すが、一瞬の隙を衝かれて逆襲されたあげく、ラインハルトが投げたコードが首に絡まったまま転落して縊死した。
ラインハルトに対し強い悪意と害意を抱いてはいたが、軽視まではしていなかった様子がある。まだ16歳の一少佐にすぎないラインハルトが遠からず栄達することを予期し、危険視してもいた。当のラインハルトからもベーネミュンデ侯爵夫人の手先として警戒され、協力をさせられたレンネンカンプも「宮廷内の風雨」を戦場に持ち込むクルムバッハを疎み、前哨偵察を命じてラインハルトを彼から引き離している。
あくまで憲兵であって前線勤務の識見はなく、<エルムラントII号>同乗時には悪意からラインハルトの指揮を嘲弄しようとして論破され、至近弾に怯えて冷笑される始末だった。ラインハルトの言を理解できないわけではなく、彼の戦術意見に表情をあらためることもあったが、ラインハルトの苛烈さにひるまされたことはむしろクルムバッハのなかで脅威視を強め、憎悪を急成長させることになったようである。
最終的に、クルムバッハはラインハルトを評して「いまでも充分、危険だが、一日長く生きれば、おそらくゴールデンバウム王朝の命脈は一日みじかくなるだろう」とまで明言した。この時期のラインハルトに敵手から与えられた評価としては最高峰のものといえる。彼はラインハルトを絶体絶命の窮地にまで追いつめたが、勝利を確信したものかサディスティックにキルヒアイスを甚振ったことが隙を生み、形勢を逆転されて命を落とすことになった。
道原かつみのコミック「黄金の翼」では、波打った明るい色(白抜きで描画)の髪をきっちりと撫でつけた、嫌味っぽいエリートめいた細面の士官としてデザインされている。
ところが、同コミックをもとに映像化されたアニメ長篇「黄金の翼」では、首までの黒髪、白皙の肌、赤い切れ長の目に鮮やかな赤色の唇というデザインで、声優(石井康嗣)の演技もかなり高めの声という、かなり特徴的なキャラ付けがなされた(レンネンカンプより数歳年上とは思えぬ外見だが、これは29歳のミスター・レンネンが公式で老け顔なのである)。とはいえ特段オネエキャラ的な口調や仕草はなく、美形悪役というほど大層な存在でもない「耽美系サディスト風味の小物」という方向性のキャラクターになっている。あえて類似例を挙げるならアルセス・タイタニア。所詮はラインハルトの2面ボスである。
ちなみに「黄金の翼」アニメ化より後に制作された石黒監督版OVA外伝「朝の夢、夜の歌」2話冒頭にも、ラインハルトの夢の中の回想としてわずかに登場している(台詞なし)。こちらでは当然、石黒監督版元来のスタイルに基づいたデザインで、さしたる特徴もない黒い短髪の青年将校として描かれている。
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最終更新:2025/12/08(月) 12:00
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