対戦車誘導弾とは、日本、特に陸上自衛隊における対戦車ミサイルの呼び名である。ここでは陸上自衛隊が配備してきた地上用の対戦車ミサイルについて述べる。
カテゴリーとしての対戦車ミサイルについては該当記事を参照のこと。
自衛隊は最初は米軍から給与された装備を運用していた。しかし、給与品は日本人には扱いづらかったり整備や補給といった面で不具合があることが多かった。それらを解消するため、より日本にマッチした装備を手に入れるため、より性能のよい装備を手に入れるため陸上自衛隊や企業は努力してきたのであった。対戦車誘導弾もその一つである。
ところで、日本は長らくそして継続的に対戦車誘導弾を開発してきたために各世代の一通りの誘導方式のミサイルがある。つまり陸自の対戦車誘導弾を学べばそのまま対戦車ミサイルの進歩をお勉強することができるのである。
日本がはじめて開発、配備した対戦車誘導弾である。型式はATM-1。通称はMAT、あるいはATM。開発は川崎重工業。
第1世代に相当する対戦車誘導弾であり、運搬用コンテナ、発射台、ミサイル、誘導装置で一セットとなる。
地上に設置しての発射の他、トラックの荷台や装甲車の上からも発射可能である。
第1世代の手動指令照準線一致(MCLOS)誘導方式の対戦車ミサイルであるため、誘導は有線で繋がれたミサイルを弾体後部の発光部を目印に直接オペレーターが操作するものとなっている。そのためミサイルの飛行速度が約85m/秒と遅く、反撃を受けやすい欠点がある。
ただしこれらの欠点は同世代の対戦車ミサイルに共通することなのでそこはお忘れなく。
いかんせん旧式化し性能的に厳しいので79式対舟艇対戦車誘導弾や87式対戦車誘導弾などに代替され2009年末に全て退役した。
余談だが、直接操作するということを逆手に取って物陰に隠れて見えないはずの目標にミサイルを当てるというとんでもないことをやらかす隊員もいたとか。
こちらは第2世代対戦車ミサイルに相当するミサイルである。型式はATM-2で通称は重MAT。開発は川崎重工業。
名前からわかる通り対戦車だけでなく上陸用舟艇にたいする攻撃も目的としているためミサイルの重量がMATの約15.7kgから約33kgと大型化している。弾頭には対装甲用のHEAT弾頭と対舟艇用の磁気信管つき通常榴弾の二種類がある。
発射器二基、照準器一基、送信機関連で構成されている。ただしMATと違い発射時のバックブラストがとても凄まじいためトラックの荷台などからは発射できず、地面に設置してからの発射となる。
半自動指令照準線一致(SACLOS)誘導方式の第2世代対戦車ミサイルであるため、弾体後部のキセノンランプの光を照準器がとらえオペレーターが照準器の画面上で狙っているポイントにミサイルが重なって飛ぶようになっている。このため、命中まで照準し続けなければならない、発射機と照準器を50mほどしか離して置けないという欠点は残るもののミサイルの飛翔速度(約200m/秒)と命中精度は飛躍的に向上している。
ちなみに89式装甲戦闘車の対戦車ミサイルもこれである。ただしあちらは発射機の互換性が無いし取り外し不可となっている。
現在では対舟艇ならともかく正面無敵でうねうね動き回り索敵能力も高い第3世代MBTに対しては命中まで誘導が必要かつ水平射オンリーでトップアタックできない(はずだった)重MATではどうしても不利なため96式多目的誘導弾(MPMS)で置き換える・・・はずだったのだが、MPMSがあまりにも高価で配備が進まなかったため現在も現役である。
かわりに中距離多目的誘導弾(MMPM)による置き換えが進むこととなる。
余談だが、SACLOS誘導方式は照準器で狙っているポイントにミサイルが重なるように飛んでいくのは説明した。実はこれによりMCLOS誘導方式ほどではないが、照準を移動させることによりミサイルの機動をコントロールできなくもない。あくまでも理論上は。
が、陸自隊員の中にはこれを利用して移動目標に対し人力トップアタックをキメるという頭のネジが数本ぶっ飛んでるような技を行うものがいたという。
こちらは第2.5世代対戦車ミサイルに相当するミサイルである。型式はATM-3で通称は中MATあるいは87ATM。開発は川崎重工業。立場的には重MATと違い純粋なMATの後継である。
なお相変わらず知名度のない愛称はタンクバスター。
構成は照準器と発射機一基ずつとずいぶんシンプルになった。また重量もミサイル本体が12kgと軽めであり、重MATと違いバックブラストもそこまで大したことはないので車両の上や肩で担いでの発射も可能となっている。
目標にレーザーを照射し、その反射を捉えて誘導するセミアクティブ・レーザー・ホーミング(SALH)誘導方式のおかげでミサイルの飛翔速度も速く、発射器と照準器を200mまで離せるため反撃されても生き残れる確立は高い。ただし命中まで照準し続ける必要があるのは相変わらず。
またレーザーを探知される、スモークなどの対抗手段に脆弱という新たな欠点が生まれている。
全国に配備されているが、やはり第3世代戦車相手だと不利気味であるため2006年を最後に調達は終了。これからは順次重MATともどもMMPMで置き換えられることになる。
川崎重工業が開発した対舟艇/対戦車ミサイル。型式はATM-4で通称は96マルチ。略称はMPMS。
重MATを置き換えるべく開発された、世界でこれ含め2例しか採用がない光ファイバーTVM赤外線画像誘導方式の世界初のミサイル。わかりづらい人はCoDのプレデターミサイルの誘導を思い浮かべると良い。
その性能たるや、オペレーターが画像を見ながら誘導するのでほぼ妨害無効だわ上面にERA積んだ戦車でも余裕でイチコロだわ陣地もつぶせるわ射程は長いわ射手は攻撃されない位置から誘導できるわと、贅沢とチート極まりないミサイルである。
結果、ユニットの大規模化を招き超高級品となってしまい37セットで調達が終了。本来の目的であった重MATの置き換えはMMPMに託されることとなった
川崎重工業が開発した第3世代の携行型対戦車ミサイル。型式はATM-5で通称は軽MATやマルヒト。公式愛称はラット。
それまで対戦車兵器として運用されていたカールグスタフ84mm無反動砲を置き換えるために配備されている。
世界初の非冷却型赤外線画像誘導方式搭載型であり、撃ちっぱなし能力を備え第3世代方式に属する。その他にも民生品の採用による低コスト化、軽量化、サイドすらスター方式の採用など各部に工夫がされている。
普通科小銃小隊に対戦車兵器として配備されているが、いかんせん装甲目標以外には使い勝手が悪いためカールグスタフも継続して使用されている。
詳しくは該当記事参照→01式軽対戦車誘導弾
川崎重工業が開発した第3世代と第2.5世代併用の対舟艇/対戦車ミサイル。型式はATM-6で通称は中多。略称はMMPM。
中MATと重MATを同時に更新すべく配備中のミサイル。MPMSのユニットが大掛かりになった反省を生かし一両で完結したシステムとなっている。
赤外線画像誘導とSALHを組み合わせており目標の種類、状態問わず攻撃が可能。また値段もMPMSほどではないので気兼ねなく撃てるのもメリット。また多目的同時対処能力に優れるなど名前に恥じることなく使い勝手のよいミサイルである。
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最終更新:2023/03/28(火) 11:00
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