シンクレア・セレブレッゼ 単語

シンクレアセレブレッゼ

2.4千文字の記事

シンクレア・セレブレッゼSinclair Cerebrese)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。

CV.也(石黒監督OVA)。

概要

自由惑星同盟軍人・中将宇宙794年時に40代後半。

ごく生ユーモアを解さないタイプ官僚軍人で、後方での補給と事務処理に長け、当時の同盟軍前線部隊ではその点での最高権威とみなされた人物であった。

経歴

宇宙794年3月4月に発生したヴァンフリート域会戦時、衛星ヴァンフリート4=2の南半球にその約100日前に建設された同盟軍後方基地の官を務めていたのがシンクレア・セレブレッゼ中将である。彼の任務は、総部の命を受けて後方からの兵士や軍需物資を前線に送り込むための制御調整役という大任であった。

しかしヴァンフリート域会戦勃発後の3月27日、予期せず12200隻に及ぶ帝国グリメルスハウゼン艦隊が衛星に接近、同盟軍後方基地から2420km離れた北極周辺に基地を設営して駐留を開始した。これは帝国軍総部が老凡将グリメルスハウゼンを忌避し、戦闘の邪魔にならないよう意味な移動示を出した結果であったが、それを知る由もないセレブレッゼは、帝国軍が同盟軍後方基地を占拠破壊し、恒久基地を建設するために一個艦隊の大兵力を動員した、という予測に達し、狽することとなった。

かくしてセレブレッゼは、基地に駐留していた“薔薇騎士”連隊連隊長オットー・フランク・フォン・ヴァーンシャッフェ大佐を呼び出して対応を協議し、地上偵察を行うこととなった。しかし地上偵察に出たヴァーンシャッフェ大佐は、帝国ヘルマン・フォン・リューネブルク准将の偵察部隊に発見・攻撃されたのであった。この結果、同盟軍は本来同盟軍基地の存在に懐疑的であった帝国軍に自らその存在を明かし、全面侵攻を呼び込むことになったのである。

帝国軍が攻撃してくる、という知らせを受けたセレブレッゼは、そもそも戦術揮自体がお門違いであるだけに、余裕をなくして動転せざるをえなかった。3月31日7時30分、彼は地上偵察中の襲撃で戦死したヴァーンシャッフェ大佐の代わりに副連隊長ワルター・フォン・シェーンコップ中佐を連隊長代理に任じ、防御揮をとらせる。

しかし4月7日に開始された基地防衛戦闘は戦力にも力にも優れる帝国軍の優勢に推移し、混戦の末に基地部内にまで帝国軍の侵入を許すこととなった。セレブレッゼも、混乱の中でひとり帝国軍士官によって武装を奪われ、降を余儀なくされた。その士官は帝国准将ラインハルト・フォン・ミューゼルと名乗ると、セレブレッゼを捕虜としたことを自らの戦果として艦隊部に報告したのであった。

セレブレッゼが降した結果、同盟軍は前線補給体制の中枢を失った。戦場混乱のため同盟軍はセレブレッゼの消息を掴んでいなかったが、戦死ではなく捕虜となった可性が高いことは把握されており、防諜上、席を埋めるだけでなく新たに異なる補給態勢を組み上げる喫緊の必要が生じた。かくして抜されたのが、のちに同盟軍末期最高の後方勤務幕僚となったアレックス・キャゼルヌであり、彼はそれによってデスクワーク一筋の立場でありながら30代前半で准将の身分を得ることとなったのであった。

能力と評価

セレブレッゼは計数と事務処理のプロフェッショナルであり、その方面では最高権威とみなされていただけあって、予定を遂行することにかけては名人と呼んでよい力を有していた。ヴァンフリート4=2基地官としての任務も、彼の力からすれば本来ごく容易いものであった。

しかし彼は本質的にデスクワークの専門であって、実戦揮の経験がいわけではないとはいえ、戦術揮においてはまったくの門外であった。彼自身、自分の戦術力が十分とは到底言えないことは承知していたようではあるが、逆にそれが前線部隊へのコンプレックスとなってしまっていたようでもある。その前線部隊の中心人物が一も二もある“薔薇騎士”でも随一に扱い難いワルター・フォン・シェーンコップ中佐であったこともそれを助長したことはうたがいない。

だが結局のところ、ヴァンフリート4=2基地の防衛において、駐留する兵士約二万人を実戦慣れした指揮官の統合揮の下におかず、自身を中心とする放射状の揮系統としてしまったことは、各部隊の連携上かなりの問題となった。戦況にしばしば動揺し、シェーンコップ中佐いちいち連絡を飛ばすといった行動も、前線基地の指揮官としてふさわしいものではなかったといえるだろう。

ただし、セレブレッゼがそもそもこのような前線に身を置く人物ではないという点は酌量されてしかるべきである。彼をして前線指揮官たらしめるのは、ヤン・ウェンリーをしてスパルタニアン・パイロットたらしめるのに等しい。彼の不運は、まったく予想外の職務を遂行する羽に陥り、また戦闘面で優秀かつ信頼しうる幕僚が周囲に存在しなかったことであった。

これらセレブレッゼの力については、シェーンコップ中佐からも少なくない評価がある。彼は当然セレブレッゼの戦術力については全く期待していなかったものの、軍隊として必要とされる他の分野の人材と考え、けして無能な人物とみなしてはいなかった。また、生でそもそも“薔薇騎士”に好意を持っていないセレブレッゼを彼も嫌ってはいたが、当時のヴァンフリート4=2基地の状況に関してはむしろ多少の同情を寄せ、いちいち連絡してくるセレブレッゼに、不本意ながらも何度もに応対してやっていたほどであった。

関連動画

関連項目

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掲示板

  • 3 ななしのよっしん

    2017/07/02(日) 09:17:53 ID: yqxeGJtE+a

    この人みたいに、軍のある部門でのノウハウを熟知した将官が捕虜になっちゃうと、情報漏洩への対処としてそのノウハウ自体を新たに作り直すこともあったんだろうな。
    で、そんな例が両軍ともに多発していった結果、次第にブラッシュアップを重ねたマニュアルより、個人(あるいは“英雄”)の発想力や統率力、(嫌いな表現なんだけど)人間力に依存する中性的な軍組織になっていったのかな。

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  • 4 ななしのよっしん

    2017/11/29(水) 10:58:50 ID: XaG1psT7UF

    >>3
    から鱗の考察
    戦乱が長期化するとそういう面でも劣化していくんだろうな

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  • 5 ななしのよっしん

    2018/02/26(月) 09:37:57 ID: 1bDIE5gV7n

    実際、原作の千億にはそういうに書かれてるね
    といってもセレブレッゼの出番がある章ではなく、後半のイゼルローン攻防戦で非常勤参謀とその先輩が出てくる場面でだけど


    「捕虜になったセレブレッゼが同盟軍の補給体制やらの機密をゲロるかもしれないから、それに代わる新システムを構想整備できるキャゼル先輩が重用されるようになった(意訳」って感じに

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