トヨタ・ジャパンタクシーとは (トヨタジャパンタクシーとは) [単語記事]

トヨタ・ジャパンタクシーとは、トヨタ自動車の発売するタクシー専用車である。この車はシエンタ（≒ヴィッツ）のコンポーネンツが使用されているため、形式には「P」が附番される。

なお、取扱説明書での表記「JPN TAXI」との表記され、公式サイトやいくつかのHPでもこのような表記がされていることがある。

なお日本国内専売車種ではなく、香港でも販売されておりそちらは「コンフォート」の名前で販売されている。

概要

従来、タクシー専用車種としてはトヨタ・コンフォート／クラウンコンフォート／クラウンセダンが担ってきたわけだが、これらの車種は1995年の登場から数えて22年を経過し、陳腐化が顕著となってきた。コンポーネンツの大本となるX80系マークⅡを加味すると30年ほど前のものであった。いずれにせよ、登場当時の社会情勢とのかい離が大きいものであることは明らかであった。

その中で次世代のタクシーとして、登場させたのがこのジャパンタクシーである。「ジャパン」の名前の通り、日本らしさを出したコンセプトとなっている。それはグレード名や塗装の一部に命名された紺色系の「深藍（こいあい）」にもはっきり表れている。

これに先立ちコンフォート系のコンポーネンツを使用した車両は2017年 5月に販売停止となっている。

エクステリア

これまでのセダン型とは大きく異なったトールワゴン型になっているが、その一方で従来のセダン型の利便性を生かした設計もなされている。そのため、ゴルフクラブも入るようになっていたりする。5ナンバーサイズに収まっているためハンドルの取り回しをしやすいことが特徴である。

そして現在ではほぼほぼ全滅状態であるフェンダーミラーを採用した点も大きい。自動車に関する突起物の規制もあり、すでに生産中止となったかつてのライバルであるセドリック営業車（≒タクシー）も末期はドアミラーオンリーとなったことを考えればかなりの挑戦でもある。

側面のドアは左側後部のみスライドドアになっている。

エンジン関係

この車の大きな特徴の一つに「LPG エンジン＋モーター」のハイブリッドがあげられる。ハイブリッド車の大家であるトヨタ自動車にあって、ありそうでなかった物のひとつである。ガソリンやディーゼルではハイブリッド車が系列含めて多くみられたが、LPGともなると改造を除いた純正としては初採用である。一般的に加速時が燃料消費の多い回転域であり、その部分をモーターアシストすることで、燃費向上を狙ったものと思われる。元々の燃料代の安さと相まって、コスパの面で大きなメリットが出ると予想される。

搭載するエンジンは1NZ-FXP型。2代目プリウス、初代アクアなどに搭載された1NZ-FXE型のヘッドとバルブを専用品に差し替え、バルブスプリングを強化したもの。

なお、足回りを含めてシエンタのものを使用しているので、FF駆動が採用となっている。

燃料タンクのガスボンベは後部のラゲッジスペースに設置。容量は52リットル（ただし充填できるのはおよそ42リットルまで）とコンフォート系から半分弱減らされているが、航続距離はほぼ据え置かれている。しかし絶対的な燃料搭載量が減っているため、エアコンを多用する夏場は隔勤ドライバー（朝出庫して深夜入庫または昼出庫して翌朝入庫。最大20時間拘束）は1回の乗務で2回ガススタンドに入らなければならない事も。

バリアフリー関係

コンフォートが登場した90年代半ばと比べても、バリアフリーの要求は非常に大きなものとなっている。コンフォート系では後部左座席の回転シートや車いすのトランク収納といったバリアフリーの対策はなされていたものの、根本的な問題解決としては不足がちであった。

そこでジャパンタクシーは後部座席までのアクセスに路線バスのようなスロープ板設置が可能になり、そのままの状態で車いす利用の旅客が支障なく利用できるようになっている。このため、助手席は折りたたみが可能で、後部座席もシート下部をチップアップすることが可能となる。

インテリア

これまでの乗用車の延長線上というコンセプトとは決別したものとなっている。具体的には乗務員と旅客を明確に分けた内装の設計となっている。無論、コンフォート系にそういった対策がないわけではなかったのだが、それをさらに徹底させたものとなっている。運転手と旅客のシートの色づかいから始まり、シートヒーターの設置もリアシートに設置、エアコンの操作部をハンドルから見て右側に設置するといった具合に徹底されている。

一方でドライバーにも過度の負担がかからないような設計がなされている。従来、ハザードランプはハンドルから見て右側のウィンカーレバーの先端に添えられていたが、今モデルではハンドル内に設置されている。エアコン操作部を含め、多くの機器類が運転手側に集約されている。またシートもそれまでのいかにも平板なものから、多くの部分でシート調節が可能なものになっており、とかく座っている時間の長いタクシードライバーには嬉しいものになっている。

塗装

従来のコンフォート系はまとまった台数を発注することでカタログカラー以外の黄色、緑、朱色、ベージュ色など事業者が指定した色でも塗ってもらう事ができたが、ジャパンタクシーは深藍（こいあい）、ブラック、スーパーホワイト IIの3種類からしか選べなくなった。

ただし名鉄交通、ヤサカタクシー、両備グループ、グリーンキャブなど一部のタクシー会社は自社の整備工場や契約している外部の板金工場に依頼して従来の指定色で全塗装を行っていることがある。
特に東京都内は深藍かブラックしか見られず、グリーンキャブがジャパンタクシーへ指定色を塗ることが発表された際にはタクシーフリークの間でちょっとした騒ぎになった。

グレード・お値段について

この車は上級グレードである「匠」と量販グレードである「和」の2つで構成されている。大まかな違いはミラーやドアハンドルがメッキ塗装されるか、バンパーが無塗装か塗装かなど。

さて、ここで一つの問題が出てくる。低グレードの「和」を例にとると税込みで約327万円である。コンフォートの低グレードと比べても2倍近い値段である。

税金免除の面を加味しても、それでも差があると思われるがフリートとして大量導入すればそれなりに車両本体の値段も抑えられると想像される。

そのほか

この車両の登場とコンフォート系の生産中止との間に半年程度の空白があり、カローラアクシオやシエンタを導入した事業者もいる。
ほぼほぼ国内専用であろう車だが、テストにおいてはタイ王国で走行していたのを目撃されている。おそらく高温多湿という過酷な使用下におけるテストと想像されるが、同じ右ハンドルであるため、このまま導入も可能である。
シエンタのコンポーネンツを利用したので低床化が実現しているが、積雪地などで低すぎる地上高では差し支えの出るユーザー向けに車高アップパッケージなるものが設定されている。
都市部のタクシー事業者の中には限られた敷地内に車両を収容するため、機械式立体駐車場を車庫に設置していることがある。セダンの入庫を想定している機種はジャパンタクシーの全高が制限に引っかかるため、駐車場を改良するまでジャパンタクシーが導入できない事態も起きている。