マスターキートンとは (マスターキートンとは) [単語記事]

『MASTERキートン（マスターキートン）』とは、1988年から1994年にかけて「ビッグコミックオリジナル」に連載された、勝鹿北星・浦沢直樹（どちらも脚本、後者は作画も担当）による漫画作品である。
1998年には日本テレビ系列でアニメ放映された。アニメーションの制作会社はマッドハウス。
アニメ版は原作の一部の話をアニメ化したもので、原作とは結末の異なるエピソードなどもある。
後述のように、2011年からは雑誌掲載時のカラーページを再現した「完全版」が発売された。

概要（あらすじ）

イギリス人の母と日本人の父を持つ主人公、平賀＝キートン・太一は、現在は保険会社の調査員（オプ）として探偵業を営んでいるが、彼はかつてオックスフォード大学で考古学を学び、英国特殊空挺部隊（SAS）にも属していたことがあるという、複雑な経歴を持つ人物である。

キートンは持ち前の鋭い洞察力と冷静さ、軍隊生活で培った生存術（サバイバル能力）を駆使して、優秀な保険調査員として活躍する。
しかし実は、キートンが一生をかけて打ち込みたい夢は、大学時代に学んだ考古学であり、「未だに発掘されていないドナウ河流域を調査し、ヨーロッパ文明の起源を発見したい」というものであった。

探偵業と学問の間での葛藤、トラブルメーカーの父や離婚した妻とのホームドラマを展開させつつ、やがてキートンがドナウ河発掘調査に向かい、ルーマニアで大事件に巻き込まれるまでを全144話で描く。

基本的には1話完結の探偵ものとして読める漫画であるが、上記のようなキートンの経歴から、心温まるホームドラマあり、壮大な歴史ロマンあり、と、サスペンス話だけではない非常に多彩な物語が描かれている点が、本作の最大の特徴である。

登場人物

平賀＝キートン・太一

主人公。アニメ版の声優は井上倫宏。
立派な考古学者になることを夢見ているが、周囲からは軍人や探偵としての才能を評価されることが多く、自分の人生に葛藤している。

平賀百合子

キートンの娘。アニメ版の声優は桑島法子。
正義感が強く、強気な性格の少女。父親を慕っている。

平賀太平

キートンの父親。アニメ版の声優は永井一郎。
動物学者として有名で、その知識を活かし、時にはキートンに代わって主役を務める回もある。ただし女性関係はだらしない。

ダニエル・オコンネル

キートンの相棒。アニメ版の声優は辻親八。
キートンが務めている探偵事務所の経営者。考古学センターの学生であったキートンをオプの道に引き入れた人物でもある。

チャーリー・チャップマン

キートンの幼馴染み。アニメ版の声優は菅原正志。
私立探偵を営んでおり、キートンとは度々ライバル関係になる。しかし基本的にツンデレ。

絶版問題(※解決済)

かつて『MASTERキートン』は、アニメ版DVDは問題なく購入できる一方で、原作漫画はビッグコミックオリジナル版全18巻・ワイドコミックス版全9巻ともに古本以外では入手が難しくなっていた。

この状況（新規増刷を停止しているものと思われる）に関して、週刊文春 2005年 5月26日号に特集記事が掲載された。

この週刊文春の記事によると、『MASTERキートン』連載時の浦沢直樹の担当編集者であった長崎尚志（その後も浦沢とコンビを組み、『20世紀少年』や『PLUTO』にもプロデューサーとして関わっている）と浦沢直樹の2人が、『MASTERキートン』のほぼすべての話を作成しており、そのことを理由として、『MASTERキートン』の原作者表示で、「勝鹿北星」の名前を小さくしようとしたところ、勝鹿北星と親しかった雁屋哲（漫画『美味しんぼ』の原作者）が抗議して係争状態になったため、増刷が中断されたと報じられている。

しかし、この内容にはいくつか信頼性に欠ける点がある。
当大百科記事の初版作成者からは以下の点が指摘されていた。

ビッグコミックオリジナルに『MASTERキートン』が連載されていた当時、原作者の勝鹿北星へのインタビューで、「アザミの紋章」「祈りのタペストリー」「壁の忘れ物（※かなり終盤の話）」などの話を勝鹿北星が作成したことが語られている。
しかし上記のインタビュー記事は、後に出版された『キートン・マスターズ・ブック』では全て削除されている。
週刊文春の記事が掲載された時点で、勝鹿北星はすでに故人である。（2004年没）

この問題についてくわしく検証している外部サイトもあるので、興味がある方は参照されたい。

何らかのトラブルによって『MASTERキートン』の増刷が中断されていたのは事実であるだろうが、原作者の勝鹿北星が「全く仕事をしなかった原作者」のように言われるのは、故人に対して非常に失礼なことではないか、という意見もある。

いずれにせよ、この名作の原作漫画の方は長らく入手困難な状況にあったのだが、2011年 6月26日から、「完全版」として復刻が発表。同年8月30日の1巻・2巻を皮切りに、翌年6月29日の12巻まで毎月1巻ずつ発売された。
なお、完全版における著作者の表記について、作画と脚本の両方を担当していた浦沢直樹が大きく出され、その下に比較的小さめに脚本担当者が記されるという形式になっており、5巻までは「勝鹿北星/長崎尚志」、6巻以後は「勝鹿北星/浦沢直樹」と表記されている。